加わる人

「こ、この俺の剣を…」

「いや、アナタの剣大した事ありませんけど?

Hランク…でしたっけ?

僕は、これでもEランクですからねぇ?」

「っ!!?」

(あ、やっぱり…強いよね…

てか、あの人ら…僕と同じランクかよ…)


ユウキと同じ…と言うが、ユウキはまだギルドに入って一か月も経っていない

男達は、どれだけ長い事ギルドにいるかは分からないが

少なくとも、それなりに長い年数いるはずだ


「まだ暴れるってんなら、俺達が相手してやろうか?」

(あぁ、何か大騒ぎに発展してるんだけど…)


ユウキは、そこまで騒ぎ立てるつもりがなくても

あの男3人はそうではない

ココで目立って、ユウキを嘘つきな子どもとし

自分達は可哀想な被害者である…と周りに印象付けなければならないからだ

そんな中、更に人が加わり、頭を抱えたくなったのは仕方ないだろう


「あれ?…あの時の…」

「あ゛ぁ!!?外野は大人し…く…って…あ、アンタ達は…」


声をかけてきた男性に、振り向きざまに悪態をつく男だが

その男性と周りにいる人達を認識した瞬間、ゆっくり後ずさる

ユウキは見覚えのある人達に、少しホッした

この場を更なる混乱に招くような人物では無いからだ


(僕にとっては更なる味方で、あの人達にとっては更なる敵)

「グラスタさん…俺達は、別に暴れたいわけじゃねぇんだよ」

(あの人グラスタって言う名前だったんだ…

初めは色々鑑定の性能見がてら…あとは必要だから鑑定してたけど…

コレ、色々勝手に見るの、ある一種のプライバシーの侵害だしなぁ…

必要以上に人には使わないようにしないとな)


グラスタの名前を知った事で、ユウキの思考は違う方向へと流れていく

一方男達は、ニッコリ作ったような笑みを浮かべてグラスタに近寄る

きっと、自分の味方につけよう…と企んでいるのだろう


「俺達だって、穏便に済ませようと思ってるんだがな

どうにも、このチビ達が言いがかりをつけてくるからさぁ

つい、カッとなっちまったんだよ~

分かるだろ?」

「な~にが『分かるだろ』だよ…

お前らが何したか、俺達が知らないとでも思ってるのか?」


グラスタに一生懸命説明する男に、心底軽蔑するような視線を送る男性が口を開いた


「いやいや、アルフィードさん、あの情報誌の号外は誤りなんですって!

俺達、あんな酷い事なんかしてませんって!」


もう一人の男が、アルフィードを説得にかかる

2人に対して「さん」付けなのは、きっと自分達より強いと認識しているからだろう

敵わない相手には、取り入ろう…という作戦らしい


「本当に、アンタ達…救いようもない…っつーか…救いたくもねぇけど…

子ども2人と大人1人だから、大人3人の自分達が信憑性高いとか、オカシイだろ」

「まったく、ルヴィアの言う通りだよ

ま、そんな理論だからこそ、君達には逃げようのない追い詰め方があるんだけどね?」

「ちょっと~グレイヴ君?美味しいオチを先に言わないで下さいよ~」

「あ…すいませ~ん」


そんなに反省はしていないのだろう、軽く謝って少し後ろに下がるグレイヴ

ディアナも本当に怒っているわけではないので、サラッと流した


「いや、ホントに酷い事してないんですって!

この情報誌が間違ってるんですから!

おい、女さっさと謝罪と記事の改定をしろよ!

俺達は善良な冒険者だってな!!

クソガキ!こんな舐めた真似二度とするんじゃねぇーぞ!

分かったか!!」


記事さえ改定されれば、グラスタも分かってくれるだろう

そう思っている男は、分かりやすく態度を変えてディアナとユウキに言う

まぁ、そうした所で何の意味もないのだけれど


「…お前ら、ちゃーんと記事読んだかよ?」

「そりゃぁ、勿論読みましたよ」

「ほぉ~?じゃあ、俺の言葉にどっか違和感とか沸かねぇの?」

「え…いや、ルヴィアさんの言動に違和感は…」


ルヴィアの言っている意味が分からないのだろう

男達は顔を見合わせ首を傾げる


「はぁ…号外の記事には

『子ども2人と大人1人だから、大人3人の自分達が信憑性高い』

とアナタ達が言った…なんて書いてないんですよ?」

「ぇ…あぁ、でも、さっきココでも言ってたから

それを聞かれたんですよね?」

「俺達が入ってきたのは、お前がそこのギルド員に振りかぶった所からだ

んな会話聞いてねぇよ」


グラスタがそう言っても、男達は分からないのだろう

ただ首を傾げるだけだった

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