TS娘が親友♀を煽りまくって食べられる、その前のお話~夏祭り~

totto

第1話夏祭りと花火

 梅雨が過ぎ、暑い夏、真っ盛り。



 「あぢ~~~~」



 これからの事を考えてクーラーの温度を上げておいたが、失敗してハシタナイ声が出てしまう。

 夏の照り付ける様な日差しと、男の時は感じなかった目線を肌で感じるように成ってからは、蒸し暑さとは別の不快さがあって嫌になる時期。

 そうなのだ、私は元は男だった。

 男として死に、生まれ直して女になったこの身。 今では男だった頃が懐かしく思える。


 こんな私には、同じ年の幼馴染で親友の女の子が居る。 保育園からの付き合いになる女の子、エリナ。 家も近いこともあり、今では家族ぐるみで付き合いがある程だ。

 出会って直ぐに『これは将来は美人さんに成る』と思い、幼い私が唾を付けたのだ。 予想は的中し、すくすくと可愛らしく綺麗に育っているエリナにメロメロ。

 女の身になっても恋愛対象は女性。 そしてその相手に、不運にも選ばれてしまったのがエリナだったのだ。

 そして、当の本人は現在立派な『ましろ好き好き』状態になっているので、その純情好意を弄びながら『親友以上恋人未満』のような状態を続けている。 我ながらヒネクレ者だと、自覚している。

 


 そんな私達2人は、新しい学校での最初の夏休み。

 毎日一緒に遊び、時には水着姿で同じ年より肉付きの良い胸で誘惑してヤキモキさせたり、一緒に夏休みの宿題をしながら無防備に胸チラをして、無防備に誘っている風を装いお預けしたりと、充実した毎日を送っていた。


 夏休みも中頃に入り、ついにやって来た一大イベントである夏祭り&花火大会。 いつもは別々で開催されていた2つが、今回初の合同開催。 地域活性化を目的として開かれるビックイベントだ。

 勿論、これに参加しない手は無い。 前もって、エリナには和紙に筆でつづった手紙でお誘いを掛けてある。 我ながら風流。



 「素敵な手紙ありがとう、ましろ♪ 早く当日に成らないかなぁ……」



 と嬉しそうに手紙を握り締めてお礼を言うエリナ、プレイスレス。

 バレないように『デートぉデートぉ』と嬉しそうに呟いて居たが、聞こえているぞ。


 夜から始まる花火大会に向けて、先に我が家で浴衣に2人で着替えて夏祭りに出かけて、帰ってきたらウチの縁側で人混みを避けながらゆったりと花火を鑑賞する予定だ。

 浴衣に着替える目的はもちろん、エリナの浴衣姿が見たいのと、私の浴衣姿で誘惑するのが目的という事はエリナは知るよしもない。



 「ふふふ」



 エリナのリアクションを想像してニヤニヤしてしまう。 どんな風な反応を見せてくれるのか楽しみだ。


 待ち合わせは3時、お昼ご飯を食べて程よくお腹がこなれた頃。

 もうそろそろエリナがやって来る頃合。



 ピンポーン


 「ごめんくださーい!」



 とエリナの元気な声。 どうやら時間ピッタリに来たようだ。



 「いらっしゃいエリナ、待ってたよ♪」


 「う、うん!」



 可愛らしい笑顔でエリナを出迎え。 効果は抜群で、少し面を食らって顔を赤くしているエリナと共に客間の方へ。

 客間では、うちの母が今か今かと可愛い娘達を浴衣姿にすべく待ち構えている。 



 「お母さん、エリナが来たよ。 浴衣を着せるの、よろしくね」


 「エリナちゃんいらっしゃい。 さぁ、ましろ共々可愛く仕上げちゃうわよ」


 「ましろのお母さんこんにちわ。 今日はよろしくお願いします」



 そこからは意外と素早く、お母さんは手慣れた手つきで、パパパッと1人15分ほどで仕上げてしまった。



 「2人共、とても似合ってるわよ」


 「そうですか? 普段着ないので、少し照れちゃいますね」



 とお母さんの言葉に少し恥ずかしそうにするエリナ。



 「ホント似合うよ! エリナの明るい髪の毛が栄える落ち着いた色合いで素敵」


 「あ、ありがとうましろ/// ましろも白色の浴衣が似合ってるね!」


 「えへへ、ありがと♪」



 エリナは紺色生地に少しピンクがかった白で花の模様が施された浴衣を着ており、私は白い生地に淡い色合いの水色とピンクなどの花の柄が描かれた物を着ている。



 「そうだ2人共。 せっかくだから髪の毛もまとめてみましょう」


 「あ! それなら私がエリナの髪の毛を纏めてあげたい!」



 勿論、合法的にエリナの髪の毛を違和感なく触るためだ。



 「それなら私も、ましろの髪の毛を纏めてあげたい!」


 「ふふふ、はいはい。 2人でどうぞ」



 私達のやり取りが面白かったのか、笑いながら部屋を出て行くお母さん。

 


