第6話大岩

山本「これが日ノ岡までの間にいくつかあるはずだ。

 空気孔だ。出入り口もどこかにきっとある」

   太一、先のほうを歩いている。


原田「日ノ岡の方角は?」

山本「太一の方角だ」

太一「又あったよ」


山本「そうか分かった。出入り口は日ノ岡の工事現場だ」


原田「一直線にトンネルが掘られている」

山本「そうだ。まちがいない。一旦戻ろう」

   原田と太一、うなづく。


○不老の滝

   不老の滝の水のみ場に木村と高田がいる。

木村「この水のみ場の石とあの2枚の石以外にこの印は見つからないわ」


高田「なんやろ、あのマーク?あれ、亜紀ちゃんは?」

   亜紀、向こうで手を振っている。


○同、一枚岩

   不老の滝の頭上はるかに大きな一枚岩がある。

   その中央に苔むして分かりにくいが羽根マークがある。

   木村、高田、亜紀が見上げている。


高田「あった、あそこ」


木村「とにかく一旦戻りましょう」

   高田と亜紀、うなづく。


○清水、能舞台下

   6人が集まっている。

   地図を広げている。


山本「能舞台、不老の滝の一枚岩、空気口。これらは

 一直線に日ノ岡に向かっている」


   向こうから出羽と亀山が来る。

   6人、隠れる。

   出羽と亀山、能舞台を見上げながら、


亀山「この能舞台が流れ去るなんて事は」

出羽「それはないやろう」

   6人、声を押し殺して笑う。



○道路、日ノ岡。夜

   雨が降っている。

   ワゴン車が近づきとまる。

   山本、原田太一が忍者姿で下りてくる。


○土手、夜

   土手の堤にトラックが止まっている。

   道路からは見えていない。

   3人の後ろすがた。


○トンネル入り口、外、夜

   トラックの荷台はすっぽりとトンネルに入っている。

   奥は暗くてよく見えない。

   3人、トラックの脇からトンネル内に入る。


○トンネル内

   3人奥へそろりと歩む。

   人影が出てくる。

   3人、身を隠す。


 皆で掛け声をかけながらリズミカルに作業が続いている。

掛け声「エッサーホイサーエッサーホイサーエッサーホイサー」


○同、坑道

   3人がゆっくりと忍び歩いていても誰も気付かない。

   ゆっくりと前進する3人。

   槌を手渡す一味たち。


一味「エッサーホイサーエッサーホイサーエッサーホイサー」


○同、坑道

   奥に行くほど広くなっている。

   下り坂である。


○同、突き当たり

   突き当たりに大きな岩盤がある。

   一味の何人かがドリルで岩盤に穴を開けている。


 何人かが上下左右を彫り広げている。

一味「エッサーホイサーエッサーホイサーエッサーホイサー」


○同、岩陰

   かなり広い空洞。

   3人の姿が岩陰に見える。

山本「わかった」

   原だと太一、山本を見つめる。

山本「わかったぞ!皆、大急ぎで退却」


 皆、大急ぎで退却する。


○ワゴンの中、夜

   忍者姿の3人がいる。

   ワゴン、雨の中を走る。

原田「で、何が分かったんだ?」


山本「よく聞けよ。まちがいない。一味は疎水が

 浄水場と分かれる手前からトンネルを掘って、

 流れを一気に清水方面へ向ける」


原田「なるほど」

   太一、目を輝かせ聞き入っている。


○シネマ村、オープンセット脇

   6人がいる。

木村「どうやって流れを変えるの?」

山本「それは分からん」


高田「何で岩に穴あけとるん?」

山本「それなんだが。坑道は奥に行くほど

 ずいぶんと広くなっている。もっと広げるつもりだ」



原田「で?」

山本「貯水場にするつもりだと思う」

木村「思いっきりたまったところで」


亜紀と太一「バーン!」

高田「ああ、びっくりした」

原田「貯水場が決壊する」


山本「そうだ」

木村「大量の水が一気に溢れ出し、清水の能舞台を

 水圧で押し壊し、清水坂を五条通へ流れ下る」

亜紀と太一「バーン!」

山本「そのとおり」

高田「相当の水が要るのとちゃう?」


山本「相当の水がめと水が要る」

木村「大雨洪水警報が出たとき」

原田「それは梅雨の終わりや、7月の中旬」


亜紀「祇園祭」

太一「長刀鉾」

山本「水無月の長刀鉾に誘われて、というのは?」


原田「7月祇園祭の後、大雨洪水警報が出たときや」

   6人、おおきくうなづく。


高田「ひょっとしてその水がめのふたてあの大きな岩とちゃう?」

   皆、高田の顔を見る。


○清水、不老の滝、大岩

   6人が大岩を見上げている。

   6人、顔を見合わせて、

6人「まちがいない!」


そこに住職が通りかかる。


高田「ちょっとすみません」

住職「はい、なんでしょうか?」

高田「あの大きな岩の上のほうに鳥の羽根の

 ような形が見えますが、あれは?」


住職「よう気がつきなさったな。あれはこの清水を守る

 鉾の形、長刀鉾じゃよ」

   6人顔を見合わせ、

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