魔力の摂取

「その不安当たってるかも…」

「…やっぱり?」


触手の攻撃を避けて、視線を再び本体へと戻すと

何やら頭上に大きな水の塊がフワフワと浮かんでいる


「ヤバイ、範囲攻撃だ!」

「範囲って…何処までだよ!!?」

「この辺一帯だ!!!っ!!?」


次の瞬間、水の塊から数十本の水柱が伸びる

それが当たった岩は砕かれ

地面には大穴が開いている


「…なんつー破壊力…

あれ当たったら、どんだけダメージ受けるんだろ…」

「さぁな…当たらないのが一番だが…とりあえず、助かった…」


先程、アレンに向かっていた水柱

それに先に気付いたユウキが腕を引っ張り引き寄せたため

ダメージを受ける事は無かった


「攻撃力はスゴイけど…命中率は良くないね

狙い定めてんのかな…?」

「いや、あれが全部狙い定めてたら、コエーだろ…」

「…確かに…(後3回攻撃すればいけるかな…)」


まだ、銃の扱いに慣れていないユウキは、スキルになりそうな攻撃が思いつかず

とりあえず、連射するしかなかった


(3回分…さっさとくらわせよう)


大技を使ったため、準備が必要なのだろう

キングクーラに動きは無い

パンパンパンッと3発撃ち込む

今度は前の触手が無かったため、防御される事無く口に命中する


「…おま…オカシイだろ…」

「やっぱり、口が弱点だったんだな!」


浮かび上がった400という数字に、アレンはジト目でユウキを見る

しかも、その400が3回出てくるのだから、その反応も仕方ないだろう

一方、ユウキはアレンの言葉など聞いてはおらず

自分の予想が正しかった事が証明されて満足していた


「あれ…?何で倒れないんだ…?」

「まだHP残ってんだろ…」

「ぇ…(ちょっと待って…十分ダメージくらわせたはず!)」


先程の攻撃で2200…そうキングクーラのHP2000は越えているのだ

しかし、鑑定を持っていないアレンは、キングクーラのHPは分からないので

倒れていない=まだHPが残っている…と解釈している


(オカシイ…何で…?鑑定して確認するか…)


◇キングクーラ◇


HP:600/2500

MP:800

攻撃力:700

防御力:500


ドロップアイテム:Kクーラ討伐証書


注意:状態異常を引き起こす


◇ 終 ◇


(アレンの言う通り…まだHP残ってる…

でも、何で…?計算が合わないんだけど…)

「ぼさっとしてないで、今のうちにたたみかけるぞ!」


そう言い、アレンは矢を放つ

そして、50のダメージを与える


「ねぇ、魔獣って回復とか自動ですんの?」

「はぁ?自動でするわけないだろ…

魔力取り込めば別だが、空気中の魔力程度じゃ回復出来ないぞ

アイツは回復魔法なんて持ってねぇし…」

「そっか…そうだよね…

………ん?魔力取り込んだら回復出来るのか?」

「当たり前だろ、魔獣なんだから

魔力取り込んだら、回復するし栄養にもなる」


その言葉で、ユウキの頭の中で、食事するキングクーラが浮かぶ


「…ちなみに、それって餌にしてた魔力でも…?」

「餌程度のもんなら、ちょっとしか回復しねぇって…

でも、あのキングクーラ、かなり長時間食ってたな

餌の大きさ的には俺と同じだったが……………」


食事をしていたキングクーラがアレンの脳裏にも浮かぶ


(…あのサイズの餌食べるのに…キングクーラがあんなに時間かけるか?

つーか、普通の餌なら一瞬で終わるレベル…

ちょっと待てよ…あの餌を作ったのは、普通じゃないコイツだ

あのキングクーラが夢中になって食べ続ける餌…普通と違う…という事は…)


一つの可能性が出たアレンは、ユウキに視線を向ける


「…お前、魔力の純度って…」

「滅茶苦茶純度高いって言われたな…」

「ハハハ…そうか…成程…

何でキングクーラがこんな所で釣れたのか…

お前の餌に引き寄せられたんだな…純度高い魔力とか最高の御馳走だろ」

(そして、僕の魔力を摂取した事によって、回復してたんだ…

だから、攻撃されても食べ続けてた…回復するために)


まだキングクーラにHPが残っている謎は解けた

この謎を解いている間に、相手は次の攻撃の準備を進めている

再び頭上に水の塊ができはじめている


「またあの範囲攻撃か!?

あの攻撃の前に何とかしないと!」


水の塊が大きくなれば、先程の水柱が無差別にくるだろう

当たらなければいいが、当たればかなりのダメージを受ける事が予想される

アレンは急いで弓を構えて矢を放つ

30というダメージが浮かび上がる


「っ…焦って狙いがそれた…」

「落ち着けって…っ!?危ない!!」


水の塊に気を取られていたアレンは、触手の動きが見えていなかった

ユウキの声で気付いた時には、もう目の前まで迫っていた


「っ!?(間に合わねぇっ!)」


攻撃の軌道から逃れようにも、間合いが十分にないため

痛みを覚悟し、目を閉じる


ドンッ


(っ…あれ?思ったより柔らかい…?)


ドサッ


「うぐっ」

「いてて…」


背中に衝撃を感じて、急いで目を開けてみると

ユウキがアレンに覆いかぶさるように、倒れていた…


「っ!?おい、怪我してないか!?」

「あぁ、大丈夫、攻撃は何とか受けなかったみたいだ」

(はぁ…後輩に守られたのか…情けない…)


一瞬沈んだアレンだが、ユウキが普通じゃない事を思い出して気を取りなおす


「怪我する前に、さっさと倒すぞ」

「お…おぉ…(そういや、キングクーラ相手に、今無傷なんだよな…)」


パンパンッとユウキが攻撃すれば

400という数字が2回出て、キングクーラは姿を消した


「よっしゃ!キングクーラ討伐完了!」

「誰も討伐依頼出して無いけどな…

(俺は2回ダメージの瞬間があったが…助けられたから、無傷でいられたんだよな)」


いつものメンツで、キングクーラに会ったら、絶対無傷では済まない

というか、倒せるイメージすらつかない


「よし!釣りの続き♪」

「お前…やっぱ普通じゃないよな…」


Kクーラ討伐証書を獲得して、再び釣りをしようとするユウキ


「あ、お前、もうちょっと魔力の濃度薄めろよ!

また面倒な物釣り上げるぞ」

「うぇ?!マジか…どうすりゃ魔力薄まるんだ…?」

「はぁ…そこからか…

どれくらいの大きさにするか決めて、そこに魔力一滴垂らすような感じだ」

「…あぁ…水の中に一滴何か混ぜるみたいなイメージ?」

「そんな感じだな」

「よし、コレで薄まってるかな…?」

「そうだな…コレで普通サイズの魚が釣れたら薄まってるんだろうな」

「…タタイは普通サイズだったけど?あのサイズで…」


先程釣った、1m程の魚を思い出す

あれのサイズが普通だと言ったのは他ならない、アレンだ


「タタイならあのサイズが普通だけど

普通に売られてる魚は、これぐらいからこれぐらいが普通だ」


そう言って両手で大きさを表現するアレン

小さくて20cm大きくて50cmくらいだろうか

まぁ、売られている…という事だから、普通に釣りをすれば

もっと小さいものもいるだろう


「そうなんだ、とりあえず、そのサイズ目指すか…(普通サイズの魚いたんだな)」


薄めたと思われる魔力を釣り針の先に付けて、ユウキは釣りを再開した

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