3. 花売りの憂鬱

フールリダーに着いた二人は、町の入り口近いレストランで食事をしていた。ウィンの目の前には大量の皿が積み上げられている。


「ウィンクルムさん、ご相談があるんです―――」

「ウィンでいいよ。何?」


ガツガツと食事をしていたウィンはその手を止めた。


「クウちゃんのことなんですが・・・・・」

「ここでか?」


キョロキョロとウィンは辺りを見回す。多くはないが人はいた。それを察して、フロアは場所を移そうと提案し、ウィンもそれに賛成した。2人はフロアの小さな花屋に来た。


「今日は定休日だから人は来ないと思います。あ、お茶をお持ちしますね。」

「おう。悪いな。」


フロアが店の奥へ姿を消すと、ウィンは店内を眺めた。花屋なだけあってたくさんの花があった。花のことは詳しくないウィンではあったが、きれいだと純粋に思った。


「お待たせしました。」


お茶を持ってきたフロアに礼を述べ、それを口にした。おいしかった。


「その、相談っていうのはクウちゃんのことなんですが―――」


店の奥で花と戯れる小さなドラゴンをちらりとフロアは見た。


「私の父は植物学者なんですが、2年ほど前に失踪したんです。」

「失踪?なんでまた?」

「わかりません。・・・父の姿が見えないと思って探していたら、書斎でクウちゃんを見つけたんです。それから、誰にもばれないようにずっと育ててきたんです。父が何か思うところがあっておいていったんだと思うから・・・・・。でも今後どう育てていくか不安なんです。こんなこと誰にも話せないし――――」


真剣に悩むフロアの力になってあげたいとウィンは思ったが、だからといってすぐに解決策は出なかった。


「協力してはやりたいけど、俺が初めて会った時すでにシグルスは成龍だったしな。そもそも完全に大人になるまでに百年近くかかるみたいだぞ。まあ、シグルスに聞くのが一番だな。俺からもシグルスに聞いておくよ。あと2、3日はあそこに隠れてるからな。岩の前で呼んでくれれば出ていく。相談ってのはそれだけ?」

「はい。ウィンさん、この後は?」

「必要なものを買って、シグルスのところに行く。次の目的地に行くまでの準備と休養かな。」

「分かりました。・・・じゃあ、お気をつけて。」

「おう。」


フロアと別れ、ウィンはフールリダーの市場で食料を買い、再び森ののかのほら穴へと向かったのであった。




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