第2話

 ひと月を数えるほどに続いた戦争は、私のいる王国の勝利で終わった。

 仲間の見習い騎士に聞いた話によると、アテナという騎士の活躍により掴んだ勝利なのだそうだ。

 アテナ――この王国において、その名はただの騎士を意味する言葉ではない。

騎士の中の騎士であり、かのゼウスの娘とも言われる女性、守護神アテナ。

神の子として生まれ、知恵や芸術、戦を司る女神であるアテナ様は、騎士の模範であり憧れであり誇りなのだ。

 そんなアテナ様に命を救われ、諭され、恐れ多くも一人の女性として好きになってしまうとは……。処女神としても名高い彼女では見込めるものも無いのだろうが。

 恐れ多さ半分、落胆半分の心を抱え、私はパルテノンと呼ばれるアテナ様の住まう神殿に来ていた。やましい心などは無い。そうだ、助けられた礼を言うだけなのだから。


「というわけで、通してくれ」

「何が『というわけで』だ。意味が分からん。帰れ」


 門番に問答無用で跳ね返されてしまう。

びっくりだ。全く取り合ってもらえない。

 なんでもパルテノンは処女宮とも呼ばれており、簡単に言ってしまえば男子禁制なのだそうだ。そのため、何度「助けられた礼を言うだけ」だと言っても、この双子の女性門番に突き返されてしまうのだ。


「別に悪事を働くわけでも無い。入ってかまわんだろう」


 私がそう言うと、右に立つ門番が大剣をこちらに向ける。


「男はみな欲にまみれている。この神聖なパルテノンに、男なんぞを入れるわけがなかろう」


続いて左に立つ門番が槍を向けてくる。


「薄汚い身体でアテナ様の神殿を汚すな」


散々な言われようだ。

私としては、その口の悪さで十分に名を貶めていると思うのだが、一応言うのはやめておこう。せっかく拾った命を天に返す羽目になりかねん。

なんせ槍の切っ先はびっくりするほど近いのだ。いや、近いというよりは既に触れてすらいる。

私は両手を挙げ、害意が無いことを示す。

双子の門番は、渋々といった様子で突き付けていた槍を戻す。

ちなみに、比較的口の悪い左側の門番は綺麗な舌打ちの音色を私に届けてくれた。

反論したい気持ちを抑え、パルテノンを離れる。双子は随分と私を警戒していたのか、パルテノンが米粒ほどの大きさとなって見えなくなるまで鋭い視線が背中を刺し続けていた。

通りに立ち並ぶ店でリンゴを買う。どうせ実家に帰れば腐る程にあるのだが、なんせ随分と都市から離れている。一つのリンゴを片手に帰路につく。


アテナ様とはもう二度と会えないのだろうか?


街から出てしまう。実家に帰るつもりだったが、この都から離れるのが惜しい。だが、あの双子の門番が恐ろしすぎて戻るのも私には出来ない。

どうしようか迷った挙句、丘の上にある教会に来る。

雑草は伸び放題、壁は所々が崩れ、長い間使われていないだろうというのがわかる。

扉を開けて入ってみれば、神父さえいない。だが、ステンドグラスからは未だ荘厳な美しさを教会内にもたらしている。

彼女は、「生きていることを誇ってください」と言った。

最前列の椅子にゆっくりと腰かけ、目を閉じる。この度の戦争で生き残れたことを誇り、祈りを捧げることにしよう。そして願わくば―――


「アテナ様にもう一度会えますように」

「……はい?」


後ろから返事をされる。

私が後ろを振り向くと、一人の女性が同じように祈りを捧げていた。

教会に入ったときは気づかなかった。入り口から一番近い席の端、教会の角で音も立てずひっそりと祈りを捧げていた彼女に気付かなかった。

顔が隠れていて見えづらいが、おそらくはエメラルドの美しい髪だ。

そんな女性は、私は一人しか知らない。


「アテナ様?」

「……はい」


×××


 神に祈りが通じたのだろうか?

