第80話怒りの矛先
時刻は既に夕方近くなっていた。思いのほか準備に時間を取られてしまった。
二人並んで森を歩く。傍からみたら二人並んで仲良く…は不明だが、これから行おうとしていることを想像できる人物はいないだろう。
「何だ…」
先程からチラチラとこちらをうかがうようなカルラの視線がうざったらしく理由を問いかける。
「いや、人生何があるか分かったものじゃないと思ってね…まさかあの小さかった君がここまで成長して、王都に乗り込むなんて…と思ってね。それよりも勝てると思っているの?」
負けることを前提にしたような質問を浴びせられセリムは、イラっとし立ち止まるとカルラを睨むように見る。眉にしわが寄り、目はするどく細められ射抜かんばかりの眼光だ。睨まれたカルラは特になんともないようで軽く息を吐き出すとごめんごめんと謝る。
「ただこれだけは覚えおいた方がいいわよ。剣聖騎士団に槍聖騎士団、弓聖騎士団、魔術師団、私が居た頃にはこの四つの部隊だけだったけどもっと増えているかもしれない。それにどの部隊も厄介極まりなく強い」
「…俺が負けると?」
そう聞き返したセリムの目には、んな事しるかっ!と取るに足らない存在としてしか映っていなかった。
「正直なところセリム、君の今の力を私は知らない。村での解き放っていた魔力からするに昔とは比べられ比べられないくらい強いのは分かるけど…個と群とでは結局のところ群の方が有利なんのよ。数は暴力、いくら神敵者とは言っても君のスキルは戦闘に使えるものではないから、戦略兵器だとしても戦術に負ける可能性が高いという話しよ」
「…」
「まぁとりあえずは聖騎士を殺したら次は街に行きましょう。少し遠回りになるけどそこで冒険者や盗賊、ダンジョンあたりを攻略すれば力は付くでしょ」
「…随分と協力的なんだな」
「神敵者なんて貴重な戦力を失えば私の目的も果たせないからよ」
今後の事を軽く話し合いながら二人は進む。
(まだ足りない…か)
先程言われたことを己の中で反芻する。セリム自身相手がどれほど強大かなど知らない。だがカルラが、長い時を生き経験してきた彼女が言うのならきっとそうなのだろ…
表に出す感情とは反対に、内心では認めていたセリム。そこでふと今の自分のステータスがどんなものなのかを知らないことに気づき確認する。
名前 セリム・ヴェルグ
年齢 :7歳≪見た目精神年齢ともに15歳≫
種族 :人族
ランク:C
1次職 :異端者
2次職 :異端児
レベル :52→65
体力 :15000→42000
魔力 :9900→41000
筋力 :16500→49000
敏捷 :14000→52500
耐性 :9600→24000
スキル
【
剣技 LV8→10 max
【拳技 LV10】 max
【斧技 Lv4】
【聖剣技 LV3】 new
【短剣術 Lv4】
【筋力狂化 Lv1→3】 up
【体力狂化 Lv1→2】 up
【敏捷狂化 Lv1→5】 up
【耐性強化 Lv8→9】 up
【魔力強化 Lv8】→【魔力狂化 Lv3】に変化
【反射速度強化 Lv7→8】 up
【胃酸強化 Lv8】→【胃酸狂化 Lv2】に変化 new
【命中率上昇 Lv7】
【嗅覚上昇 Lv8】
【跳躍力上昇 Lv4】
【火魔法 Lv7→8】 up
【水魔法 Lv6】
【風魔法 Lv6】
【雷魔法 Lv8】
【土魔法 Lv3】
【光魔法 Lv3→4】 up
【闇魔法 Lv8】 new
【白魔法 Lv7】
【暗黒魔法 Lv1→4】 up
【振動魔法 Lv8】
【
【鑑定 Lv9】
【夜目 Lv5】
【魔力操作 Lv10】 max
【受け流し Lv8→10】 max
【統率 Lv7】
【罠師 Lv3】
【重量装備時重量軽減 Lv4】
【見切り Lv8→10】 max
【闘魂 Lv4→5】 up
【収束 Lv2→5】 up
【範囲拡張 Lv2→5】 up
【衝撃緩和 Lv4→5】 up
【毒液 Lv6】
【硬化 Lv10】 max
【気配遮断 Lv4→5】 up
