クーラ

「ぇ…?」

「お、ラッキー…弱いクーラだったんだな」

「…え?一撃で終わりなの?」


自分の出番が無く終わったユウキは、唖然とアレンを見る

その視線には『僕の出番は?』というメッセージがかなり込められている


「いや、まさか弱いクーラだとは思わなかったからな、仕方ないだろ」

「クーラに弱いも強いもあるの?同じ魔獣なのに…」

「お前…いや、子どもだし、こないだ冒険者になったばかりだから

しゃーねぇか…うん」


ユウキの疑問に一瞬言いかけた言葉を何とか押し込め

仕方ないと、自分を納得させるアレン


「いいか?魔獣が同じレベルなのは、初心者向けの所だけだ

スライム・ブラウンボアなど…ちょうどこの川を越えて向こう側は

中級者向けだ…

向こうは、同じ名前の魔獣でも、それぞれレベルが違う

レベルによって強さが違うのは当たり前になってくるぞ」

「そうなんだ…(じゃあ、さっきのクーラは中級者向けなのに、超弱いって事か)」

「そーなんだよ…いくら期待の新人やら、何やら情報誌で騒がれてても

やっぱ、知識は初心者だよな…やっぱ」

「なに、貶してる?」

「いや、少し安心した」


一瞬アレンの言葉に不快そうに眉をひそめたユウキだが

『安心した』という返答に、次は首を傾げたのだった

一体何処に安心要素などあっただろうか…という疑問が頭を駆け巡る


「スゲーって言われてるけど、やっぱ普通の新人と変わらねぇ所はあんだなぁ~

って思ってな」

「そりゃそーだろ…僕を一体何だと思ってるわけ?

まだギルドに登録して、数日なんだけど」

「…いや、数日って言うが、数日とは思えない事やってるからな、お前…」

「…まぁ、否定は出来ないかもだが…」


ユウキの脳裏に、今までの出来事が思い起こされる

確かに、この辺の人の普通…という概念は

何度か覆してきた気がする


「だから、普通の初心者冒険者としての一面が垣間見えて

先輩冒険者の俺としては、少しほっとしたってわけ」

「なるほどねぇ~」

「さ、釣りの続きをしよーぜ」

「あ…うん…(釣りって魚との闘いか、魔獣との闘いか…なんだな…)」


魔獣とバトルよりかは、普通に枝とかが釣れてくれた方が良いな…

と、向こうの世界の普通を願ってみたりしたユウキだった


「で…コレは…?」

「…コレはな…」


次に釣り上げたのはユウキだった

今回釣り上げた物もデカイ

そう…とてもデカイ

大きさとしては、全長2~3mくらいだろうか…

一体、この川の何処に潜んでいたのか、とてつもなく不思議でしかないが

そんなデカイのが釣れた

釣れた…はいいが…


「…コレ、魚じゃないよね…?」

「そうだな…一言で言うと…

クーラのボスだな」

「ほほぅ…クーラのボスか…」


冷静にクーラの情報を得ているユウキ

アレンも落ち着いて返しているが、内心穏やかではない

何せボスである

ユウキが、この世界に来て、初めて恐怖と戦いながら

なんとか勝利を収めた、あのキングブラウンボアと同列なのである

単純にキングブラウンボアより強い事は確かだ

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