白い物

「さてと、今日は…」


いつものように一番に起き、ミナミがご飯の準備をしている間にキョウヤを起こし

そして、出来上がったご飯を食べて一息

椅子に座って今日は何をしようかと考えるユウキ

テーブルをはさんで向かい側にはキョウヤが眠そうに座っている

ちなみに、朝も声をかけただけでキョウヤは起きる事が出来たので

これからは、キョウヤを起こす労力も減るだろう…

わざわざ朝から魔法を使わなくても良くなったのだから…


「まず、昨日キョウヤが寝てて出来なかった依頼の報告と…

それから…」


キョウヤと今日の事を確認していると…


「「っ!!?」」


音もなく…いきなり2人の目の前に白い四角い物が現れた

勿論驚いたユウキは後ろに飛び退き、キョウヤは固まっていた

そのため、ユウキが座っていた椅子が大きな音を立てて倒れたのは言うまでもない

そして、その大きな音に洗い物をしていたミナミが気づかないわけがない


「2人ともどうしたの??」


当然、洗い物の手を止め、2人の方に近づいてくる


「み、ミナミ…ちょ、ちょっと待って…コレが何か分からなかったら

危険か安全かも分からないから!!?」


この白い物体が何か分からないので、危険物かそうでないかが分からない

安易にミナミが近づいてきて巻き込まないか…とユウキは心配で声をかけるが

ミナミは、気にする事なく近付き…


「あ、それ手紙だねぇ~

何処から送られてきたの?」

「「ぇ?手紙??」」


2人の反応がシンクロしたのは仕方ないだろう

誰が目の前に手紙がいきなり現れると思うだろうか?

いや、思わないだろう

ひとまずココにいる2人にとっては、予想外の出来事だ


「この世界に手紙ってあったんだな…

シェイルさんが、伝えに行く…って言ってたから…

まぁ、メモとかがドアに挟まってるくらいな物はイメージしてたけど…」

「あ、普通はドアに挟んだり下から滑り込ませたり…

人によっては、郵便受けみたいなのがあるから、そこに入れるんだけど

風魔法を持ってる人が、風魔法で届けるとこんな感じで

届けたい人の目の前に現れるの」

「…な…なるほど…

つ、つまり、この届き方は風魔法独特…か…」

「一通なら普通に届けるけど、一杯なら、風魔法使う事が多いよ~」

「…って事は、コレは大量に出された手紙って事か…?」


とりあえず、目の前の白い物体の正体も分かったので、ユウキは手に取って確認する


表面と思われる所の中央に『ユウキ・キハラ様』という宛名と

右下に『セルヴィア学校』と送り主が書かれていた


「学校からの通知か…」


そう言って、ユウキは封を開ける

それを見て、キョウヤも自分に来た手紙を開ける


「今の時期に届くって事は、入学式の案内じゃないかな?」

「なるほどな…学校の感じって向こうと同じだな」


ミナミの言葉に、思った事を口にするキョウヤ

しかし、ミナミは首をかしげる


「え?だいぶ違うよ?」

「でもさ、クラスに分かれて…」

「あぁ、クラスに分かれるのは1年生だけだよ」

「「ぇ!!?」」


ミナミの返答に2人仲良く驚いたのは仕方がないだろう

そう、入学の申し込みの時に、1年生のクラスが分かれているのを見て

全学年クラス分けされていると思っていたのだから…


「え…でも、そうなると…他の学年は…?」

「1年生は、基礎的な事が多いからクラスを分けて同じ授業を受ける事が多いけど

そこが終われば、次は戦闘関係だったり、生産関係だったりで

そもそも受けたい授業が違ってくるのよ」

「で、でも…言葉とか…計算とか…学年に合わせてレベルが上がったりとかは…?」


ユウキの質問に、ミナミは少し考え…そして一人納得した


「あのね、ココは色々な授業があるけど

自分に向いてる物と向いてない物があるから、それを自分で選ぶの

例えば、言葉とか計算…それは1年生で基礎をして

それ以降の言葉や計算の勉強は選択になるの」

「え?2年で受ける言葉の授業は…?」

「まず、その考えから改めないといけないんだよ

ココでは2年で受けないといけない言葉の授業…

ではなく、そのまま言葉の授業を受けたければ言葉の授業を受ければいい

1年生で基礎はしてるから、生活で困る事はないんだよ

2年生からは、例えば教師目指してる子は言葉と計算の授業を引き続き受けるだろうし

4年生で歴史をあらたに受けたりしても良いかもしれない…

冒険者になりたい人は、スキルや魔力、戦闘…魔獣関係

あと今は4年生から一般医療もあるんだっけ?その辺の授業を受ければ良いし

生産職に就く人は、まぁ、ものによるけど

計算とスキル・魔力…採集や素材に関する事と

実際に物を作る実習の授業とかをとっていく

って、簡単に言ったけど、本当に沢山あるからね?」

「…前、学校に通ってる子は…

1年生は計算と言葉・戦術・スキル・魔力で

4年生から歴史と一般医療が入って来るって…」


以前教えてもらってもの以上の情報が入って来て混乱するユウキ

まぁ、そもそも前の世界の学校をベースに考えていたから仕方ない

そして、ミーシャ達がユウキ達のベースを知らずにココの説明をしたのだ

色々と補足というものが抜けているのであろう

ミーシャ達はユウキ達のベースを知らないのだから

それはそれで仕方がないのだけど


「…その子、別に全部やらなきゃダメとは言ってないよね?

勿論、1年生のその5つは必須だから、絶対受けなきゃいけないけど

4年生からのは、受けれるようになるってだけで

絶対受けなきゃいけないわけじゃないんだよ」

「で、でも…他にも色々教科増えてるよね!?

歴史とか一般医療とかだけじゃなくて!」

「あぁ…でも、それは増えたというよりも

戦術の授業でやってた魔獣が更に詳しく学べるようになったり

戦術やスキルでも近距離・中距離・遠距離で得意な方を重点的にしたり

魔力の授業でも、生産系の人達が受ければ

生産時に付与を与えるやり方の授業になったり

色々形が変わるだけで、そもそもの基礎はその5つだから

特別増えるっていう意識でもないんじゃないかな?」

「そっか…大まかには同じカテゴリーなんだな…」

「…前の常識があるから、受け入れ辛いな…」


予想以上の情報量に、朝から少し頭痛を感じたユウキ

とりあえず、基礎が5個あり

そこから、必要な分だけ枝分かれのように増えている…

という風に認識する事にしたようだ

まぁ、キョウヤの言うように

前の常識という物がこちらの常識を受け入れるにあたり

邪魔をするというのも事実で

実際今すぐに全てを理解しても、違和感が拭えないのだ


「まぁでも、学校に行ってから知るよりは良かったでしょ?」

「まぁ…それはね…」

「初っ端から、注目される可能性大だったな…」


一番初めに知る事になったかは分からないが…

いずれにせよ、どこかのタイミングで知る事になり

驚く辺りで、かなり注目は浴びるだろう…

ある意味、今のこのタイミングで良かったのかもしれない

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