いや、そもそも神であるアテナ様に会いたいと願うのは、神への祈りとして成立しているのだろうか? あまり信仰心があるわけではない私にはよくわからない。

 祈りを捧げ始めてから一時間、一切の言葉を放つことなく手を合わせ続けている。

 私もアテナ様に倣い祈りを捧げ続けている。心の内は、祈りを捧げるほど穏やかだとは言い難い。一人分開けて隣にアテナ様がいると思うと落ち着かない。

 ちらと隣に目をやってみる。アテナ様は静かに祈りを捧げ続けている。

 慌てて目を閉じ直して祈りを捧げる。


「貴方は、生き残っていてくれたのですね。アイギス」


 ぼそりとつぶやかれる。

 祈りを捧げていた目を開き、アテナ様がこちらを向いている。

 名前を憶えていてくれたとは思っていなかった。礼を言うという名目でパルテノンに尋ねこそしたものの、私のことを覚えていてくれているなどという希望は持たぬようにしていたのだ。彼女は私より遥かに強く誇り高い騎士であり、都市の守護神なのだから。


「覚えていてくれたのですね」


 私が言うと、アテナ様はこちらを向いて少し拗ねたような顔をする。

 何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか?


「私は、そんな失礼なことはしません」

「すみません……」


 どうやら、「どうせ私のことなど覚えていないだろう」と思っていたのが伝わってしまったようだ。失礼が無いようにと思ってはいたのだが、まさかこんなところで心の内が漏れてしまうとは……。


「覚えていただけていたことが嬉しかったのです」


 ごまかしてみる。

いや、どちらにせよ本心であることには変わりないのだ。


「私から名を聞いたのだから当然です」


 そうだっただろうか? どちらから名前を聞いたのかは、むしろ私が覚えていない。

 ひと月も前のことであるのに、随分と鮮明に覚えておられることに驚いてしまう。


「アテナ様、少々質問してもよろしいですか?」


 少し不思議に思っていたことがある。

神である彼女が祈りを捧げる光景というのは、美しくはあるが違和感が否めない。いったい、どのような祈りをどのような神に捧げるというのだろうか?

 私が聞くと、アテナ様は「なんでしょうか?」と言って応じてくれる。


「神である貴女も、神に祈りを捧げるのですか?」


 私の質問に、アテナ様は「おかしいでしょうか?」と少し戸惑ったような表情を浮かべる。そして少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「神であっても、未来が怖いのです。過去を悔やむときもあります。私の場合は両方です」


 祈りの理由をそれとなく教えてくれる。

 神が恐れる未来とは何なのだろうか? 神が悔やむ過去とは何なのだろうか?

私にはよくわからない。

ほとんど無敵ともいえるような強さを持つ神に、恐れる必要などあるのだろうか? 幾多の武勲を挙げ続け人々を守り救ってきたというのに、悔いるような過去などあるのだろうか?

きっと、神の祈りは私の想像もつかないような領域のことなのだろう。


「私達神は、確かに加護によって人より遥かに強く、そして遥かに長く生きています。ですが、それは運命を決定づけるようなものではないのです」


 また少し、祈りの理由を教えてくれる。

 だが、神の話はどうやら私には少し難しすぎるようだ。

何を伝えんとしているのか、私には察することが出来ない。

私が「わからない」といった表情を浮かべると、アテナ様は教えてくれる。


「人の子からすれば、私達神は永遠を生きているようにも感じるでしょう。まるで違う存在のようにも感じるでしょう。ですが、神も死が怖いのです。そして、大切な何かを失うのが怖いのです」


