7話 『パッシィオーネの終焉 1』

【パッシィオーネアジト、ベリー邸】

 パッシィオーネの幹部ベリーの館兼主要アジトであり、周りのシザ内の建築物同様に白い石造りの屋敷である。

 しかし、敷地と広い庭を囲む壁は、街の情景に溶けない違和感が発せられている。

それは壁外にマフィアの見張りや用心棒が多数配置されているからだ。

内部の庭にはワゴン付きの馬車が五台止まっており、マフィア組織員達がぞろぞろと馬車から降りだしている。


 今日はベリーが主催するパッシィオーネのパーティーがあり、その他二名の幹部も社交の為に出席している。

 組織同士の取引と交流を建前とした媚売り、また定期的な情報交換の場となるこのベリー邸だが、

これからここで起こる事をいったい誰が予測していただろうか。

予測できていたとしても、それはバルカスの正面突破での襲撃だろう。

その事を警戒しているが為に屋敷に集まるマフィアや用心棒の数が多く、正門は固く守られている。

 だが上空はどうだろう? 上空からの襲撃は、誰が予測できようか。それも訳の分からない三人を連れてである。


――――

「今更だが!! これ大丈夫なのか!? 」

 勢いで飛び出したバルカスの顔は若干引きつっており、視線は回りながらもカミラを見て問いかける。

「大丈夫よ! 私のオールガードの防御力は、恐らくこの世で四番目に硬いから! 上空からの落下の衝撃でどうにかなるような物じゃないから! 安心していいわよー! 」


 四人は豪速で降下中である。


 ビンセントはこの落下に慣れており、カミラとミルは落下しながらはしゃいで楽しんでいる。

この強襲方法は完全にカミラの悪ノリであるが、本人とミルが楽しんでいるので、元高所恐怖症であったビンセントは良しとした。


「わはははは――!! 」

 笑う少女二人とビンセントを合わせた三人を、改めて何か異様なモノに感じている。

バルカスは苦笑して大剣を片手持って四肢を大の字にし、回転している体の体勢を本能的に直すと、

自らも狂ってはいないが、武者震いをしながら楽しさが込み上げてくる。


「そうか、段々と慣れてきたぞ、コレはいい!! 」

 大剣を空中で振りかぶって、それに体重を全て預けて振った。


 空中で前転を繰り返しながら落下。

バルカスは未知の動きに慣れ始めているようだが、ビンセントがコレをやれば、吐しゃ物をまき散らしながらの落下となるだろう。


「はははっ止まらん!! もう止まらんぞぉッ! パッシィオーネぶっ潰してやるっ!!! 」

「あははは――、あら? バルカスが加速した、器用だね。ビンセント! 私達も行きましょう! 」

「あ、あぁ」

「わーい!! 」


 ビンセントとカミラは体を下に立て、まっすぐ落下して加速していく。

ミルは翼を一瞬出して一回羽ばたかせるとバルカスに追いついた。


「よしキタキタキタキタキタァッ! 喰らえヤァ――ッ!! 」


――――

 上空から何か叫び声が聞こえる。

盗賊団がそれに気が付き屋敷の上空を見上げると、上空から降下する謎の四人の姿が見えた。


 理解できぬ状況で驚きもせず、ただ呆気に取られてその姿を見て叫びを聞いていた。


「よしキタキタキタキタキタァッ! 喰らえヤァ――ッ!! 」


 バルカスの大剣は建物に接し、爆音と衝撃が屋敷を貫通した。

遅れて二つの衝撃が屋敷を襲い、屋敷のホールにはクレーターができて吹き抜けとなった。


「ふぅ、じゃあいっちょ暴れようか。それにしても、マフィアか、いい格好だな」

「パーティーかしらね。でもお構いなしだけどね」

「いくぞぉ!! 」

「おー! 」


 バルカスが叫びながら大剣を振って組員を斬り裂く。

「我が名はバルカス・バルバロッサ! シザ国の女王である! 」


 理解できぬ状況に動けぬものもまだ多いが、経験豊富な賊は理解して動き出す。


「マフィア『パッシィオーネ』を、西の秩序を乱す犯罪組織とし、ここに滅ぼす! シザ国の法、私との取り決めを破り奴隷貿易を行った罪に、私と国で行った組織の弁護は解消。シザ国法、ギルド依頼、後私の個人的な恨みで貴様らを滅ぼす! 二度言った。覆りはせんぞ! 」


