白い腕

 次は妹の話だ。

 どうやら家は霊感家族らしい(笑)

 笑い事ではないか。


 これも夏だ。

 暑い夜でタオルケットさえも掛けてられなかった。

 だから腹だけは冷やさないようにタオルケットを掛けて手足は投げ出して寝ていたらしい。

 そうしたら金縛りにあったんだとか。

 もちろん体は縛られたように動かず、喉が詰まったような感覚がして声も出ない。

 そして不思議なのが、

 妹曰く『目を瞑っているけれど周りが見えた』。それも鮮明に。

 私としては一種の幽体離脱かと思うのだが専門家ではないからわからない。

 とにかく、目をグルグルと動かして自分の状態を確認したらしい。

「見てびっくりしたけど声出なくてさ」

 と言っていた。当たり前だろう。

 金縛りにあっていたんだから。

 そのびっくりした光景というのが、白い腕が自分の体を押さえつけているらしい。

 ぼんやりとした白い腕、温かくも冷たくもなく、

 掴んでいる感覚だけがあった。

 右腕に2本、左腕に1本、右足に1本。

 …………左足は?

「何もなかった」

 …………だそうで。

 怖い思いが膨らむ中、心で「やめて!」と叫んだ。

 腕は離れるどころか余計に増えたそうだ。

 全体的に増えたが、右腕を押さえていた腕が6本に増えて執拗しつように押さえつけるらしい。

 直感で「これはヤバイ!」と思い、どうにかしなくてはと考えを巡らす。

 祖母が毎朝唱えるお経を思い出し、覚えているところだけを繰り返し心で唱え続ける。

 三回唱えると腕の力は緩み、何度目かでようやく腕が離れ金縛りも解けたという。


 あの腕はなんだったのか。

 そしてなぜ右腕ばかりを執拗に押さえつけたのか。

 それは今でも分かっていない──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る