アテナ様の表情が、少し悲しみを帯びたように感じる。

神と人とは違う存在なのだ。

それは、この王国、あるいは世界において共通する歴然たる事実である。

神によっては、天変地異を引き起こす超すことも出来るらしい。新しい世界を作ることさえ出来る神もいるのだとか。

隣にいるこのアテナ様も、戦いにおいて勝利の祝福をもたらすと言われている。

人の出来ないことを成し、その怒りは天変地異さえ引き起こすのだと人々は畏れ崇めるのだ。

だが、ようやくわかった。彼女は、神と人の違いなどないと伝えたいのだ。


「私は、過去に多くの命を奪いました。未来に戦争が起きれば、その時もまた誰かの命を奪うでしょう。私はそれが恐ろしい。誰かを守るためだと言いながら、私は同じように誰かを守る人の命を奪うのです」


俯きながら、苦しみながら彼女は言葉を紡いでいく。

この一瞬で悟ってしまう。彼女が戦いによってどれだけの苦しみを抱えているのか。

生まれながらにして戦いを司ると定められた彼女は、その使命を全うするにはあまりに優しすぎるのだ。自ら奪った命のために、神に祈りを捧げずにはいられないほどに。

私はふと思ってしまう。

もし……、もしもだ。この美しく強い、それでいて優しく弱い女神を、私の手で守ることが出来たのなら――――――


「アテナ様……」

「人の子よ」


私が呼び掛けた瞬間、それを遮るようにアテナ様は言った。

取り払われるはずだった神と人の間にある壁を、自らまた作り直すように。


「どうか死なないでください」


必死に笑顔を見せながらそう言う彼女からは、哀しみしか感じ取ることが出来ない。

何故だ。そんな哀しい思いをしながら、何故私を突き放すようなことを言うのだろう。

私が弱いからだろうか? 戦場で命乞いしか生き残る道を見出せないような弱い人間だから突き放されてしまうのだろうか?


「どうか……、貴方と私の生きるこの世界が、平和となることを願っています」


それだけ告げると、彼女は立ち上がり去って行ってしまう。

追うことも出来ない。止めることも出来ない。立ち上がることも出来ない。

彼女が去ってしまった教会の中で、自分が何も出来ない人間であることを一人悔いた。


×××


「よう農民騎士、今日も随分奇抜な鍬を振るっているもんだな」


私が修練場で槍を振るっていると、一人の男が私に向かって剣を振るってくる。

私はそれを槍で弾き返すと、剣を持った男がこちらに笑顔を向けてくる。


「槍を振るっているのがわからんとは、どうやら前の戦争で目をやられたらしい。医者に診てもらったらどうだ? いや、悪いのは頭だったか。どうせならそのにやけた顔も取り換えてもらうと良い」


私が悪態をつくと、男は剣を降ろす。

にやけ顔は驚いた顔に変わる。

こんなふざけた奴でも、顔の造形が私より遥かに整っているというのに腹が立つ。

剣の腕も私よりは良い。


「おいおい、友人に向けてどんな言い草だアイギス」

「私が知る『友人』という存在は、少なくとも突然背後から剣を振るってくる者ではないなガラテイン」


同じ見習い騎士のガラテイン。私と同じ時期に王都に来て、運よく二人で生き残ってしまった。悲しいことだ――――――


「この見習い騎士用の修練場も、二人だとこうも広いものか……」


私たち二人だけが生き残った。

私達と同じ時期に見習い騎士となった者はおよそ百人。そして、先日の戦争を終えて帰ってきたのは私とガラテインだけ。以前ならば広場を埋め尽くしていた見習い騎士達は、もう二度とここに現れることは無い。