 バルカスの宣言を聞いたビンセントとカミラは苦笑しおり、ミルは笑っていられるが、パッシィオーネとしては冗談ではない。

「バルカス様、どうぞ剣をお納めくださいませ! 奴隷貿易ですが、我々は行ったことがございません」

「しらを切るな、既に証拠をつかんでいる。今頃ダボがその情報を国内と国法と合わせてギルドに伝えている。もっとも周知の事実だったようだが、こうはっきりした物があれば貴様らの隠れる隙もあるまい」

「……もしそうであったとして、たったの四人で何ができましょうか。先ほどの奇襲、どうやったかは分かりませんが見事でした。ですが、ここに集まる我々組織は――」

 バルカスは組員の口を遮るように袈裟に斬り裂いた。

「心配するな。こういうことだ」

 組員は斜めに真っ二つになって床に転がった。


「それより、だ。私達はパッシィオーネを滅ぼすと言ったんだ。じゃあお前等、しっかり守れよ!! 」

 バルカスが横薙ぎで突貫し、ミルもついて行って応戦する。


 ビンセントとカミラが、バルカスにミルを付かせたのは回復の為だが、二人の想像以上に戦闘状態のバルカスは猛威を振るっていた。

マフィア小国を半滅させたのは伊達ではない。

負けてはいられないなと、ビンセントも境界を開いて剣を取り出す。


「ふふ、じゃあ私達も行きましょうか」

「そうだな。ていうかバルカス、あんなデカい大剣よく片手で振り回せるよな」

「ビンセントより力持ちね」

「……何故だろうか、あまり悔しくない。ミルの回復もいらなさそうだな。ミルが楽しそうだからいいけど、カミラのオールガードが掛かってたら大抵は無傷だろ」

「でも幹部のベリーってやつは強いらしいよ。幹部はバルカスも仕留めきれなかったらしいし。見つけたら私達でサクッとやっちゃいましょう」

「そうだな。じゃあ――」


 悠長に会話していたせいか二人はマフィアに囲まれており、ビンセントに組員の剣が迫る。

だが振られた剣は、ビンセントの斬撃により折られ、同一線上の肉体も断たれた。

「おし、じゃあ行こうか」


 クリムゾンオーラを使うまでも無いが、気分で能力を追加開放したカミラは、真紅で透明なオーラに包まれる。

ビンセントは剣を振りながら大きく開けた境界の中に入ると、マフィアの集りの中から出てきて組員を何人も巻き込んで斬り裂いた。


「なんだこいつらは!? ヒィッ――」


 カミラの拳は対象の肉体を飛沫させる。

範囲も速度も追い付けず、ホール内のマフィアは数を一気に減らしていく。

しかしマフィアは屋敷外の庭にも多数おり、その中には幹部もいた。

幹部は状況を理解して戦闘準備を整えて屋敷に向かっている。


「バルカスゥ!! 」

 組員が盾を片手に氷魔法をバルカスに撃ち込む。

「そんな小細工! 」

 バルカスは氷弾を弾くと組員の足を大剣で斬り払おうとするが、組員の武装魔法が造り出した氷槍により行く手を阻まれる――、と思ったがそのまま払われて組員は地面に倒れる。

