孤独な老人は誰かと同居している

@shannan

第1話


もう思い出したくもない実話です。

私が受けた恐ろしさを世間の皆さんに知ってもらいたいです。

自分は霊感を自覚していましたが、あれだけ期間で幽霊を沢山見たの

は、後にも先にもあの時だけです。しかも次々憑りつかれてしまって

いたかも知れません。


数年前、少し稼ぎたいと思い、介護ヘルパーの資格を取り、訪問介護

していました。

ある一人暮らしのお爺さんの家は明治か大正の頃の、古い家でした。

お爺さんは両親に早く死なれ、若いころ苦労し、奥さんに早く死なれ、

腰が悪くベットで寝たきりになっていましたが、若いころから女性に

モテたようで、どこでも(ディサービス・病院・近所)女性に人気の

口達者な楽しい老人でした。

天井が低い、小さな暗い家の中で、お爺さんは趣味で、新聞雑誌のタ

レントさん女優さんのヌードや水着写真を壁一面に貼ってあり、まる

で独身男性のような部屋でした。


ある日、二階へ洗濯物を干しに上がると、階段登り切った右の部屋の

障子から着物の細い女の人の手が「おいで、おいで」と手を上下して

ました。恐る恐る部屋を見ると、誰もいませんでした。お爺さんに

「以前はここに誰が住んでいたの?」と聞くと、

「男の学校の先生。」

「イヤイヤ、その前は?」

「ここはお茶や(女郎屋)だった。」と言うのです。

あの手は女郎さんが男性客を手招きしていたのです。


それから不気味な二階に上がるのは躊躇しましたが、仕事なので、割

り切って上がり洗濯物を干していました。いつも洗濯物を干す部屋の

反対側の部屋も不気味に思えましたが、普段使われていないので、特

別覗きもしませんでしたが、何か怖いものを感じていました。


しかし、幸いお爺さんは身内に引き取られる事になり、この家の掃除

も最後だな。と思ってトイレ掃除していたのですが、トイレはドアが

3つあり、左は女子トイレ、真ん中は男子トイレ、右は物置でした。

普段汚物を捨てる女子トイレしか掃除せず、真ん中も右も開けません

でした。他のヘルパーも同じでした。

昼間、風もないのに、突然私の目の前で、真ん中のドアだけがギィー

と開いたのです。しかも全開。あっという間に開いたのです。風であ

れば、少しギィーくらいで開くと思いますが、誰かの力が加わったよ

うな、まるで、私に見てくれと言っているようでした。特に幽霊は見

えませんでした。女郎さんが最後のお別れを言ってきたかも知れませ

ん。


他に、寝たきりから、昏睡状態に陥ったお婆さんがいました。お婆さ

んが昏睡状態なのに、親戚も身内も近所も誰も来ない、60代の女性だ

けが面倒見ている寂しいお婆さんでした。オムツだけ換え、帰ろうと

したら、お婆さんの霊が茶の間の座椅子に座り、温風ストーブの前に

出てきたのです。

「あれ、ストーブおかしいわね。」

「そうだよ!お婆さんの霊が前に座ってるもの!」と言いたかったで

すが、知らん顔して、冬の寒い夜だったので、コートを着てサッサと

身支度し、挨拶し車で家に帰りましたが、まさか、あのお婆さんが私

に憑りついてきたのです。

寝ている時、呼吸が出来ない、息が苦しい。

「お願いだから、天国に行って~」と心の中で何度も何度も叫んでい

ました。起きるに起きれず、お祓いできる訳でなく、隣に主人が寝て

いましたが、助けを求める事も出来ず、一晩中もがき苦しみました。

意識はあるのですが、身体が動かない、起きれない状態でした。

死ぬのは簡単でなく、苦しみが伴うものなのだと知らされました。た

ぶん迷っていたのだと思います。私を親戚か、近所と思って憑りつい

てきたようです。


殆どの年寄りは死んだ霊と仲良く暮らしています。死んだ霊と波長が

合うので、その家に住めるようです。最初のお爺さんはその後1年で亡

くなりました。女郎さん達との楽しい暮らしが良かったのかも知れま

せん。


それから、行く家の先々で、キツネの霊や死んだ女性の幽霊を見てし

まい、精神的肉体的に限界が来て、仕事は辞めました。

私のように霊感のある者は人の生死に関わる仕事だけは避けた方が良

い実例です。皆さんも気を付けて下さい。



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