三つ目 体験した&聞いた話 子供のころ

兄の話

兄は今ではとてもおとなしい、というか人前(友人や身内を除く)で騒ぐことはめったになくなったのですが、子供の頃は、すさまじい人見知りだった私とは対照的に、とても愛想がよく、何が楽しいのか、年中明るく笑顔(ただし人一倍KY)な子でした。

そんな子でしたから、問題も奇行も人一倍だったのですが、その中でも「ひょっとして・・・?」というものを一つ。

たしか、(話を聞いた限りだと)私が生まれて少し経ったくらいのころ。

みんなでドライブに行きました。

兄は後部座席に乗って窓の外を眺めていたのですが、突然窓の外に手を振りました。

「どうしたの?」とお母さんが聞くと、

「おとなりのおばあちゃんがてをふってくれたの!」と言いました。

「お隣のぶーぶのおばあちゃん?」とお父さんが聞くと、

「ちがうの、おとなりあるいてたおばあちゃん!」と言いました。

それはあり得ない事でした。だって、

車が走っていたのは高速道路だったのですから。


私の話

私自身が覚えてはいないのですが、似たようなことをしたことがあったようです。

居間だったか座敷だったかでおままごとをしていた時の事。

ちょうどやることがなかったお母さんと祖母と私の三人で遊びました。

祖母がそこにあったおせんべいを持ってきて、三人で取り分けようとしたら、私がやりたがったため、私がやることになりました。

わたしのぶん、と言って、自分の前におせんべいを置きました。

ママのぶん、と言って、お母さんの前におせんべいを置きました。

ばあばのぶん、と言って、祖母の前におせんべいを置きました。

おじちゃんのぶん、と言って、誰もいないところにおせんべいを置きました。

祖母とお母さんは、最後の一言で「えっ?」と思いました。

だって、三人しかいないのに、私は居もしない「おじちゃん」の分を置いたのですから。

「おじちゃんは居ないよ」とお母さんが言ったら、

「いるもん!そこに!」と、私は誰もいないところを指さして言いました。

気味が悪くなった祖母とお母さんが、私を連れて部屋から出ようとしたら、

私は「おじちゃんばいばい!」と言って、誰もいない方向に手を振ったそうです。


これを友人に話したら、ほとんどの子が小さい頃は空想と現実の区別がつかないからだ、と言ったのですが、果たして本当にそれだけだったのでしょうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る