倒れたが下から突きの体勢をとって突こうとするが、バルカスとの攻撃速度の差に、突く前に真っ二つにされてしまった。


「バルカス様。確かに、小細工はいけませんな。でしたら、私がお相手致します」

 屋敷の門外からバルカスに対して声がかけられる。

バルカスは門から跳躍して距離をとると、門から横に斬撃が走った。

「……お前もいたのか、幹部ジェド。友人の手間が省けて助かる」

「そうですか、それは良かった。しかしあなたのご友人三人、一体何なのでしょうか、とても人間やエルフには思えませんが」


 続く斬撃により門が全壊して幹部の姿が現れる。

「教える理由が無いな」

「そうですか。私達では、どうも太刀打ちできないように思えます。ですがコレも仕事なので、逃げたいところを堪えて、あなた方と戦わねばならないんですがね」

「ご苦労だな」

「全くです、ところでバルカス様のご友人、あの奇襲をしていてその無能力感は一体何なのですか。

それにそのありえない濃度のオールガードは、制御で隠しているのですか? しかし、全てを隠しきるなんていくら制御スキルでも不可能……」


 この男、パッシィオーネの幹部『ジェド・ジェット』は大柄な大剣使いである。

以前カミラに討たれた幹部五人の入れ替わりとして、パッシィオーネに所属した元ギルド軍人である。

 彼の戦い方はシンプルで、ただ力強く速く大剣を振るという物であり、戦争時には最前線で特攻隊長を務めた実力者でもある。

 考察家で、考える事が止まらずに独り言も多く、喋り出したら長い。

バルカスが嫌いとする性格の人物だ。


「ミル、こいつは私がやるが、ビンセントとカミラは――」

「二人は先に二階に上がっちゃったよ! 大丈夫! サポートは任せて! 」


 気が付けばホール内のマフィアは、バルカス周囲の数人を除いて、全て死体や肉塊と化し散らばっていた。

この階の状態と言えば、バルカスとミルに対峙するジェド・ジェットとその部下達が庭にまだ多くいる状態だ。

 ビンセントとカミラは早々に周りを片付けると、バルカスならば大丈夫と見て二階に上がっていたのだ。


「お、おうそうか……。サポート頼む」

「任せて! 」


 分ってはいたが、二人の能力の異常性に苦笑しながら眼前の敵を意識した。

相手は幹部、それも入れ替わりの元ギルド軍人。

(ジェド・ジェット。こいつはうるさくて嫌いだったが、実力者だからな。全力で行かねば殺し切れない)


「カミラ様……やはりあのご友人はカミラ・シュリンゲル様でしたか。紅蓮の闘神が相手、これではパッシィオーネは確かに滅びますな。しかし、あなたならばどうでしょうか、実力は私とごぶごぶ、戦争での戦闘経験は私の方が上ですな。私の仕事は、バルカス様を殺して終いとしましょう」

