必要なもの

王都フォルテ。現国王、メルゾ・フォルテが納めるその国は、今現在世界にある国の中でも、ベスト5に入る領土を保有している。


そしてその国には、力だけが求められる騎士団。

ドルモアス騎士団があったそうだ。



「あー、死ぬかと思った」


ディールは、ヨレヨレと生まれたての小鹿並の足で歩いていた。


「だからごめんって言ったじゃない。あれが私にとってのゆっくりだったんだから」


それもこの女、ミルシ=ルテナのせい。


王都までひとっ飛びできると言う誘惑に負けた俺も俺だが、歩けば一週間かかる道のりを、30分で飛んできた。


「人間の町を見たことはあったけど、実際に来たら大違いね。なんだか楽しい」


「俺は現在進行形で楽しくないけどな、てかお前、ここにきた目的忘れんなよ」


「分かってる、分かってる。あぁ、あのアクセサリーすっごくキレイ♪」


「おい!だから目的を・・・」


ミルシは近くにあった店に並べられているアクセサリーに夢中になり、もはやディールの声は届いていなかった。


(にしてもキレーな町だな。宝石店に市場、服屋に雑貨屋。あの村にはなかったもんばっかりだ)


「ねぇ、ディール!この宝石私に似合うと思わない?」


ミルシはキラキラとした目で、ディールのことを見つめ、買って欲しいアピールをしてくる。


「ミルシ、今の俺たちに、そんなもん買う金があると思うか?」


ディールはため息をし、ミルシが持っていた宝石を、店に並べ直し。ミルシの肩に手をおいて言った。


「いいかミルシ、俺たちは、騎士団に入るためにここにきたんだ。それ以外の目的じゃない」


「でもあの宝石・・・」


少し涙目になったミルシに、次は頭に手をおいて言った。


「あれは騎士団に入って、そのあともらった給料で買えばい」


「うん、分かった。そうする」


「よし、それじゃあ行こうか。入団試験」


ディールが指を指した方向には、とてつもなく大きい闘技場が、あった。




「それでお前らは、入団したいんだな?」


「「はい!」」


ディールとミルシが闘技場にたどり着くと、30代位のこわもての男が入り口に立っていた。


話によると、身分や出身地も全て関係なく、騎士団に入れるらしい。


そしてドルモーアス騎士団に入るのに必要なのは2つ、入団したい気持ちと、強さ。


この二つのみ。


「よーしお前ら、1つめは合格だ!だがその変わり、2つめをクリアするのは常人では無理だ。そこは理解しているな?」


「もちろん」


「理解していますよ」


出会ったとミルシの答えに満足げな顔を浮かべた男は、二人をある部屋につれていった。


その部屋は・・・


「武器庫か?」


「少し違う、この部屋にある武器は全部木でできている」


「試験で使う武器を選べって訳か」


「そういう事だろうね」


そして二人は一つずつ武器を手に取った。


ディールは木刀。


ミルシは木でできた大剣。


「お前よくそんなもん持てるな」


多分騎士団に入っている者も驚くだろう。


ミルシは片手で大剣を持っているのだ。


「私は神様よ?人間とは根本的に体の造りが違うの、お父様はこの10倍ある剣使ってたは」


「怖すぎんだろ、お前の家庭」


「そんな事ないわよ」


と、二人が談笑していた所に、一人の男が入ってきた。年齢的には18と言った所だろうか、金髪で青色の目をしている好青年だった。


「ディール=サランダ、君の試験を開始する、こっちにきたまえ」


「行ってくるは、ミルシ」


「うん、頑張って」


そうして連れていかれたのは、周りに観客が大勢いる闘技場の中。


「今から君にはここで戦ってもらう」


「なんだそりゃ、猛獣と戦わせようってか」


「少し違う」


気がつけば、好青年の姿は消え、ディールの真後ろに入り口にいたこわもての男が立っていた。


「今からお前が戦うのは人間だ。ただし、化け物だがな」


「それってあんたの事?」


ディールが確認をとると、男はフッ、と笑い、真ん中に歩いていった。


「俺は団長のノピア=メッゾ、今からお前の相手をする、よろしくな」


ノピア・メッゾが持っている武器は木刀、ディールと同じ武器だった。


ディールは武器をギュと握りしめると、メッゾの前まで歩いた。


「ルールは二つ。一、相手を殺さないこと。

二、魔法を使わないこと。この二つだ。」


「分かった、じゃあ早く始めよう」


「威勢のいいガキだ。いいだろう」


二人はお互いの構えに入った。


ノピアの構えはディールに比べるとやはり熟年と言う風格が現れている構えだった。


「小僧、お前からこい!」


「それじゃあ、お構い無くいかせてもらうぞ!」


ディールは深く踏み込み、一気に加速してノピアに向かった。


「うおりゃゃゃゃゃゃ!」


入団希望ディールと団長のノピア、今二人の戦いが始まったのであった。

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