 「それじゃあ私からお願いして良いかな?」


 「いいよましろ」



 早速、髪を結んでもらう。 何故かって? 勿論、私の番の時にエリナを弄りやすくする為だ。



 「ましろの髪はいつ触ってもサラサラしていて気持ちいいね。 ……ずっと触っていたいぐらい(ボソ」



 そうでしょうとも、そうでしょうとも。 エリナを堕とす為に綺麗にしておりますから。



 「ここをこうして、っと完成! 出来たよましろ」

 


 優しい手つきで髪をすかれながら、気持ちよく感じていたらすぐに終わってしまった。 少し残念だ。



 「よし、次は私の番ね。 エリナ、むこうを向いて」


 「はい、お願いします」



 よしよし、しめしめ。



 「エリナの髪も綺麗だよね。 少しフワフワしているから、纏めるのが少し勿体無いね」



 エリナの髪を触りながら、何気ない風に呟く。



 「そういえばさ、さっき浴衣に着せ替えして貰っている時、私の胸……チラチラ見てたよね?」


 「…………(ッギク」



 一瞬エリナの肩が揺れた。

 女性は男性のイヤラシイ視線に気が付くと言うが、本当に良く分かる。 特にエリナの熱い視線は良く分かる。 伊達に10年近くも幼馴染をしていない。

 え? 私? 勿論、バッチシ見ましたとも。 脳内永久保存しましたとも。



 「やっぱり、エリナも羨ましい?」



 同年代の娘より背が低いのに、大きく育ってしまったこの胸は、良くクラスメイトの女子達からも羨ましがられるのだ。



 「そ、そそそうなんだよね! 私もましろ程あったらなぁって思ってさ!! ほら、私って少し小さいし!?」



 欲情の目で見ていた事が、バレてないと思い慌てて肯定する。 まぁバレバレだが。



 「こ~~~ら、ちゃんと前を向いて」



 言い訳をしようとして、コチラを向きかけていたエリナの頭を両手でホールドし、前を向かせる。 その際に、良く育った胸を押し付けることも忘れない。



 「はぅっ!?」



 すると途端に大人しくなるエリナ。 ホント可愛い。

 私の胸は大きいので、ノンワイヤーブラでパットなしだから浴衣越しとは言え、いつもより柔らかい感触がエリナの後頭部を包み込んだことだろう。

 

 体を離し、エリナが硬直している内に髪の毛を纏め終える。



 「よし完成! ほら、エリナ立って。 早くお祭りに行こう」



 未だに惚けているエリナの手を取って引っ張り上げる。



 「わわわっ! ちょっと、ましろってば」


 「ほらほら♪」



 驚きながらも、さり気なく手の感触を楽しんでいるエリナを引っ張り、早速出かける準備をした。






 エリナと手を繋いだまま家を出て、ずっと聞こえいた祭囃子まつりばやしの音に少し気持ちを高ぶらせながら、下駄を鳴らしながらお祭り会場に着けば、人、人人人とすごい人混み。

 はぐれてしまわなぬ様、握った手を強く握り締め歩き出す。


 歩き始めれば、道行く道のそこかしこに屋台が並んでいる。 中には出店の様な物もあり意外と楽しい。 何故かって?