「長ったらしく喋るなよ。女王に死刑宣告か。面白い、やってみろ」

「バルカス頑張って! 」

「あぁ任せろ」

「……貴女は何者です? 」


 ミルに話しかけるジェドに向かって、バルカスの大剣が下段横薙ぎに振られる。

ジェドは大剣を斬り上げて、バルカスの斬撃を相殺する。

「むぅ……バルカス様の剣も、善いものですね」

「私も伊達に生きてきたわけじゃぁないんでなァ! 」

 バルカスがジェドの大剣を斬り落として踏みつけると、動けぬジェドに右片手に持った大剣を袈裟に斬る。

「……!? ――ぐっ」

 ジェドは後ろ斜めにのめり避けて大剣をかわすが、頭をかすって右耳を削ぎ落された。

バルカスに踏みつけられた大剣は無理に振り上げることも抜くこともできない為、そのまま床を斬り沈めてバルカスの拘束を解いた。

そのまま中段を横薙ぎに振るうと、バルカスの大剣に接して弾き飛ばした。


「はぁーっ! なるほど、コレはいけません。貴女のさっきのお言葉に間違いはありませんでしたね。私も前言を改めましょう、戦闘経験もおよそ変わりない! 」


 ジェドが大剣片手に走り、もう片方の手でテーブルを掴むと、そのままバルカスに投げた。

バルカスはテーブルを裂くが、いくら怪力のバルカスと言えど、大剣を前面に戻すのに若干時間が掛かった。

その間ジェドは、剣の防御が無いバルカスに対して剣を振るう。

バルカスは限界まで姿勢を下げて横に飛び逃げると、ジェドの大剣は空を斬った。

「いやたぶん私の方が上だ」

 バルカスが大剣を持って跳躍すると、ジェドの上段を上から襲った。

ジェドはあえて武器同士での相殺はせず、自分の頬を斬らせてバルカスの足を狙って大剣を振った。

 その狙いを読んでバルカスは機転を利かせて大剣を地面に突き刺すと、それを土台に体勢を変えてジェドの斬撃を避ける。


 斬撃を避けられたジェドは次撃を加えようとするも、上手くはいかない。

バルカスは大剣から手を放し、ジェドの後頭部を右手で掴むと、勢いをつけて壁に叩きつけた。

「がぁっ」

 ジェドの頭は壁にめり込んで動きが封じられた。

バルカスは床に突き刺さった大剣を、体勢を利用して回転したまま左手で持つと、そのままジェドめがけて振る。

 危機に陥ったジェドはバルカスの斬撃を聴覚で察知し、必死の思いで壁を抜けて防御姿勢をとる。

壁を抜けて振り向き先にバルカスの大剣が迫っているが、通過点に自身の腕がある。

それを確認したジェドは右腕を大剣に差し出して身を守った。

「――ん!? 」

「ぐぁぁあぁっ!! オールガード! 」


 大剣はジェドの太い腕の半分の位置で止まり、オールガードはジェドの体を断たれる前に現れて間に合った。

オールガードに弾かれたバルカスは更に追撃をするが、いくら斬撃を加えても全て弾かれる。


「オールガードか、私では砕けないか」

「それはそうでしょう、最高の防御魔法ですから。し、しかしなるほど。私に勝ち目がない事を改めて知らされましたよ。何故貴女様方のオールガードはあれからずっと維持できているのでしょう、それに、どう考えてもその濃度はおかしい。そんなの、反則じゃぁないですか? 」

