怖い話に気をつけろ

 よし、これで最後にしよう。

 私が高校時代の話だ。


 一部の友人は私に霊感があることを知っている。

 霊感があると言っても、残念ながら波長が合わないと視えないような「有るけど無い」という微妙なもの。


 あれも夏だった。

 暑い放課後で大きな日陰を陣取り、やることも無く、ただスマホをいじっていた。

 突然隣のクラスの友人Aが友人Bと一緒に教室に駆け込んできた。

「ねぇ!ちょっとみて!」

 みて!と言われてもAはいつもと変わりないし、Bも付き添いという感じ。

 A曰く、夏だから怖い話を調べて見ていたらある話で体が重くなったらしい。

……あ、そっちか。

 話の詳細は聞かなかった。

「最初しか見てない」と言うので聞いても無駄だと思ったし、まず興味がなかった。

 まぁどうせ、勘違いかその辺のを引っ張っただけだろう。

 手を出してもらい、軽く触れた。


「お前らなに見たんだ……」


 吐き気がした。下腹部も痛い。

 月夜が頭に浮かび、頭痛までし始めた。

 私はその怖い話について質問した。

 主人公のこと、舞台設定、体に痛みがあるかなど、頭に浮かんだものをただ聞いただけ。

 しかし、AもBも見たものと合っていると答えた。

 直感的に「これはヤバイわ」と、頭を悩ませる。

 この様子を不思議に思ったのか友人CとDも来た。

 Aが事情を説明すると、CとDはその話を調べてみようと言い出した。

 もちろん止めた。しかし、CとDは好奇心旺盛な性格な為、それを見ようとどこかへ走り去ってしまった。


 兎に角このままにしておくのは危険だ。

 しかし、学校の周りにはお寺も神社もない。坂を降りた先に海があるだけ。

「とりあえず海に行こう」

 気休め半分、お祓い半分の提案で三人は海に行くことにした。

 中央階段を下りると校内の自動販売機のコーナーに出るのだが、途中で足が止まった。

 先程感じた嫌な雰囲気と体調の悪さ。


 案の定CとDだった。


 スマホをテーブルに置いて二人で頭をくっつけて覗き込んでいる。

「どこまで読んだ」

 重い足取りで二人の前に行くとニコッと笑って「まだ読み始またばかりだよ」と。

(良くないんだが)スマホを盗み見ると確かに序盤だった。私が言い当てたものと同じ。

 注意しようとしたが、二人なら大丈夫という謎の安心感があったので止めた。

 ……が、注意はしておくべきだった。

 Aが突然泣き出してしまった。

 皆オロオロし始め、どうしていいか分からなくなる。

 慌てたDが「どうすんの!?どうすんの!?」と騒ぎだした。

 ……なぜ私を見る。

 四人でAを外に連れ出し落ち着かせる。

 玄関を出てすぐ、潮の匂いがした。

 海の上とはいえ、学校に潮の香りがすることはほぼ無い。不思議には思ったが気にしなかった。

 AはCとDの腕の中で少しずつ落ち着いていった。

 泣き止んだところでCが泣いた理由を聞いたが、

「自分でもよくわかんない。

 なんか悲しくなった」

 ……まぁ、そうだろうな。

 休日に神社かお寺に行くことを勧め、しばらく怪談を見ないことを強く言った。

 あの後Aは普通に戻った。

 その後も何もなかった。


 たまに怪談にハマってそういう事になる場合がある。

 夏だからといって怪談を見すぎることは避けたいものだ。

 この出来事の後に(あまり仲の良くない)クラスメイトが「こっくりさん」をしたので頭を抱えた。

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心霊語り 家宇治 克 @mamiya-Katsumi

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