一章 六話 波乱の幕切れと明日の誓い

「ふう。終わった終わった」


今日大一番の仕事を終え、固まった体をほぐす。


「アルムさんもありがとう、助かったよ」


俺はアルムさんに頭を下げる。助けてもらったこともそうだけど、アルムさんがいなければもっと苦労してただろうし。


「・・・・」


「・・?アルムさん?」


アルムさんは無言でこちらを見ている・・不思議なものを見るかのような目で。


「・・あなたは何者ですか?」


「ただの学生だよ?」


「嘘を言わないでください」


「あ、確かにただの学生ではないか。サーセンww」


「・・もういいです。はっきり言います」


のらりくらりと回答を茶化す俺に痺れを切らしたアルムさんは・・


「貴方は神器使いですか?」


真剣な目でこちらに質問した。


「・・さっき言ったじゃないか。俺は神器使いじゃないよ」


俺が神器に劣る人具を使う理由・・それは神器を使えないからだ。


補足しておくと、柊家は神器使いの家だし、仕え、信仰する神も存在する。

けどまあ、俺は随分と特殊な存在なわけで・・


「・・先程の力はその人具によるものですか?」


「いや?こいつは固いのが特徴なぐらいの人具だよ。あれは俺の能力・・すまん。忘れてくれ」


やっべ、気が緩んでたせいで喋っちまった。


「・・どうゆうことです?最後まで話してください!」


途中で止めたことが不味かったのか、話の続きを聞こうとよりグイグイと寄ってくるアルムさん。


あ、いい匂い・・って近い!近いから!



「ちょっ、アルムさん近い近い!俺、ホモじゃないからこの状況は不味いって!」


「・・ホモ?それがあの力の正体なんですか?」


「関係ないから!変なところに食いつかないでくれ!」


「では何なのですか⁉話してください変態さん!」


「だから、変態じゃないんだってばぁ⁉」


「・・お楽しみのところ悪いがそろそろいいか?」


アルムさんと堂々巡りの会話をしているとどこからか声が。


「・・何者ですか」


声の主は屋根の上にいるようでアルムさんが刀の切っ先を向けるが、俺はそれを手で制す。


「・・随分と遅かったね灰」


「たく、俺が必死に戦ってる時にイチャイチャしやがって」


やれやれと灰が呆れている。こっちも大変だったんだぞ。


「もう分かるだろが、俺はそいつの仲間だ。武器を下げてくれ」


「・・ここにいる戦闘員は一人だけと聞いているのですが」


「それは俺のことだろうな。むしろ、そこの奴がいないもの扱いになってるよ。そいつは高天原うちの組織の所属じゃないからな」


俺を指しながら、自身の正当性を説明する灰。


「・・敵ではないことは分かりました」


アルムさんも灰が敵ではないことを気配や説明で理解したようで刀を収め・・


「では、あなたにお聞きします・・この人は一体何者なんですか?」

俺と同じ質問を灰に投げかけた。親友ならば的確なことを言ってくれるはずだ。


「コスプレ好きの変態だよ」


・・こいつ、的確に援誤してきやがった。


「ふざけんな灰!俺は変態じゃない、バニーガールが好きなだけの青少年だ!誤解を招くような説明をしてんじゃねぇよ!」


あいつ全然分かってねぇ!それでも俺の幼馴染かよ⁉


「・・真剣に答える気はないんですか?」


怒気を含んだ言葉を灰に浴びせるアルムさん。ほら、灰が間違った情報を言うから!


「ああ。ないね」


即答。アルムさんの怒りなんて意にも介していない。


「今日はもう遅い。詳しい話は明日ちゃんと説明する・・そいつがな」


ん?あいつサラッと俺に押し付けてなかったか?


「信用できるとでも?」


「こればっかりは信じてもらうしかない。なんなら俺の主「風神」の名に誓うぞ」


自分の仕える神に誓うということは、誓いを違えれば神に逆らったことと同義の大罪になる。つまり、裏を返せば今の灰の言葉はそれだけ信頼出来るということだ。


「・・分かりました。明日、必ず説明してもらいます」


灰の誓いに免じてくれたようで、アルムさんは渋々といった様子で了承してくれた。


「それでは、失礼します」


闇夜に消えていくアルムさん・・その瞳は最後まで俺を捉えていた。


「ふう。冷や冷やしたぜ」


「あ、やっぱり怖かったんだね」


「当たり前だろ。いつ斬られるかとびくびくしたぞ」


そう言いながら懐からゲームを取り出し、プレイし始める灰。


「俺たちも詳しい話は明日にしよう。今日はもう頭が回らん」


「お前、さっきから行動と言葉が一致してないぞ」


「・・はぁ、お前それでも俺の幼馴染かよ。精神安定と状況整理のためにゲームをやってるに決まってるだろ」


「・・あ、はい。そうですか・・それじゃあ、俺も帰るよ。お休み」


明日も学校があるし今日はもう帰ろう。眠いし。


「・・使ったんだな」


「・・・・必要だと思ったからね」


「無茶しないように言われてただろ」


「花さんとの約束は守ってるよ。三割しか使ってないんだから」


「・・無事なら良い。それを話すかどうか含めて、ちゃんと考えておけよ」


「うん・・お休み」


俺は灰と別れて家に帰る。

・・敵の増援に、ゲル状に変化。果てには合体と今日は不可解なことがよく起きた。


そして、アルムさんだ。頼もしい助っ人だけど、刺々しさや壁を感じるんだよなぁ・・さて、明日は何を話そうか。



今日以上にややこしくなりそうな明日に不安を感じながらも、俺は帰路につくのだった。

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