第69話悪魔
「…」
やってやる! と意気込んでいたセリム。しかし、いざ洞窟内に入ってみるとそこはSランクダンジョンなのかと疑いたくなる光景だった。
森の中にぽっかりと開けられた大穴。その見た目は不気味であり、入りずらい印象を与える。
入ってみると洞窟内は光を放つ鉱石により視界が確保されており、不気味さは外程感じられない。
不気味さはそれほどでもないが、脅威はもっとなかった。それがセリムが
絶句した原因だ。
遭遇するモンスターがゴブリンやハウンドドッグと呼ばれる集団で狩りをする魔物ばかりなのだ。精々D、C程度のモンスターしか出てこない。
「なんだかなぁ…」
意気込んで来たのに自分だけ張り切っているみたいでバカバカしくなってきていた。それでも進んでいくと下層への魔法陣を見つけた。
「魔法陣? 階段じゃないのか」
現在、セリムがいるのは四階層目なのだ。今までは下層へと繋がる階段が部屋のどこかにあり、それを下って進んできたの。だが、ここへ来てそれがいきなり魔法陣へと変わっていた。
顎に手を当て考えてみたり、辺りを見渡すが、特に階段はない。仕方なく魔法陣へと足を踏み入れると、魔法陣が淡い輝きを発する。
次の瞬間、別の場所へと移動していた。
「ここは…」
移動した先は相変わらず洞窟の中だった。だが、広さが桁違いだ。
鍾乳洞のように天井から岩や氷柱がいくつも伸びている。地面には数多くの凹みが出来ており凹凸の差が激しい。
一部には地面を掘り、その砂を集めたような山まである。そして部屋の一番奥、そこにはの小部屋へと続いていそうな窪みがあった。
明らかに今までと違う部屋だった。
「広さから考えればここがボスとかが出てくる場所なのか?」
全然探索した感が出ずち終わりかけるダンジョン攻略。がっくしと肩を落としていると地響きが起こる。
ーーーーーーグラグラグラ
突然地面が揺れだす。驚いていると足元の地面が、押し上げられるように下からの衝撃を覚えた。
急ぎその場から飛び退く。
先程いた場所から勢いよく砂の柱が上がり、その中からモンスターが現れた。
鑑定を使いモンスターを調べる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ワームホール
レベル:102
体力:17000
魔力:10000
筋力:24000
敏捷:29000
耐性:10900
スキル
筋力狂化 LV1
体力強化 Lv6
敏捷狂化 Lv2
魔力強化 Lv6
胃酸強化 Lv10 max
大咆哮 Lv6
再生 LV7
変換 Lv10 max
気配感知 LV10 max
魔力感知 Lv10 max
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
地面から飛び出してきたのは事前に話を聞いていたワームだった。未だ地面から全身が出ていないにも関わらず、20~25mはあろうかと言うほどの大きさ。
口にはこれでもかと言うほどのびっしりと凶悪な牙の列が並んでいる。列は暗くなり見えなくなる胴体の中まで続いている。
(どれも万オーバーかよ…)
驚きも束の間、今度は飛び退いた先の地面が盛り上がり始める。足元に風魔法を発動させ進行方向を変える。
その間盛り上がった地面からは目を離さず、同時にワームホールにも注意を配る。が、まるでそんなこと意味ないとばかりに今度は数十個所の地面が盛り上がった。
さすがに身体強化なしにこの数は無理だと判断し、纏衣を使用。
盛り上がっていた地面からいくつものモンスターが姿を現す。
ワームホールと同じ姿形をしているものもいれば、四足歩行のモンスター、二足歩行の人間に近いフォルムのモンスターなど様々だ。
形こそ様々だが、一貫している特徴がある。皆、口許に生える牙が列をなしている点だ。
飛びたしてきたモンスター達は、周囲を見渡しセリムを捉えると一斉に襲い掛かかった。
"見切り"を使い最小限の移動だけで回避して反撃を加える。回避できない攻撃は"受け流し"で流しながら注意して戦う。
「数が…多いんだよっ!」
飛び掛かってきた二足歩行のモンスターを
だが、打ち抜き叩き切った筈のモンスターは数瞬後、傷口が塞がっていた。そして傷つけられた事の怒りを晴らすかのように勢いよく進む。
(あのデカブツ同様、こいつらも再生持ってんのかよっ!?)