 「すごい人だよねぇ。 あっ、あそこにりんご飴あるよ!」



 と笑顔のエリナに引っ張られてりんご飴を一緒に食べたり。



 「綿あめだ! ねぇねぇましろ、一緒に食べようっ!」


 「いいね! 半分こしようね」



 と私より背丈の高いエリナの方が、幼く見える程ハシャグのだ。

 そんなエリナに釣られて私もハシャグ。 だって好きな人と一緒に過ごす時間は、何よりも楽しいモノだから。


 屋台で買ったたこ焼きを摘みつつ、いろんな屋台を冷やかしながら1つの出店の前を通りかかると、珍しいことに、そこではかんざしが売っており、色とりどりの簪を2人で物珍しげに眺めながら、バカップルの様にイチャコラとアレが似合うコレが似合うとやり合っていた。



 「やっぱり簪って高いねぇ」



 エリナがシミジミと呟く。

 そうなのだ、出店としては良い物が並んでおり、案の定、値段はそこそこ高くて1つで私達のお小遣い1ヶ月分の殆どが飛んでしまう。

 しかし、この漆塗りの様に黒い櫛にトンボ玉が付いているヤツとか、エリナに似合いそうだ。 頭の中で財布の中身と値札を吟味。 一応買えるけど、今月のお小遣いピンチ待ったなし。



 “ここは、ちょっと交渉して値切ってみようかな”



 思い立ったが吉日、即実行だ。

 


 「すみませーん」



 エリナから離れて、2人居た若い女性の店員さんの1人に声をかけてみる。



 「はいはい、どうしました」


 「これ、贈り物として買いたいのですけど、ちょっと予算が厳しくて……まけてもらえませんか?」



 と手に持ってきた簪を見せて、素直にお願いしてみる。

 この時『私困ってます』と若干上目遣いで可愛らしくお願いするのも忘れない。 幼い容姿も相まって、意外と女性の方にも効果あるのだ。



 「そうねぇ…………」



 店員さんは何故か私の上から下までジックリと眺めながら長考。 何故か嫌な予感がする。



 「よし、そのおっぱいを触らせてくれたら良いよ!」


 「え゛っ?」



 おっといけない。 あまりの提案だったので、ついハシタナイ声が。



 「ごめんごめん。 うそよ、うーそ♪」



 全然嘘に聞こえなかったぞ。 大丈夫なのかこの店員。



 「贈り物って、もしかしてあそこに居るに?」


 「はい」



 なぜか彼女のニュアンスが若干可笑しかった気がするが、気のせいだよね?



 「そうか、そかそか。 なら、お姉さん応援しちゃう! 特別にまけてあげよう」


 「ありがとうございます!」



 何故だろう、すごく誤解されている気がする。 いや、実際には誤解でもないのだけれど。 とりあえず、目的の値切りが成功したので良しとしよう。

 お会計の為に、この日の為に買った小銭入れからお金を出し手渡す。



 「はい、丁度です」


 「毎度あり♪」



 お金を渡して、品物を受け取ろうとしたら不意に、店員のお姉さんが顔を耳元に近づけて――――――

 


 「がんばりなよ(ボソ」



 そう言って離れていく。

 もしかして、告白をする為に簪を買ったとでも思われたのだろうか。 はたまたカノジョにプレゼントする為に、とでも思われたのかな?



 「えっと……違いますよ?」


 「そうなの? あんなに仲良さそうだったから、てっきりそうなのかと。 ちなみに、私のカノジョは向こうにいるけどね」



 なるほど、この人もコッチ側の人間でしたか。 なら、私達の関係性に感づかれても仕方ない。



 「まぁ、私達はですけどね♪」



 私はそう言って、ウィンクをする。



 「くくく、これは相手の娘は苦労しそうだね」



 そんな私を見て、苦笑いをする店員さん。

 店員さんと他愛のないやり取りをしていると、エリナがやって来た。



 「ましろ、行こう?」


 「おっと」



 ちょっと強引に手を引かれて店から離れる。 出店の方を見ると、先ほどの店員さんが笑顔で手を振ってきたので、お礼の意味も込めて振り返す。

 時間も丁度いい感じに過ぎており、あと1時間もしないで花火が上がる時間となったので、その足で家に帰ることに。



 カランコロンッカランコロンッ



 2人分の下駄を鳴らす音を響かせながら、来た道を戻って行く。

 エリナは私の手を未だに握り締められながら、少し引っ張るようにして歩く。 横顔はちょっとムスッとしており、私達の間に会話が無く、ちょっと気まずい。 エリナが機嫌悪そうだが、これはもしや?



 「ねぇエリナ」


 「……なに」



 少し間が空く返事。



 「怒ってる?」


 「怒ってない」


 「じゃあ、拗ねてる?」


 「…………すねてないし」



 はい、拗ねている様です。 上手く嘘を付けないエリナは本当に分かりやすい。

 店員のお姉さんと話しているのを見て、嫉妬したのかな? 