まだ遺体だけでも帰ってこれた者は良い。なにも帰ってこなかった者も多い。敵国の兵を殺した際の戦利品の中に、味方の遺品があったということなど珍しくも無い。

そんな彼らは今どこにいるのだろうか? いや、教えられたとしてそれが彼らだと判別することが出来るかもわからないのだ。

殺された際に首を奪われた者がいるかもしれない。炎の中に身を投じた者もいるだろう。荒野に取り残され、獣に食い荒らされた者もいるかもしれない。

獣さえも見捨て、身体の肉が腐りきってしまった者もいるかもしれない。

初の戦場で生き残る者は一握りだと言った、先輩騎士の言葉を思い出す。

せめて、片手の指の数くらいは生き残ってほしかった。


「ガラテイン、お前も次の一握りに入るために剣を振るっておいたらどうだ?」


私が言うと、ガラテインは笑いながら木で出来た剣を投げ渡してくる。


「私は槍使いなんだが……」

「わがままな奴だな。自分で取ればいいだろう。それか、この際に剣も覚えてはどうだ?」


ガラテインは、木の槍を取ってくれる。

木の双剣を握り締めこちらに向けてくるガラテインに、私も木の槍を向ける。

スッとガラテインの顔に向けて槍の突きを放つ。それが簡単に弾かれると、今度は私の顔を霞めるように剣が通る。躱しきれずに頬が少し切れる。

この男、私のことを少しばかり本気で殺すつもりなのだからタチが悪い。

思いっきり槍を横に薙いでやる。槍のリーチがあれば、それなりの速度があれば避けられることは無い。槍はガラテインの脇腹を捉え、ドスッと鈍い音を立てる。

そのまま畳み掛けるように攻撃をしようと槍を引こうとした瞬間、腹部に強烈な衝撃が走る。

ガラテインの剣を全く防御せずに受けてしまった私は、情けなく「ぐう」と鳴いてしまう。

腹の立つ男だ。お互いにそう思うのがわかる。この際だ。仲間たちの墓標の一つにこの男も加えてやろう。



随分と打ち合った気がする。

お互いの攻撃で身体の至る所に鈍い切り傷と擦り傷を受けた私達は、通りかかった先輩騎士に散々に説教をされた。

鉄製の籠手を着けていた先輩騎士の拳骨は、まさに骨身に染みる痛さだった。


「貴様らは仲間とすら殺し合いをする気なのか!? せいぜい生き残った者同士仲良く出来んのか! 剣の鍛錬をしているかと思えば、剣を放り出して素手で殴り合いなんぞしおって!」


ああ、随分と耳に痛いことだ。

既に五回は繰り返したであろう先輩騎士の言葉が耳を貫く。

ガラテインはともかく、私は一回で十分理解出来るというのに。

元はと言えば、このガラテインが勝負などを持ち出したおかげでこんなことになっているのだ。私が密かにそう思っていると、ガラテインが先輩騎士に見ないように後ろ手で背中を殴ってきた。

ガラテインめ、これだけ説教されて未だ反省しないとは。

騎士の風上にも置けないこの男に反省を促そうと、私は後ろ手で思いっきりガラテインの脇腹をつねってやる。


「痛いだろう!」

「お前が先に殴ってきたのだろうが!」

「いい加減にしろ!」


修練場に響き渡る怒声と共に、再び先輩騎士の鉄拳が脳天を貫いた。


×××


「お前のせいで二度も殴られたではないか」

「それはこっちのセリフだ」


 互いに悪態をつきながら、王都のはずれにある丘に登る。

 本当に反省のない男だ。いつか私の頭部がみっともなく露見するとすれば、間違いなくこの男の反省が足りないせいであろう。

 本当ならば昼間に上るはずだったというのに、随分と日が落ちて夕焼けの美しい時間帯となってしまった。

これでは彼らにも叱られてしまう。

 丘を登りきったところに、一本の木がある。その木の前に突き立てられた剣が、私とガラテインが目指した場所に他ならない。


「すまない。ガラテインが叱られていたおかげで、随分と遅くなってしまった」

「待て、叱られていたのはお前だアイギス。皆、誤解しないでくれ」


 私とガラテインが責任の所在を明らかにしようとし始めると、葉が少しだけざわざわと揺れる。いかん。このままではまた叱られてしまう。そもそも、ガラテインと言い合いをするためにわざわざ王都のはずれに来たわけではないのだ。

 ガラテインは花の束を、私は必死で働いた五日分はゆうにするであろう高価な酒を、突き立てられた剣の前に置いた。両方とも、私とガラテインが二人で見繕ったものだ。

 また少しだけ葉が揺れた。今度は喜んでくれたのだろうか?

