コーヒー

コーヒーの一杯は


煙草の一本と大体同じ(私調べ)



喫煙可の喫茶店が最近減ってきた

とても悲しいがここは田舎だ

まだ滅びてはいない


いつもどおりコーヒーを頼み煙草を吸う

飲む前の一服

「..........」

特に何も話すわけでもなく一人コーヒーを待つ

「.......ふう」

コーヒーが来るまでに煙草が一本吸い終わった

ここは時間をかけてコーヒーを淹れる店だったな

と、今になって思い出す


しばらく待っていると


「相席失礼するよ」


と言う声

誰だ?と見てみると

中学時代の友人、言ってしまえば親友だった

「珍しいな、お前が喫茶店寄るなんて」

「大和が見えたからね」

「なるほど、今日も車か」

「そうだよ、ドライブでも行く?」

「考えとく」

そう、同い年なのにこいつは免許を持っていて車を持っているのだ

羨ましいったらありゃしない

「ん?また煙草変えたの?」

「ああ、これか」

「変えたわけじゃない、戻したんだ」

「合わなかったの?」

「いや、うまいんだが消費が早い」

「軽すぎてな」

「なるほどね」

我々は一応高校三年生だ、学校は違えど財布事情はあまり変わらない

こいつは車を買うためにずっとバイトをして常に金が無いと言ってきた

私はただの浪費家、バイト代は一週間で8割方消えていく

酷い時は給料日まで煙草の一箱変えないなんてときもある

「煙草いいかい?」

「どうぞ、どうせ俺も喫煙者なんだ、遠慮することもないだろ」

「それもそうだね」

煙草を咥えライターを取り出そうとする

「ふぁいふぁーふふふぁふぃわふれふぁ」

「は?」

煙草を手に持ち言う

「ライター車に忘れた」

「ああ、そう言ってたのか」

「ほら」

ライターを煙草の近くに持っていき火を点けてやる

「.......ふう......さんきゅ」

「いいえ、というかお前も煙草変えたのか」

「これ、新発売だとさ」

「小さくないか?」

「19本?だったかな、390円」

「違うの吸ってみようかなって、いつものもあるよ」

と、こいつはいつもの煙草をチラつかせた

「なるほど、お味は?」

「1ミリにしては吸い応えあるよ、1ミリにしては」

「つまり軽いと」

「イエス、その通り」

「その1箱限りでもう買わないのか」

「そうだね、多分そうするよ」

高校生の会話じゃない

よく言われるし思う

けれどもどこの高校にも絶対に煙草を吸ってる奴がいる

それを知らない、という人は言ってしまえばちゃんと、真っ当な生き方をしている人だ

勿論私もそれなりに真っ当な生き方をしている

キチガイと呼ばれるようなこともDQNと呼ばれるようなことも、ましてはやんキーと呼ばれるようなこともしていない

ただ煙草を吸っているだけだ

表現の上手い人は不良、と呼ぶかもしれない

けれども不良のつもりもないし愚れているつもりもない

ただの高校生だ...


5分ほどしてコーヒーが来た

「やっとか」

「コーヒーか...すいません、オレンジジュースください」

「かしこまりました」

「オレンジジュース...喫茶店来てオレンジジュースかよ」

「いいじゃないか、好きなんだし、それにコーヒーより早く来るだろうしね」

「そうかい」

コーヒーはそのまま飲む

砂糖もミルクも要らない

そして煙草を吸う

コーヒーと一緒に吸うのがいいのだ

これは誰になんと言われようと変える気はない

個人の趣味なのだから

「おっ来た」

「確かに早かったな」

「でしょ?」

「この後何するんだ?」

「何も決まってないのに車で走ってたのか」

「ああ、ドライブは好きだからね」

「しかたないな、付き合ってやるよ」

「本当かい?」

「ああ、本当だよ」

「どこいく?」

「それは走りながら決めればいいだろ?ドライブだし」

「そうだね」

この後の予定ができたところでコーヒーをゆっくりと飲む

煙草を吸いながらゆっくりと


今日も、煙草と同時にコーヒーが終わる


「さて行くか」

「そうしよっか」


明日もコーヒーは煙草と一緒に


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