冷蔵庫

(あの魔法を魔石に流し込めば、良いのが出来るじゃん!)


一方、ユウキは全力で通りを走り抜けていた

目的地は勿論、魔法道具店

ちなみに、家から一番近い所にあるお店を選んだ

それは、何処のお店でも売っている…と思ったからだ


「えーっと…」


魔法道具店には、魔石はもちろん、奥には魔石を組み込んだ家具も置かれている

照明だったり、コンロだったり…冷蔵庫だったり…

サイズは様々…値段も様々…

まぁ、一番多いのは業務用の大きいサイズが主流だが


「お、あったあった!」


ユウキが見つけたのは、業務用の冷蔵庫が並んでいる中で

一際小さい冷蔵庫

勿論、周りにある物が大きいだけで、コレ単品で見ると

普通の4人家族で使う冷蔵庫とほぼ同じくらいのサイズである


(これは一個しかないのか…)


冷蔵庫が置いてある場所をグルグル見て周っても

ユウキが求めている大きさは、一つしかなかった

まぁ、この世界でこのサイズはあまり需要が無いのだろう

値札には大きく「大幅値下げ」と赤文字で書いてある


「ん~…なるほど…」


見た目はアルミで作られているようで、鈍く光りを放っている

ドアは片開きで、内部は前の世界とほぼほぼ同じ

しいて言うなら、冷凍庫と製氷部分が無いくらいだろうか…


(てか、野菜室的なものがある事に驚きだけどな…)


こちらの世界の物だし、そこまで期待していなかっただけに

嬉しい誤算である


「値段は…7万かぁ…」


まぁ、向こうの世界で買う事を考えたら断然安いだろう

多分、大きさから考えて15万~25万くらいはするだろう

大きさ的には…

機能的には、向こうの世界程色々な物がついているわけではない

魔石に氷の魔法を詰め込んで、中を冷やしているのだから

間違っても、真空だとか、冷凍だとか…そんな高性能な物は無い


(この入れ物を作るのにかかった費用と、魔石の値段…って事かな)


利益分の上乗せはあるだろう…が、何せ、今大幅値下げされているので

どれだけの利益になるのかは分からないが…

まぁ、買われないよりは利益になるだろう…


「すいませーん、コレ下さい!」


比較する物も無いので、この冷蔵庫に決め

代金を支払い、冷蔵庫はインベントリに入れて持ち帰る

ちなみに、店の人から、こんな子どもが冷蔵庫なんか何に使うんだ…

というような、怪訝な目をされたが気にしない

ユウキは急いで家に戻る


「まずは…メーコを炊いて…」


その頃、ミナミはパソコンを使いながら、メーコをお鍋で炊いていた

ちなみに、このメーコはキョウヤから貰ったものである


「これで、しばらく、炊いて…

あと、おかずは…やっぱりアヤキが一番簡単かなぁ…」


料理してきた事はあるが、この世界で料理をするのは初めてだ

そして、調味料もほぼない…という状況では、出来る物が限られてくる…

まぁ、味を気にしないのであれば、いくらでもレシピは頭の中にあるが

向こうの世界の味を知っていれば、このレシピ通りに作った物を

食べたい…とは思えないので、必然的に絞られてくる


「ココにあるのは…塩…醤油…味塩…か…」


何故味塩があるのか、ツッコミたい衝動に駆られるが、気にしない事にしよう


「キョウヤ君、今度狩り出た時で良いからさ…魚釣って来てくれない?」

「ぇ?この世界にも魚はいるのか…?」

「うん、いるよ!この世界では、淡水魚とか海水魚とかの区別なくてね

タイと金魚が一緒の場所で泳いでる事があるんだよ!」

「タイと金魚が同じ所に!!?」


向こうの世界では考えられない

同じ所で泳いでいたら、片方…あるいはどちらも死んでしまうだろう

だが、ココではそれで普通に生存していけるという…


(なんつー違和感…)

「魚はね、少し北にいった所にある、川にいるから、よろしく」

「あぁ…まぁ、アイツが釣るから大丈夫だろ…」

「キョウヤ君は釣らないの?」

「ん~…俺、そういうの苦手だからな」

「そうなんだ…じゃあ、ユウキちゃんに伝えといてね」

「分かった」


そんな会話をしながら、メーコが炊けるのを待つ二人

ボアの肉も焼けばいいのに焼かないのには理由があった

キョウヤはアヤキがボアの肉であるという意識がなく

ミナミは、キョウヤがボアの肉を持っている事を知らなかったから…である

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