 そうだと嬉しいものだ。決して長い付き合いでこそなかったものの、彼らとは間違いなく友人であった。いや、今も友人であると思っている。

 無念であったのだろうか?

未来への希望を語り合ったこともある。

愛する者の話をしたこともある。

戦争から帰る頃には子供が生まれるのだと話していた者がいた。

戦争から帰れば、結婚するのだと話している者がいた。

美しい憧れの女性に、想いを伝えたいと言っている者もいた。

自分には愛する者も憧れる女性もいないが、いずれはそんな相手が出来るのだろうかと言っている者がいた。

武勲を挙げれば愛する相手など引く手数多だろうと、煩悩をさらけ出す者もいたな。

そんな希望も全部、死んでしまえば失われてしまう。

いや、過去に本当にあったことなのかさえ、確かに感じることも難しい。

無念だろう。

自分が幸せにするはずだった者に、哀しみだけ置いていくのだ。

それでも愛し続けてくれる相手がいる者もいるかもしれない。

そう遠くないうちに忘れ去られてしまう者もいるかもしれない。


「私は……」


 思わずつぶやいてしまう。

 彼らは、弱かったから愛する者との未来を絶たれたのだろうか?

死んでしまった彼らと生き残った私たちに、どれだけの違いがあるのだろうか?同じ見習い騎士で、実力なんてそう大差ない。

 何故彼らが死んで、私達が生き残ったのだろう。私など、守りたい相手より遥かに弱い男だというのに。


「どうした? 言いたいことがあるのなら言えばいいだろう」


 私のつぶやきが聞こえていたのか、ガラテインが言ってくる。

 そんなに聞こえるように言ったつもりは無いのだが……。それどころか、口に出しているつもりも無かった。耳に聞こえた自分の言葉に驚いたくらいだ。


「俺には、騎士王となる目標がある!」


 ガラテインが叫ぶ。

この男は基本的に何かを口にしていなければ死んでしまうのだろうか?

本当にうるさい男だ。


「言いたいことがあるなら言う。そう言ったのは俺だからな。」


なるほどなと思う。

一応筋は通っている。まあ、どこぞの山にいる猪の方がましかと思うくらいのまっすぐすぎる筋ではあるが。

目標か……。目標はある。いずれ守りたいと思う人がいる。

だが、彼女は私より遥かに強い。守るなど、おこがましいにも程があるだろう。それでも、彼女の哀しい顔を看たくないと思うのは間違いだろうか?

今、自分がおかしなことを考えているのはわかる。守りたい相手が守護神などと、いったいどんな冗談なのだという話だ。

それでも、口に出しておくくらいは許されるだろう。


「私には、守りたい者がいる。今はまだ弱くとも、いづれその者を守れる存在になりたい」


突き立てられた剣に向かって誓いを立てる。


「『守りたい者』? まさかお前、恋人でも出来たのか? その話、詳しく聞かせろ!」


 私が誓いを立てた途端、ガラテインが食いついてくる。

 誓いさえ静かに立てることが叶わんとは、この男はどうやら本当に口を開いていないと死んでしまうらしい。いっそ静かになるように私が縫い付けてやろうか。


「どうなのだ!? 教えろアイギス!」

「全く、本当にうるさい男だ。お前こそ騎士王が聞いて飽きれる。このようなうるさい男に誇り高い騎士王が務まるものか」


 私たちが再び文句を言い合っていると、またざわざわと木が枝を揺らす。

いい加減にしないと、彼らにまで拳骨をもらう羽目になりそうだ。

 手を合わせ、静かに二人で祈りを捧げる。

 先に死んでいった彼らに恥じるようなことは出来ない。

 彼らの分も、私達は戦わなくてはならない。彼らの生きたこの王国と、彼らの愛した者達を守るために。

そしてなにより、自らの愛する者を守るために。

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