二章 二話 いじられ一人にいじり二人、飼い主も一人

「さあ、昼休みになりました。話してください」


「・・分かったから、もう少し離れよう?」


昼休みになるやまたも至近距離にやってくるアルムさん。この子はなんで段々と話す距離が近くなっていくのだろうか。


「「・・・・」」


クラス中の視線とヘイトも増してるし。


「人に聞かれたら不味いし、屋上に移動してもいいよね?」


「はい、すぐ行きましょう」


俺の腕を引っ張り屋上へ急ごうとするアルムさん・・そして周りの殺意も膨れ上がる。


「ちょっ、ちょっと待って・・・・おい、灰!行くぞ!」


机に突っ伏している灰を叩き起こす。こいつも巻き添えにしないと気がすまん。


「二人で行って来いよ・・」


「うるせぇ。お前が約束したんだから大人しくついてこい」


結果、アルムさんが俺を引っ張り、俺が灰を引っ張る奇妙な電車が出来上がった。


「くそ、俺たちも行くか?」


クラスメイトの一人がついて来よう画策している・・普通の人に聞かれるのはまずいんだがなぁ。


「ダメだ!ツバキ様ファンクラブ条約に反する!ツバキ様ファンクラブ条約第2条!」


「「ツバキ様のプライベートを尊重し、死守すべし‼」」


・・ファンクラブって本当にあったんだ。


ともあれ、ファンクラブのおかげで他人に聞かれる心配は必要なさそうだ。


「ん?・・あれ?」


鞄をくまなく探る。けど


「ない・・お弁当がない!」


花さんお手製の弁当が見当たらない!


今日の朝は確かにあったはずなのに・・必死に思い出す。


「失礼します。柊先輩は・・あ、いた」


その途中で木葉が教室にやって来た。何のようだろうか?


「木葉?どうしたの?」


「落とし物のお届けです」


そこには・・俺の弁当が!


「ぶつかった時に落としてましたよ」


う。そういえば、鞄に入れないで持ってたような・・。


「気をつけてくださいね」


「・・はい」


俺は今後もこの後輩に頭を下げ続けることになるんだろうな。


「咲夜さん。この方は誰ですか?」


グイグイと引っ張りながら俺に問うツバキ。


「後輩の木葉。俺の数倍はしっかりしている」


「柊先輩・・それを自分で言うんですか?」


何をいう。俺はただ事実を伝えているだけだ。


「木葉か・・また咲夜の世話をしてくれたようだな」


「橘先輩・・はい。慣れてますから」


灰も木葉とは顔見知り。灰曰くどこか同じ役割を担っている気がするとのこと。


「これからも迷惑をかけるようなら首輪を付けるようにするから、遠慮なく言ってくれ」


「はい、その時は必ず!僕も散歩ならお手伝いします!」


・・お前らは俺をいじる役割が同じだってことだな!


これ以上は俺の尊厳に関わりそうなので間に入る。


「なに勝手に俺のことをペット扱いしてんだよ!俺は絶対ペットになんかならないぞ!」


「アルムが飼い主になってくれるとさ」


「・・・・・・まじ?」


「「なに本気になってるんだ(ですか)」」


や、やだなー。そんなわけないじゃないか。てへぺろ♪


「もういいでしょうか?」


飼いぬ・・ツバキが待ちきれないとばかりに急かしてくる。


「・・すまん、もう行かないと。弁当、ありがとうな」


「はい。今後は気をつけてくださいね。失礼します」


一礼して教室を後にする木葉・・律儀な後輩や。


さて、俺たちも早く屋上に行くとするか。

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