後書き
後書き
狐の嫁入りとは、晴れているのに急に雨が降る「お天気雨」の怪奇現象を狐が人の目をくらますために天気に雨を降らせるとか、または人がこれはキツネに化かされているのではないかという意味合いから「キツネの嫁入り」として各地で遠い昔より言い伝えられているようである。
また墓地、田畑の薮や土手で(そうよく真っ赤な曼殊沙華が一面に咲き誇っている)お彼岸の頃の雨あがりに発生する、ボォっとした青白き靄。リンが燃えているとも人魂ともいわれる霞の発生は「狐火」と呼ばれ・・・キツネの嫁入りの提灯行列にも見え、例えられ、今日に伝えられたらしい。
親父もお袋もとても元気だった頃、
農繁期の茶のみ時間の輪の中で、いっとき、聞きかじった話・・・
近所のおばさん達のワイ、ワイ、ガヤガヤの話の中には・・・
とっても不思議で、とっても面白い、とっても為になる話が・・・
夢のような話がいっぱいありました。
学校が終わると、毎日が家の手伝いだった。
その頃ですが・・・
思いだせば、切なくて、とてもなつかしい。
可能なれば、いっときでも戻って。
あの頃の元気な親父とお袋に合って見たい気もします。
親父が、とってもとっても元気だった頃、若かった頃、
山奥深くのお袋方の親類宅に行きました。
帰りは大変遅くなりました。
帰りのバスに、間に合わせなくてはと、
焦る親父が、竹薮の続く農道に着いた時、
あたりはさらに暗くなり、降り続いていた雪はさらに強くなり、
ボサ、ボサと音をたてて降り出しました。
一瞬、ボタッと大きな音がして、
傘をさす手が、たいそう重くなりました。
ブル、ブル、ブル、とても嫌な悪寒がして、
親父は、無我夢中で、かすかに見えるバス停の灯り目指して、
とてつもない大股で歩き出しました。
バス停の灯りがもう少しに迫った時、
ボサ、ボサの雪は急に小降りになり、あたりも少し明るくなり、
傘が急にストンと軽くなりました。
親父が良く、みんなに話してた。
「いや~、あん時はたまげた。バス停のとこで傘をたたもうとしたら・・・何かの毛が傘にべったり付いているんだからよう~」
元気だった親父は、真面目に働いて、働いて、働きぬいて、俺達三人をりっぱに育ててくれました。
そんな親父は今はもう・・・ちいちゃな幼児みたいになってしまいました。
「親父帰って来たよ・・・孫だよ、孫、こんなに大きくなったよ・・・わかる・・・」
寝たきりのベットの上で、固まってしまった首を斜めにしたままで・・・
小さい三角目をしばたいて・・・2~3回口元を・・・少し動かしたかなあ~
「お父ちゃん、お父ちゃん、わかっているよね。ね~お父ちゃん、ほらお父ちゃんが泣いているじゃない」気丈な母がしわくちゃの顔に涙を溜め喜ぶ。
親父のしわだらけの三角目の下からは涙が一筋流れ出ていた。
お父ちゃんわかっているんだあ~
・・・まわりのみんなも喜びほほ笑んだ・・・
親父、また一緒に田んぼを耕したかったよ・・・
親父が訳がわかりなくなりだした頃、
口からヨダレを垂らし、ごはんを口元からボロ、ボロこばすのを見て・・・
「何やってんだ親父・・・」怒鳴ちゃったけど、ゴメンな・・・
あんな弱くなった親父・・・本当は見たくなかったんだ・・・
受け入れることが出来なかったんだよ・・・
そんな自分に本当は怒鳴っていたんだよ・・・
本当は寂しかったんだ、ゴメンナ親父。
平成8年10月30日
狐の嫁入り @yasuo310
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