一章 四話 異変と、会敵と
「それではお勤め行ってきます!」
「ええ、気をつけてください」
俺は花さんに見送られ目的地に・・俺の通う高校へと向かう。
できれば強い花さんにも手伝ってもらいたいんだけど、花さんには周囲の被害を減らすための結界の管理があるから無理なんだよね・・。
「・・今日はいつもより早いな」
一番乗りかと思ったが、校門前で灰が既に来てゲームをしていた。
「・・灰はいつも通りだね」
パトロール前だというのに緊張感がまるでない。まあ、こいつの仕事は周囲の人払いと、安全確保が主だからほとんど終わってるようなもんだけどさ。
「・・そうだ、作業中、少し気になることがあってな」
「ふぅん。気になることって・・っ!」
近くで異質な気配が現れ始める。それも一つじゃない、どんどん増えている!
「・・行ってくる。話は後で!」
午前零時。俺は屋根を飛び交いながら、今日のパトロールを開始した。
・・遡ること一週間前。壁や道路の一部が破壊されていたり刃物で引っ掻いたような跡が度々目撃されるようになった。
世間では目撃者も怪我人もいないことから愉快犯とされ、あまり話題にはなっていない。
すぐに警察が犯人を逮捕し、事件は収束すると思われた・・ある問題が発生するまでは。
破壊された痕跡全てから武力の残滓が感知されたのだ。こうなると話は一変。警察では対処が出来ない大問題へと発展する。
・・神器は、現代兵器すべてを凌駕する力を持っている。いくら強力な銃火器や装甲を用意しても、神器の前には無力だ。
今はまだ神器使いだと確定してはいない。が、犯人が警察の手に負えないことは明白。そこで神器使いに対抗でき、尚且つ近くにいる存在・・要は俺と灰が対処することになったのだ。
今のところ死者や負傷者も出ていないし、苦戦もしていないけれど、油断も出来ない。
・・なにせ敵は、人じゃない獣の形をした黒い生物なのだから。
「「グルルル」」
「・・灰。敵と接触した。もしもの時は援護頼む」
学校の正門近くで獣と会敵。数は二・・大きさは大型犬と同じくらいだな。
どちらもオオカミのような姿をしている。二匹とも殺意を含んだ目でこちらを捉え、いつ飛びかかって来てもおかしくない。
「グオォォ!」「切り刻め、牙鉄‼」
敵の攻撃とほぼ同じタイミングで牙鉄を展開、そのまま高速で近づいてくる獣に、それよりも早い右ストレートをおみまいする。
「・・⁉」
自分よりも早い攻撃は予想外だったのだろう。獣は反応出来ない。
「もう一発!」
「グ⁉ガ・・⁉」
間髪入れずに追撃。地に伏した獣は、そのまま跡形も残らず霧散していった。
「まだまだぁ!」
そのままの勢いで残りの一匹にも突撃する。
「・・‼グガァァ‼」
気付いたようだけど、時すでに遅し。柔らかそうな胸元に、全力の拳を叩き込む。
声も出せずにひとしきりもがいた後、崩れるように霧散していく・・戦闘終了だ。
・・え、楽勝じゃないかって?
確かに、こいつら個々の戦闘能力はそれほど高くない。けど、こいつらは鉄やコンクリートを簡単に切り裂けるくらいの攻撃力を持ち、尚且つ集団で行動している。視野に入り次第、速攻で倒すのが最善策だ。
「さぁて、次々!」
勝利の余韻に浸る余裕はないと、次の獲物の元へとひた走る。
・・武力が検出された時は他の優秀な神器使いを呼ぶなんて話もあったらしいが、必要ないだろうということでおじゃんに。
けど、日に日に出現数が増え、被害が増大していること。獣たちを操っているであろう犯人について接触どころか犯行動機、所属などの情報が何一つとして掴めていないことから近々助っ人が来ることになっているらしい。
その助っ人も、優秀なエリート様だと聞いた。まあ、容姿年齢性別はおろか、どんなタイプの神器使いなのかすら知らされてないけど。
「そんな人が増援に来れるなら、最初から用意しておいてって話だけどな」
・・ま、嘆いても仕方ない。未来の戦力の心配より、今はパトロールに集中しよう。
神経を研ぎ澄すまし残りの数を探る・・・・残り十か。これならすぐに終わりそうだ。
俺は少しでも被害が出さないよう注意しながら、獣を近い順に屠っていく。
「・・くっそ!やられた!」
あらかた倒したので被害の確認をすると、ちらほらと壁に爪痕が。一つ増えるごとに花さんの折檻と小言が増えるから勘弁してほしいんだがなぁ。
「灰。残りは?」
周囲の獣を全て倒したので、通信機ごしに灰から現状を聞く。
「・・敵はほぼ全滅。残りは俺がやるからそのあたりの被害を確認しておいてくれ」
「了解。気を付けろよ」
灰には後方支援をお願いしているけど、俺よりも索敵に優れているから後始末はいつも任せている。
さて、俺も残りの仕事を・・ん?
「・・・・新しい気配?」
少し遠くに正確な数は把握できないけど、新しい武力の反応がちらほら。
「・・どういうことだ?」
いつも最初に現れたきりで、途中で増えることなんてなかったのに。
・・ともかく、行ってみないことには始まらないか。
俺は急ぎ、敵の出現地へと向かうのだった。
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