 「にしし♪」



 そんなエリナの腕に、笑いながら抱きつく。



 「ちょっ! ましろ?!」



 急に腕に抱きつてきた私に驚き戸惑う。 更に強く、私の横乳に強く押し付ける。

 そんな気はなくとも、2人っきりのデートで、違う女性と仲良さそうにしていたら、拗ねるのも当たり前だ。

 お詫びと、可愛らしいエリナにサービスするつもりで家に着くまで、ずっと腕にしがみついて歩いた。


 今度は違う意味で無言だったが、心地よい沈黙だった。






 家に着き、2人で縁側に座り花火が上がるのを待つ。



 「楽しかったね、夏祭り」



 そう言い、日が暮れて、少し涼しくなった風に吹かれながら思い返す。

 履き慣れない下駄は少しばかし痛かったが、それ以上に楽しい思い出ができたので満足だ。

 


 「そうだねー。 でも慣れない下駄でちょっと疲れちゃった」



 エリナは同意しつつ、隣に座っている私の方に倒れてくる。



 「はぁ~~~生き返るぅぅぅ」


 

 傾けた頭をそのまま私の膝の上に乗せて、膝枕をさせられる。 全く仕方の無い幼馴染だ。



 「んーーーーーーー」



 何を思ったのか、そのまま頬でスリスリし始める。 別に、これぐらいは何ともないので放置。

 


 「…………(そぉーーー」



 更には、調子に乗って手を伸ばし始めるエリナ。



 「ってい」


 ッベシ!


 「いっつぅ…………」



 エスカレートする前に、チョップで頭を叩いて止める。



 「イタズラする人にはここまで。 しゅ~りょ~」


 「うぅぅぅ……」



 頭をさすりながら身を起こすエリナは、目に涙を浮かべている。



 「ましろぉ、ちょっと強すぎ……」


 「イタズラしようとする方が悪いんです。 それよりも、はい、コレ」



 私は袋から例の物を取り出して、文句を言うエリナに渡す。



 「ん? これは?」


 「開けてみて」


 「どれどれ……ってコレは、さっき出店で売ってた簪! 貰っちゃってもいいの?」


 「もちろん。 その為に買ったんだから。 ちょっと貸して、付けてあげる」



 エリナから簪を貸してもらい、後ろを向いて貰う。 すると、たくし上げられて見えるうなじ。 ちょっと汗で蒸れており、セクシーでイタズラしたくなるのをグッと我慢。

 お団子にしてある髪の毛に、簪をソッと差し込んで上げる。


 

 「出来たよエリナ。 こっち向いて」


 「どっどうかな?」



 ちょっと照れくさそうにモジモジとコチラを向くエリナ。



 「うん、とっても似合ってるよ♪」


 「そう? えへへへ、ありがとうましろ!」



 そう言って私に抱きついてくるエリナ。

 キャッキャッと騒いでいると、後ろの戸からお母さんが呆れ顔を覗かせた。



 「あんた達、ホント仲が良いわねぇ。 ほら、そんなに騒いでたら暑いでしょ? かき氷作ってきたから召し上げれ」



 お盆に乗せた2つの容器には、白色に輝く氷の山にピンク色のシロップが掛かってる。



 「ありがとうお母さん」


 「ましろのお母さんありがとうございます!」



 お礼を言い、早速熱くなった体を氷で冷やす。



 ヒュゥ~~~~~~~ッドン!!



 独特の体に響き渡る爆発音と共に、1輪の花が夜空に咲き誇る。

 


 「あっ、ましろましろ花火始まったよ!」



 無邪気に笑うエリナの横顔が、一瞬の輝きを放ち、散りゆく大輪の光に照らされる。 いつもよりも輝く笑顔に、胸がキュンとしてしまった。



 「ねぇねぇエリナ」



 エリナの名を呼びながら、スプーンに、キンキン冷たい氷をすくい、エリナの口の近くに持っていく。



 「どうしたの――――――」


 「えい♪」


 「んーーーーー!!!」



 コチラを振り向いた瞬間に、空いている口の中にスプーンを差し込むと、エリナが驚きのあまり口を閉じ呻く。

 そんな可愛らしいくも、愛おしい幼馴染であり、親友に告げる。




 ドォーーーーン!!


 「――――――き、だよ」



 呟いた私の言葉と花火が、夏の夜に儚く消えた。

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