「それじゃあ、僕の浄化魔法を魔石に入れれば良いんだね!」

「あ!そうだね!わざわざ買わなくても良いよね」


と、いうわけで、ユウキは早速魔石を取り出して、浄化の魔法を流し込む

そして、出来上がった浄化の魔石をミナミに手渡した


「ありがと…さてと、とりあえず、タタイとモサンを使って刺身にするね!」

「そうだな!…あ…そういえば、これがいるんじゃね?」


ユウキはそう言って、メイキング画面を出す

ミナミは何か必要だっただろうか…と首を傾げている

そんなミナミを気にする事なく、ユウキは画面に触れる

すると画面は光に包まれ、ユウキの手には小さい物が握られていた


「ぁ…うろこ取り!」

「これがなきゃ、鱗が固くて美味しく食べれないだろ~♪」

「確かに!そうだよ、向こうじゃ普通に使ってたのに、すっかり忘れてたよ~」

「…ぇ?ココだと、どうなってんだ?

(アレンが普通に野営で食べたって言ってたから、普通に調理も一緒だと思っていたが…)」


魚を食べるにあたって、鱗を取らない事には始まらないはずだ…

そう、ユウキの頭の中では向こうの常識しかない

そして、魚は向こうと名前は違えど同じ姿をしていた

鱗があるのは触れば分かったし、固いのも分かっている


(まさか…鱗ごと食べるのか…?)


自分の至った答えに、かなりマズそうな顔をするユウキ


「た、多分ユウキちゃんが考えてる事は違うと思うよ!」


ユウキの表情を見て、ミナミは慌てて否定した


「えっとね、この世界では、魚の皮は取っちゃうの

だから、こういう道具は無いんだよ」

「へぇ~…そうなんだ」


ミナミの説明で納得したユウキ


(個人的には、鮭の塩焼きとか…皮があった方が美味いんだけどなぁ…)


ユウキがそんな事を考えているうちにミナミは一番大きなタタイ1匹と

モサンの中でも大き目の2匹を持ってシンクへ向かう

ユウキは、残った魚を保管庫へと入れて…


「僕、ご飯が出来る前にお風呂に入ってくるよ」

「分かった!じゃあ、私はキョウヤ君を起こして…」

「あ、それは僕がやるから良いよ」

「ぇ?何で?私だった起こすくらい…」

「アイツの寝起きの悪さは普通じゃないからな

僕が魔法で起こしてるのさ…

ベッドの中に引きずり込まれたら困るだろ?」

「そ…そだね…」

「んじゃ、キョウヤを起こすのは僕に任せておいてよ」

「うん」


そう言って、ユウキはお風呂場に消えて行った


(それって…ユウキちゃんはベッドの中に引きずり込まれたって事だよね…

その時点でもユウキちゃんの性別に気付かないキョウヤ君って…

実は鈍感…?それとも、ユウキちゃんが男装上手過ぎるだけ…?)


そんな事を考えながら、ミナミは調理を進める

ユウキから貰った鱗取りで鱗を取り

皮を取って、3枚におろす


(…そうだ…この世界じゃ頭を切って、身から皮を取ろうとするから…

かなり身が小さくなるんだよね…)


手間がかかるだけで、食べる所が少ない…

というのも、この世界で魚が普及していない一因だが

この街では、釣り場が遠いのもそれに拍車をかけている


(まぁ、こういう道具が出てきても、すぐには変わらないかなぁ)


そもそもあまり食べられていないのだから、仕方ない

普通の店に出て来る魚料理と言えば

丸焼き(鱗付き)を骨に沿って半分に切り

内側から身を食べていくというスタイルだ

それが一番手間なく、身も多く食べられるやり方で

それ以外の魚料理は、ほとんど無い


(…ある意味、チャンス…かな?)


ミナミの頭の中で、魚料理がメニューの中に加えられたのだった

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