一瞬、復活したモンスターに気を取られ、背後の警戒が緩くなる。そこを狙い四本腕のモンスターが連続で殴りかかる。
"硬化"により肉体強度を高める。さらに、"鉄壁強化"で服を含めた肉体全てを強化。しかし、それでも完全に防げるものではなく、"衝撃緩和"によりダメージを一定量体外へと排出する。
四本腕の接近を許した時点でセリムはそいつの相手をしなければならず、他が手薄になった。その隙をつかんと数十にも及ぶモンスターが一斉に襲い掛かっていく。
"強奪"により四本腕のステータスを一時的に低下させる。掌底を胸部に叩き込むと同時、魔法を途中キャンセルして、指向性を持たせた爆発をお見舞いする。
すぐに距離をとる。その間に四本腕は直ぐに復活を果たし、周囲のもの達同様、セリムに飛びかかる。
大群から逃げつつ、セリムは鑑定を使った。
(再生しない奴から殺していかねーとキリがねぇからな…)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ワームテイル
レベル:70
体力:10000
魔力:15000
筋力:12000
敏捷:20000
耐性:9500
スキル
筋力強化 LV1
体力強化 Lv6
敏捷狂化 Lv1
魔力強化 Lv10 max
胃酸強化 Lv6
大咆哮 Lv4
再生 LV4
変換 Lv6
気配感知 LV10 max
魔力感知 Lv10 max
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ワームユマン
レベル:73
体力:13000
魔力:8600
筋力:20000
敏捷:13000
耐性:13000
スキル
筋力狂化 LV1
体力強化 Lv6
敏捷強化 Lv7
魔力強化 Lv4
胃酸強化 Lv7
大咆哮 Lv5
再生 LV4
変換 Lv6 max
気配感知 LV10 max
魔力感知 Lv10 max
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ワームグリード
レベル:88
体力:18000
魔力:11000
筋力:21000
敏捷:25000
耐性:16000
スキル
筋力狂化 LV1
体力強化 Lv9
敏捷狂化 Lv2
魔力強化 Lv5
胃酸強化 Lv8
大咆哮 Lv6
再生 LV6
変換 Lv8
気配感知 LV10 max
魔力感知 Lv10 max
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステータスを見た瞬間、セリムはひきつった笑みを浮かべた。しかし、それも一瞬。直ぐに不適なものへと変わる。
「喰ってやるよ、全員」
それからはひたすら殴り殴られの繰り返し。
如何に神敵者と言えどセリムのスキルは戦闘中に役立つものではない。
再生持ちを多数で相手取るのは分が悪く、攻めきれずにいた。それでも最悪の事態だけは起こっていない。
一番巨大なワーム、ワームホールが初撃以降、地中に潜って出てこないのだ。それでも数
一番スピードがあるのは四本腕のワーム、ワームグリードだ。回避するのに集中すれば、次点の速度を持つ尻尾のワーム、ワームテイルに隙を突かれ攻撃を食らう。加えて攻撃を食らったタイミングで人型の、ワームユマンが追撃を仕掛けてくる。
先程から殆どこの繰り返しだ。
上記のステータスを持ったモンスターが数十いる中で防戦一方。どんなダメージを負っても直ぐに再生し、襲い掛かってくる。
体力と魔力だけがどんどん減っていく。もはやジリ貧状態だ。
「はぁ はぁ」
息は乱れ、整えようにも間断なく繰り出される攻撃に、苦しい戦いになっていた。
バカ正直に戦う事はないと部屋の最奥、窪みを目指したりもした。だが、前方からもモンスターが現れ、ワームの数を増やす結果となった。
(殺しても死なない…いや正確には死んでないのか?
どうしたものかと頭を悩ませていると、洞窟内に自身以外の声が木霊する。
「悪魔の気配がしたと思えば人間とは…随分と歪んだ魂の持ち主だ」
そう言って最奥の窪みから一人の男が姿を現した。
浅黒い肌に側頭部から生えた巻き角。目は赤く、一目で人間以外の存在だと分かるほど尋常じゃないオーラを纏っている。
巻き角の男はセリムを見定めるかのように見る。その間は不思議とワームたちは襲ってこずセリムも角男に視線を合わせた。
「人間風情が何用かは知らぬが我が城で暴れるとはいい度胸だ」
ピンチな状況で、さらに尋常じゃないオーラを持った角男が現れた。
事態は最悪。が、セリムはそんなこと知らんとばかりに角男を見据える。
「どうやら悪魔ってのは本当にいたらしい」
そう言って不適に笑って見せた。
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