のんびり夕ご飯

「はぁ~…やっぱ風呂は良いよな~♪」


30分程で、ユウキが風呂からあがって来た


「ぇ?ユウキちゃん、早くない?!」

「ぇ…?そうか…?」


ミナミが驚いた事に、ユウキは驚いた

浄化の水で洗い流せば、基本的に綺麗になるので

向こうみたいに、泡を洗い流す時間は必要ない

なので時間短縮になった分、ゆっくり浸かっているのだ…ユウキ的には


「だって、シャンプーして、トリートメントして…それから…」

「いや、ココにシャンプーもトリートメントも無いからな

ついでに、化粧水とかも無いからな」

「………あぁぁ!!そうだった!どうしよう…」


ユウキに言われて思い出したのだろう、ミナミはかなりショックを受けていた

別に、今の所無い事に不自由を感じていないユウキは

そこまでショックを受ける理由がよく分からなかった


「何で?浄化の魔法で綺麗になるじゃん」

「うぅ…綺麗にはなるけど…保湿とか出来ないと、肌が…」

「肌が?」

「肌が荒れちゃうじゃん!!?」

「そーなのか?」


ミナミの危機感とは裏腹に、ユウキは大して興味なさ気である


「ユウキちゃんも、化粧水とか無いと困るでしょ!?」

「んにゃ、僕化粧水とか使ってなかったら、特に不自由はしてないよ」

「!!!?」


ガーン…とでもいう効果音が付きそうな程、ショックを受けるミナミ

信じられない…という表情でユウキを見つめる


「…いや、普通の女子がそうしてるのは知ってるよ?

知ってるけど、僕特に必要やなぁ…って感じ無かったからなぁ…」

「普通、肌荒れとか乾燥とかっ!!!!」


ミナミが必死に主張しても、ユウキにはイマイチ伝わっておらず

ため息をつくしか無かった


「はぁ…どうしよう…」

「ん~…この世界じゃどーなってんだ?」

「えーっとねぇ…この世界だと…

王都とかにいる貴族みたいなお金持ちの人は

ツホ草っていう草に切れ目を入れて、それを肌に貼るの…」

「…草パック的な?」

「ま…まぁ、そんな感じかな…」

「でも、草なら、その辺に生えてるんじゃねぇの?」


ミナミが王都の貴族と限定した所に違和感だったユウキ

草なのだから、その辺に生えてるはずなのだ

貴族じゃなくても、普通の人でも買えない事は無いだろう


「そりゃ、草は生えてるよ…

でも、切れ目を入れた時に、保湿の成分が出るようにするには

薬術で加工しないといけないんだけど…それが中々出来る人がいなくて

高価な物になってるんだよね…」

「ふ~ん…まぁ、一回ツホ草探してみるよ」

「うん…はぁ…食べるだけで効果があれば良いのになぁ…」

「ハハ…(見つけて鑑定してみるか…もし上手くいけば、簡単に加工できるかもだし)

あ、ご飯出来てるなら、キョウヤ起こしてくるけど…」


美容の話についていけないユウキは、テーブルに並んでいる刺身を見て

サラッと話題変換をする


「あ…お刺身は準備出来たんだけど…お米がまだ…」


そういう視線の先にはお鍋が…


「先にお刺身頑張ってて…ご飯の事忘れてたんだよね~」

「そっか~」


ほのぼのと2人で会話をしていると、ご飯も炊きあがり…


「よし、キョウヤ起こしてくるわ」

「はーい」


ユウキは難関のキョウヤを起こすという一仕事

と言っても…


「風魔法!」

「うぉっ!!?」


もう起こし方は決まっているので、そこまで難しいわけでも無くなった


「…ふぁ…もう夕飯の時間か?」

「そーだよ…かなり寝てたのに、まだ眠そうだな」

「ふぁ~…ん~…ご飯食べて、風呂入ったら、また寝るわ」

「マジで寝過ぎじゃね?」

「しゃーねぇだろ…でも、一杯寝てるからか、魂の回復は予想より早くなってるみたいだな」

「ふ~ん…そんなの分かるんだ?」

「まぁ、俺の体の事だしな!」


キョウヤが顔を洗っている間に、ミナミはご飯をよそい

ユウキは一足先に席につく


「すげー!刺身か!?」

「そー、刺身だよ」

「キョウヤ君もお刺身好きなの?」

「まぁ、嫌いじゃねぇ!どっちかっていうと、この世界で魚を初めて食べるから

そういう方向の驚きだな!」

「なるほどな…」


3人揃って「いただきます」と挨拶してから食べ始める

タタイが大きかったので、タタイの刺身が多めだが

ユウキが黙々と食べ続ける


(ホントにユウキちゃん、お刺身好きなんだね)


その様子を見て、ミナミは一人微笑ましく見守っていた

この日も平和に1日がゆっくりと終わっていくのだった

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