帰り道

「んじゃ、帰るか」

「うん…てか、あの敵がいる中を、もう一度戻るのか…

(アレンがいるから、転移魔法使えないしなぁ…かなりレアな魔法だって知ったし…

出口を自宅にするわけにもいかんし…アレンを自宅に入れたら

かなりビックリするやろし…うん…)」

「いくらお前でも、帰りに魔獣と戦うのは気が進まないのか

まぁ、安心しろ、俺のスキルで問題は解決だ」

「…??」


アレンの言っている意味がよく分からず、ユウキは首を傾げたが

アレンは説明するつもりは無いらしく、釣り竿を片付けて帰る支度を始める


(まぁ、すぐに分かるかな)


気になったが、すぐに分かる事だと思い

アレンと同じように釣り竿を片付け始めた


「忘れ物はないか?」

「無いよ、そもそも、荷物そんなに出して無いし」

「…まぁ、そうだな」


振り返って釣りをしていた所を見るが

岩があるだけで、他は何も無い

使っていたのも、釣り竿だけなのだから

それを片付けたら終わりなのだ…忘れようがない


「それじゃあ、帰るぞ」

「はーい」


アレンが先を歩き、ユウキはそれについて行く

別に帰る道が分からなくなったわけでは無い

ただ、魔獣と戦わなくて済む方法を知っているのがアレンだったので

自然に後ろについて歩く形になったのだ


「ねぇ、僕が通った道…通ってない?」

「あぁ、同じ道を通ってるぞ」

「…まだ魔獣沸いてないの?」

「いや?十分時間はあったから、再発生してるな」

「…僕が歩いた所って、狙われたんだけど…?

(魔獣と戦わずに済むルートを知ってるんじゃなくて

…スキルか何かを持ってるのかな…?

アレンが使ってる武器的には、狩人とかかな…?

だったら、相手に気付かれないスキルがあっても不思議じゃないけど…)」

「俺のスキルがあれば、大丈夫大丈夫…

っつっても、自分よりも魔獣のレベルが高かったら効果は薄れるし

勿論、煩くし過ぎたら気付かれるからな」

「そーだよな…(隠す系のスキル使ってても、騒がしくすりゃ気付かれるわな)」


行く時にあれだけあった魔獣の攻撃だが

アレンのスキルのお蔭だろうか…全く攻撃されない

魔獣がいないのではないか…と思い、上を見ると

普通に先程戦った蜘蛛が巣で蠢いている


(…気付かれないようにするスキルか…今度試してみよう)


新たなスキル取得を考えながら、道を歩いて行くと

魔獣に会う事無く、無事門まで帰り着いた


「スゴイな、そのスキル」

「まぁ、狩人だし、これぐらい出来ないと困るからな

それじゃ、俺の家はこっちだから…じゃあな」

「うん、またね」


門で手を振って別れて気が付いた


(…『またね』って…連絡先知らんやん!!!)


自分の言った言葉に、思わずツッコミを入れる

向こうの世界とは違い、スマホなんて無い

そもそも連絡先を聞いていないのだから、あった所で意味は無いが…

それでも、家の場所くらい聞いておけば、また釣りに誘うくらいは出来たのだが…


(ま、しゃーないか)


以外とアッサリ諦めて、ユウキは自宅へ向かう


「たっだいまー!」

「お帰り!ユウキちゃん♪」

「一杯魚釣れたよ…ってか、ミナミ、魔獣も釣れるって

何で教えてくれなかったんだよ」

「あはは…普通知ってるかと思って~」

「僕、自慢じゃないけど、ココの普通全然知らないからね!!?」

「(確かに自慢じゃないけどさ…)ゴメンね、忘れてた」

「はぁ…まぁ、何とかなったけどさぁ…」

「さっすが!ユウキちゃんだもんね!」

「その基準何!!?」


ユウキに関わった人が持つ、謎基準

それが、既にミナミの中にも出来上がっていたのだった

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