「……私は魔法のことがよく分からんが、戦争には反則もへったくれも無かったじゃないか。大した問題じゃない」

「そうですがね、じゃあ、私も最後まで仕事を務めさせてもらいましょう。勝ち目の見えない戦いですが、ボスの意志がそうさせるので、仕方ないですね」

「忠誠心は立派だな。じゃあ務めあげて見せろ」

「もちろんです。痛いですが、仕方ありません。まずは、止血からですね。付与魔法、炎魔法をエンチャント」


 ジェドが付与魔法を唱えると大剣に炎魔法が宿り、燃え盛る魔法剣となった。

更にジェドはその剣で、自身の醜く裂けた右手を断った。

ジェドの堪える悲鳴と共に断面は燃え、異臭を放つがすぐさま床に零れ落ちている自分の血で消火すると、止血が完了した。

 バルカスはただ無言でそれを見ていたが、バルカスにとって、それは大して驚くことでもなかった。

苦痛に顔を歪めるジェドだが、残った左手で大剣を持ってバルカスに再度、今度は死力を尽くして挑む。

ジェドの能力やスキルは初めから全て解放されていたが、威力や速度も先程より上がっていた。


「流石は幹部のジェド・ジェットか、おしゃべり野郎のイメージが変わりそうだ。それがお前の力だな! 」

「えぇそうですよ! コレが言葉通り私の全力です! 」


 バルカスの大剣とジェドの大剣が衝突する度に、ジェドの大剣から炎とそれによる高熱が衝撃に乗ってバルカスに発せられる。

しかしバルカスは、カミラのオールガードにより高熱が遮断されている為に全くの無傷だ。


 細く軽いレイピアや短く重量が抑えられているグラディウスならば考えられるが、大剣をそうして扱える二人はどちらも人外といえるだろう。

ジェドのオールガードは効果時間が過ぎて消滅しているが、バルカスの大剣はそれからジェドを斬れないでいた。

 ジェドの部下も応戦しようとするが、ある程度実力が無ければ行ってもただ死ぬだけであり、ジェドの邪魔にもなりかねない。

しかし、そんな中実力を持った者達は迷いなくバルカスを攻撃する。

 炎魔法や氷魔法、どれをやってもオールガードに弾かれる。

ならばと思い、剣を振りバルカスに襲い掛かる。


 バルカスはジェドに押されながらも、振り向きざまにやってきたマフィアの足を回し斬ると、そのままジェドに向けて振った。

続けてジェドの部下が今度は三人やってくるが、同じように斬り裂かれる。

一人は死に、残り二人は致命傷を負いながらもバルカスに一瞬の隙を作らせた。


 ジェドの炎剣を防ぐのには自身の大剣は間に合わず、炎剣はバルカスを袈裟に斬り振るわれた。


「……ヤバかった、オールガードが無かったら死んでたな。後でカミラに礼を言わないと」

「ぎぃぃいいいぃ――!? 」

 炎剣の衝撃は凄まじいが、やはり壊れない。ジェドの全力をもってしても、カミラの赤みを帯びたオールガードには傷一つつかない。

弾かれたジェドは何度も何度もオールガードに斬りかかるが全て弾かれる。

「これで、もう最期です!! 」


 ジェドは両手で大剣を大きく振りかぶって自身最期の一撃を下す。

バルカスはその一撃を自らの大剣を両の手で持って受けた。

瀕死だったジェドの部下はそのまま死に、バルカスの大剣は大きく欠けたが、ジェドの炎剣は折れていた。

ジェドが自分の最期を悟った一撃は、オールガードではなくバルカスによって破られた。

「そうか、お前の最期の剣は悪くなかったぞ」


 ジェドの思う強者、カミラ・シュリンゲルの力にではなく、対しているバルカスの剣によって敗れた。

ジェドの剣は、心底徹底的に敗北していた。


「そうですか……。しかし――」

 ジェドは剣を棄てて歯を剥き出しに大きく口を開くと、バルカスを噛砕かんと迫る。

バルカスの首元にまで牙は迫ったが、ジェドの殺意はそこまでしか届かず、オールガードにより歯と顎が砕かれた。


「……もう終わりか? ジェド・ジェット」

「……そろ、よぅでスね。私の仕事は、これれ終わりでフ」


 バルカスは苦笑しながら大剣を振り上げると、満足そうなジェドの首を刎ねた。

 それを見たジェドの部下はバルカスに怯えたが、ジェドの側近達は続いてバルカスに襲い掛かった。

だが、爆音と共に急に天井が崩れ出して、マフィアは瓦礫の下敷きとなり潰れた。


「上は、一体どうなってるんだ……なんだこれ」

 辺りは瓦礫と埃で視界が悪くて見えないが、瓦礫の上に立っている奴は仲間だと、そいつが発する雰囲気で分かる。


「あぁ、大丈夫だなよかった。ようバルカスにミル、そっちはどうだ? 」

「フッ、なんとかだ。少し危なかった、後でカミラに礼を言わないとな」

「やっほーう! ビンセント! 」

「ミルも楽しそうでよかった。そうか、ただ幹部ってやつはどうやら、結構強いな」


 ビンセントはそう言いながら、上半身だけとなった人を拾って持つとバルカスに見せた。

「……幹部の『ヒスト・ヴィレッチ』、そいつもいたのか」

「カミラにとっては何でもない連中かもしれないが、俺達ではそう簡単ではないらしいな、ハハハッ」


 楽勝そうに見えるのは気のせいか? とビンセントに言いたくなるバルカスであるが、自分の事を思えば簡単ではない事に同意できる。


「違いない、こっちは後組員の掃討だけだ。そっちはどうだ? 」

「全部片づけたよ。幹部はベリーとこいつ、ヒストってやつを確認した」

「全部か……、流石だ」

 バルカスが驚き関心していると、上開口からカミラがひょっこり顔を覗かせる。

「あ! カミラだ! 」

「終わったわね。ミルもバルカスも無事でよかったわ」

 カミラの手には、幹部ベリーの首があった。

「ギルドの討伐対象扱いだけど、首でも証明できたわよね。私このクエスト受注してないから、これで何とかならないかしら」

「そ、そういう事は任せてくれ。じゃあ後は庭の組員の掃討だな。ビンセント、カミラ、手伝ってくれ」

「あいよー」

 幹部三人の首を持った奇襲者バルカスと謎の三名、計四名を見てマフィア組織員は震えていた。

中には気がおかしくなって錯覚し、上の席が空いた事を喜び出す者も出てくる。

だが彼等彼女等が上の席に行ける事は無いだろう。

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