【気配感知 Lv8→9】 up
【気配欺罔 Lv5】
【大咆哮 Lv5→9】 up
【再生 Lv6】→【超再生 Lv1】に変化 new
【変換 Lv8→10】 new
【光の加護 Lv3】 new
【魔の加護 Lv6】 new
状態変化形スキル
【
【魔装 Lv10】 max
魔眼
【流天眼≪ツァイトール≫】 new
職業専用スキル
【呪印 Lv1→2】 up
【
【強奪 Lv4】
【瞬滅 Lv5→6】 up
【鉄壁硬化 Lv4→6】 up
【重撃破 Lv5】
【乱魔の一撃 Lv2→3】 up
【空拳 Lv5→6】 up
【忠義の証 Lv4】 new
【聖鎧 Lv2】 new
魔道具効果
隠蔽 Lv10 max
何だコレ!?と思わず思ってしまう。思った以上のステータスの上昇っぷりに内心で驚きを隠せない。こんなステータスありなのか?と思うが逆にこれはこれで良いなとも思うセリム。
これから行うことを思えば、ステータスは高いに越したことはない。寧ろあれだけ殺して低かったらもう一度今度は違うSランクダンジョンにでも挑まなければならなかっただろう。それを想えば満足いく結果と言える。だがステータスがいくら高くなろうとも戦いとはステータスだけで決まるものではない。セリム自身まだまだ知らないスキルに魔法もあるだろう。だからこそ油断も慢心もせず殺して力を奪いさらに上に行く。目的を成し遂げるために――
「カルラ、しばらく森に籠っていた所為で戦えないなんてことはないよな?」
「心外ね。なら試してみましょうか?」と試すようなセリフを口にしたカルラはセリムに人差し指を向ける。彼我の距離は四、五十センチ程度、この距離で魔法が放たれれば種類にもよるが回避は難しい。なによりセリムは戦闘態勢すら取っていない。やってみろとセリムも試すようなセリフを口にする。
「そう、それじゃ」
そう言い終わる前に指に魔力が一瞬で集まり、魔法がトリガーがひかれた。。その間一秒もかかっていない。指から放たれたのは魔法の中でも最速の部類、雷魔法、
当たれば間違いなく貫かれる。しかもこの距離だ。到達するまでに0,1か2秒程度かもしれない。
「この距離で反応するなんてすごいのね」
「…何を言ってるんだか」
放たれた閃光は間違いなくセリムへと向かった。だがセリムはそれに反応し、左手を手首だけを振り"受け流し"でカルラへとお返しした。のだが、カルラの周囲には魔法障壁が展開され障壁に当たり攻撃は通らなかった。
そんな常軌を逸したやり取りをした後だったが二人の雰囲気は変わらなく、ソート村から一番近い村、ニックへと向けてい進んでいく。到着まで約半日の距離だが二人組の聖騎士が直ぐに駆け付けたことからとソート村に向かっていたか帰る途中だったのだろう。
「少し急ぐぞ」
「そんなに慌てなくても平気だと思うけどね」
と言いながらも素直についてくるのだった。
翌。
朝日が上り始め、世界から闇が徐々に光に飲まれていく中、セリム、カルラの二人は夜は休息に当て、後はひたすらに進んでいた。逸る気持ちはあったが色々と確認したいこともあり大人しく従ったのだ。
本来は転移を使えば早いのだが使用者が行ったことのない場所にはいけない為、こうして歩きとなった。多少は急いだお陰で時間を短縮することが出来、夜が明ける頃には村へと到着することができた。
朝特有の静謐さが世界を支配する中、人外二人組は今から蹂躙するここ地を踏みしめるように進んでいく。道中で会う村人に聖騎士連中の正確な居場所を聞くと教えてくれた。
数か月前から居座って迷惑してるんだと嫌そうな顔をしながら教えてくれた。なんでも聖騎士として権利を利用して結構めちゃくちゃしているらしい。これで殺しても問題ない大義名分が出来た。村を開放するという。まぁなくてもやっていたが…
(村に来た奴もそうだが聖騎士はバカだけがなれる職業なのか…)
そして教えてもらった通りの建物を目指し村を進むと、平凡な村には似つかわしくない立派な建物が見える。どこかの街にありそうな宿泊所のような構えをしており、村にある家とはサイズが違いかなり目立つ。ここい集団で住んでいるという。ソート村監視のためにわざわざ建てたものだそうだ。
