入団試験
「とりゃあぁぁぁぁ!!」
ディールの叫び声と、木刀のぶつかる音が、闘技場に響きわたる。
「どうしたら小僧、お前は威勢だけか?」
「くっそがぁぁぁぁぁ!」
ディールは思いっきり踏み込んで、ノピアの体めがけて木刀を振り下ろす。が、ノピアはそれを華麗にかわし、ディールにカウンターを食らわせる。
カウンターを食らったディールは、後退し、もう一度構え直す。
「クソッ。クリティカルオーバーが発動できねぇ」
魔法が使えないディールが持っていた能力の一つ。クリティカルオーバーが発動しない。
何か条件があるのか、さっきから色々試したが全てダメ。
(ダメだ、発動出来なかったらこいつに絶対勝てねぇ。クソッ、どうすればいいんだ )
「どうした小僧、来ないのか?じゃあこっちからいくぞ!」
ノピアが物凄いスピードで一気に間合いをつめ、ディールの左横腹に木刀を振った。
それに反応したディールもとっさにガードするが、左手に持っていた木刀が弾き飛ばされ、無防備になってしまった。
「なっ!?」
「小僧、降参しろ。お前じゃ俺どころか、最近入った新人にも勝てん」
ディールは膝を着き、降参しようとしている、周りが確信した、もちろんノピアも。
だが、ディールは諦めていなかった。
「食らえぇぇぇ!」
ディールはノピアめがけて砂を投げた。
「な!?」
ノピアは少し気が緩んでいたのか、反応に遅れ、目に砂が入ってしまった。
「汚いぞ小僧!!」
「戦いにキレイも汚いもあるか!勝った方の勝ち、それが戦いだろ!」
ディールはすぐさま飛ばされた木刀を拾い、目に砂が入って前が見えなくなっているノピアに、襲いかかった。
「うおりゃ!」
一撃目は右腕を捉えた。
「食らえぇぇぇ!」
二撃目は右横腹。
三撃目は右腕。
四撃目は――――
ディールは何度もノピアをメッタうちにし、十六撃目に入ろうとした瞬間、ディールの体が吹き飛ばされた。
「小僧、第二ラウンドといこうか」
ノピアはディールの攻撃のダメージを、全く受けていなかった。
「小僧、お前に一つ言っといてやろう。お前の攻撃は、軽すぎる」
そういった瞬間、ノピアが消えた。
そして消えた瞬間、後ろから声が聞こえた。
「悪いが、試験はここまでだ」
そう聞こえた瞬間、ディールの意識は途絶えた。
目が覚めると、ディールはベッドの上で寝ていた。
体を起こして周りを見渡すと、石で囲まれていた。
周りにある石の壁からして、おそらく闘技場の中、でも思い出せないのは、なぜ自分がここにいるのか。
「ガチャ」
と言う音と共に、ドアが開いた。
そして中に入ってきたのは。
ノピアとミルシ。
「目が覚めたか、小僧」
「それにしても寝過ぎだよ、丸一日寝てたんだから」
ノピアの顔を見た瞬間思い出した。
自分はノピアと戦って、急にの前が真っ暗になった。
「あの・・・俺は、不合格でしょうか?」
恐る恐る不安げな顔で尋ねるディールとは正反対に、ノピアは笑顔で言った。
「なに言ってんだ?合格に決まってるだろ」
「あ、私も合格したからね」
二人から返ってきた返事に安堵の顔を浮かべた瞬間、ディールの腹が鳴った。
「この後には入団式がある。が、その前にお前は腹ごしらえだな。ミルシ、こいつを食堂に連れていってくれ」
「了解。さ、早く行くよ」
場面は変わって団長室。
椅子に腰かけているのはノピアとディールを案内した好青年。
「団長、なぜ彼を合格にしたのでしょうか、あのミルシと言う娘の合格には、私も賛成ですが」
「スラー、あいつは俺に言った。戦いにはキレイも汚いもない、勝った者が勝者だと・・・」
「それがどうしたのですか?」
「俺は、忘れていたんだよ。戦いとは何か。命をかけた勝負だって事を」
「それを思い出させてくれたから、彼を合格に?」
「いや、理由はもう一つある。あいつは・・・」
「あいつは?」
「いや、何でもない。忘れてくれ」
「はぁ、分かりました。それでは私はこの辺で」
スラーがいなくなった部屋で、ノピアは一つの写真を見ていた。
あいつは絶対にここに来ると分かっていた。
なぜならあいつは、ディールは―――――――
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