2. 少女とドラゴン
小さなドラゴンはシグルスとは打って変わってかわいらしかったが、その表皮や小さな翼はまちがいなくそれがドラゴンであるということを示していた。
「おい―――」
「!!」
たまらずウィンは少女に声をかけた。とっさにドラゴンを背に隠したが、その顔は真っ青になってる。
「だ、誰です!?」
「落ち着けって。軍に突き出したりはしない。話があるんだ。」
少女は明らかに動揺した。無理もなかった。7条が指し示す罰は死であったからだ。
「話?な、なんですか!」
気丈に、必死で優位に立とうとする少女を見て、ウィンはなんだか申し訳ない気持ちになった。もちろん彼に、少女を告発する気はない。彼も罪を犯しているのだから。
「ここらへんに身を隠せるところはあるか?」
「え?もしかして・・・あなた、反乱軍の人?」
少女の瞳が輝いた。反乱軍とはドラコ・ベルムに反対派の者たちが集った軍である。
「いや、まだだ。彼らを探している旅の最中だ。コイツと。」
「こいつ?」
静かに、しかし力強い足音を立ててシグルスは姿を現した。少女はその姿を見て石のように固まっている。
「な・・・え・・は・・・・?」
『驚かせたな。話を聞いていて顔を出してもよいと踏んだんだが、あっていたか?』
驚く少女をよそに「ああ。正解だよ。」と、ウィンは答えた。
「こいつはシグルス。俺はウィンクルム。わけあって一緒にいる。そっちは?」
ゆっくりと深呼吸をして、決意を浮かべた瞳で少女は答えた。
「私はフロアです。すぐそばのフールリダーという町で花を売っています。こっちは―――」
フロアが背に隠したドラゴンを抱きかかえ、話をつづけた。
「ドラゴンの・・・クウちゃんです。」
『クゥ』
「フロアにクウか。まあよろしく。」
『フロア、』
シグルスの呼びかけにフロアはビクッとした。大きなドラゴンが怖いらしい。
『襲わないから安心してほしい。ウィンが町へ行く間、私は身を隠さなければならないんだが、大きくてな。どこか良い場所はあるか?』
シグルスに問いにフロアは答えた。
「向こうにたしかほら穴があったはずです。昔は子供たちが遊んだりしていたけど、途中の道でがけ崩れが起きて以来、岩が邪魔してそこに行けなくなったんですけど、し、シグルスさんなら飛びこえていけると思うので大丈夫だと思います。」
そこなら隠れるのにはうってつけかもしれないとウィン、シグルスは思い、フロアに案内をしてもらった。花々が散らばっていたところから離れ、すこし荒れた道なき道を進んでいくとそこでは大小の岩がころがっていた。
「ここを超えるとすぐにあるはずです。」
「ああ。ありがとう、フロア。ついでに街まで俺を案内してもらっていいか?」
「あ、はい。いいですよ。」
『私はどうすればいい?』シグルスが尋ねるとウィンは先にほら穴で身を隠しているように言った。
「俺は飛べないから、呼んだら迎えに来てくれ。お前なら聞こえるだろ?」
『わかった。気をつけてな。』
「おう。じゃあ、またあとでな。」
こうしてウィンはフロアの案内でフールリダーへと向かった。
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