「話に聞いたのだとあれだな」
「そうね。どうやっても見間違えようがないものでしょうね」
確認の意味を込めた問いにカルラから肯定の意が返ってくると建物の前に立ち、礼儀正しくノックでもするのかと思いきや、魔法を発動しいきなり破壊した。
ドゴォォン――
地が爆ぜたような爆音を轟かせ二階建ての建物のうち一階部分が吹き飛んだ。爆音によって周囲にいた村人がな、なにごとじゃ~と驚きの声を上げる。向かう視線の場所は一つ、爆音の出所。そんな周囲の目に晒されていたが気にすることもなく、生きている聖騎士が出て来るのを無機質な声を聞きながら待つ。
て、敵襲と言う慌てた声が半壊した建物内から響き、突然の出来事に鎧を身に着けている暇がなかった騎士たちが慌てて剣だけをもって煙が上がる中、次々と姿を現した。
「き、貴様がやったのか!」
ひどく狼狽した様子で剣を構えながら問いかけてきたのは三十を過ぎたであろうちょび髭の生えた騎士だ。全体的にひょろく見える。服は煤で黒くなり所々焼け焦げていたりする。寝ていたのかかなり軽装なものもおり、火傷を負っているような者もいる。
問いかけには応えず、セリムは傲慢な態度で逆に問いかけた。
「せっかく、丁寧にドアホンを鳴らして起こしてやったんだ、質問に応えろ。槍聖騎士団の外見的特徴と王国の戦力を教えろ」
「ふ、ふざけるなっ! こちらの質問に応えろ!」
聖騎士の一人に向かい剣を投げつけるセリム。直後ドサリと言う音が騎士たちの背後から聞こえた。
「これで問題ないだろ?」
挑発するような言い方、この場で聖騎士を殺すことで自分が関係者だと印象付けたのだ。仲間が一瞬で死んだ事に動揺が走り、聖騎士たちの顔に緊張が走る。
「か、囲めっ! 一気に…」
ボワッと聖騎士達を包み炎が上がる。もう面倒になったセリムが燃やしたのだ。生きたまま焼かれるという想像すらしたくない光景の中、半壊した瓦礫が積み重なって人が隠れられそうな部分に目を向ける。
「お前が何者か知らないが、我ら剣聖騎士団を襲うと言うことは王国に喧嘩を売るという意味だが理解しているか?」
瓦礫が積み重なった場所から現れたのは銀の鎧を着こみ完全武装した聖騎士の男だった。仲間がやられている間に整えたのだろう。清潔感を出すために短く切り揃えられた青い髪、顎の下から薄く髭を生やしたこれぞ騎士と言った日に焼けた筋骨隆々とした肉体をしている。
「私はここの部隊を預かる部隊長、ボルグ、大人しく捕まってもらおうか。少年」
「…」
腰から金を基本とし青色が入った"
ザッザッと言う音を鳴らし周囲を森に囲われた草原を複数の男女が歩いていた。鎧を着たものもいれば、ローブを着たものもいる。獣人にエルフ、人族さまざまな人種がいるが皆共通しているのはそれが戦闘を目的にした集団であるという事。そう冒険者だ。
「待っててね、セリム」
セリムが街からいなくなり既に一月近くが立っていた。その間何も出来ずに気ばかりが急いでいたがやっと数日前、アーサーの呼んだ仲間がアルスに到着し出発できたのだった。とは言え、出発するまでに何もしていなかったわけではない。キーラは自分にできることを…とダンジョンなどに潜って力を蓄えた。
出発して二日。
まだまだ先は長いものだが、やはり行動出来ていると言うことが気持ちを幾分か軽いものへと変える。それでもやはりまったくなくなるわけではなく冒険者一行、特にキーラの足は速いようだった。
「キーラ、そんなに焦っても早く着かないぞ。怪我の元だ」
「随分と心配性なことだな、アーサーよ」
「るせーよザイドリッツ。お前こそさっきからクロをチラチラと見てキモいんだよ」
「ふっ…なるほど。アーサー貴様ぁ、ダンジョン前の肩慣らしにしてくれるわぁ」
「上等だ、このハゲがっ!」
むさ苦しい男二人が言い争いを始め、ついぞ抜剣するまでに至ったが周囲にいた者たちは特に気にする素振りすらみせない。諍いの原因になったクロは鼻歌を歌いながら実に呑気そう猫の特性そのまんまと言う感じだ。
「はぁ~、ザイド。止めろよ毎回毎回…ハゲは本当なんだから受け入れろよ」
ザイドリッツは禿頭の頭に顔に大きな傷のある男だ。茶色の襟付きシャツ、ズボンのベルト部分に短剣を数本帯び、背には黒緑色の肩掛けショルダーを背負っている。手には手袋を嵌め、両手に探検を握り隙なく構えている。
対するアーサーは局所的に鎧を纏っている。肩から手、ふくらはぎからつま先を覆う形だ。白を基調とし所々に金の刺繍が入ったロングコートを着込み、腰には剣をひっかけるためのベルトが巻いてある。ベルトにはもう一本握っている剣よりも短いものが差し込まれてある。
「メルケル無駄にゃ~。この二人は会うとしょっちゅう言い争うのにゃ。ガキンちょなんだにゃ」
メルケルと呼ばれた人物は確かにそうだが…と納得しているものの面倒見が良いのかザイドリッツに近寄り小声で話しかける。
「いいのか? このまま争ってたらクロさんにガキんちょだって相手にされなくなるぞ」
勢い良く頭を振るザイドリッツに汚いからと顔を顰め後ずさる。短剣を持ったままだったがメルケルの肩を両手でガシッと掴む。
「それはいかん、それは断じていかんぞー。メルケル整髪料を出せ!」
「髪がないのに何に使うんだよ」
「身だしなみは重要。それに昔の人は言っていただろう。髪など気合があれば生えるものだ、と」
そういうと天に向かって気合いだ気合いだ気合いだとどこかの浜口親子のような事を口にする。して好意を向けられたクロはと言うと…
「むさいにゃん しっ しっ」
まったく相手にしていなかった。
「ねぇ、クロ。アーサーとザイドリッツって何で仲が悪いのよ?」
「…それはにゃー、確か昔に――」
虚空を見つめてどこか懐かしむように目を細める。それから話された話は心底どうでもいいことだった。質問したキーラ自身聞いていて途中から興味が失せてしまうくらいに…
それは昔、アーサーがまだ冒険者になりたての頃。悪魔を倒した直後に聖騎士を辞め冒険者になったアーサーだが実力は既にAに届いていた。だがそこから上に中々行くのは難しく、一人依頼を受け続けていたそんなある日。大規模な討伐依頼がありそこでザイドリッツと初めて顔を合わせをしたのだ。ザイドリッツはその頃には既に名が知られたBランク冒険者で"
そんな二人が戦場で出会い、ちょっとしたミスでアーサーの剣にザイドリッツの髪が触れバッサリと切れてしまった。その事に衝撃を受けたザイドリッツは、一瞬の隙ができモンスターの攻撃を顔に受けてしまいさらに髪を失った。そしてアンバランスになった髪型に嫌気がさし全て剃ってしまったのだ。以降ハゲ頭となり続けている。というものだった。実にどうでもいいわね…と虫でも見るような視線を向けるキーラ。
そんな女性二人とは対照的に男三人衆はあーだこーだと騒ぎ続けるのだが、それはキーラの発した言葉によりピタリと収まる。そこはやはり経験してきたことによるものか…
「あれ、煙が上がってるけど火事?」
森の奥を指差しながら教える。
「ザイド見えるか?」
「生憎と俺は… メルケルはどうだ?」
「確かに見える。この方角は…村があったと思うが」
Aランクの二人は目を細めるも見えなかったがメルケルはいとも簡単に確認する。というのもメルケルの職業の中にある弓兵と言うのがある。その専用スキルが
メルケルの言葉にまさか何者かに襲われてるのかという予感が胸中を駆け抜ける。
「煙が上がっているのはどうやら一か所だけらしいが、量が凄い。焚火にしてもちょっとやりすぎだな」
「取り敢えず一度様子を見に行くのにゃ」
様子を見に行くという判断に皆が納得を示す中、キーラはそんなことよりもセリムを…と思っていた。だが先に様子を見に行ってくるから後から来てくれと言うとアーサーは行ってしまったので渋々ながらついていくことにするのだった。
(こんな事してる暇ないのに…)
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