第27話 隣国の王女様

 

 去年の夏ぐらい、だっただろうか。

 ゲームの中でこんな台詞が出てきた。

 

『大切な人が襲われてたらどうする?』

 

 主人公があまりにも名言っぽく言っていたので、自分達だったらどうする? なんて話をしていた。

 

「相手を倒す」

 

 と言ったのは修。

 

「殺すよ」

 

 物騒なのは優斗。

 

「落とし穴でも掘る」

 

 ちょっとずれたのは和泉。

 

「卓也は?」

 

 優斗に問われて、卓也は少し考える。

 

「オレは──」


 自分はどうするのだろう。

 修みたいに主人公キャラじゃないから倒せない。

 優斗のように大切な者のためならと躊躇なく殺せるわけもない。

 和泉の考えにだけは至れないけれど……。

 

 ──だとしたら。

 

 たぶん。

 この答えが一番自分らしい。

 

「──オレは守る。何があっても守り抜いてみせる。そうしたらお前らがどうにかしてくれるだろ?」

 

 そう言って笑顔を浮かべた。

  

 

     ◇    ◇

 

 

 10月に入りそうになった頃。

 用事のなかった優斗、卓也、修がアリーの部屋に集まった。

 

「「「 交換留学生? 」」」

 

「ええ。わたくしは昨日、その方とご挨拶をしたのですが……」

 

 何か困ったような表情をアリーが浮かべる。

 

「問題があるの?」

 

「……隣国のリステル王国第4王女様なのですわ」

 

「へぇ、また凄いのが来たね」

 

「わたくし一人では手に余りそうなので、シュウ様達にも手伝ってほしいのです」

 

 どういう意味だ、と誰しもが疑問になる。

 最初に卓也が問いかけた。

 

「まず、なんで王女様が来るんだ?」

 

「我が国との友好の一環として……と聞いてはいますが、情報の一つとして大事をしでかしてしまい、逃げるように留学してくるとも聞いていますわ」

 

「どんな王女なんだ?」

 

「良く言えば強気な方。悪く言えば……浄化されたラッセルでしょうか。とはいえ悪い方ではないのですわ」

 

 とアリーが言うものの、ラッセルの浄化版と聞かされた側としてはたまったものではない。

 修と優斗がため息を吐いた。

 

「……嫌な予感しかしねえんだけど」

 

「同感だよ」

 

 

 

 

 何はともあれ会ってみないと何とも言えない。

 ということで、現在は王様への挨拶のために王城の賓室にいる彼女に直接会うことになったのだけれども……。

 

「なに? あんた達がアリシア様の言ってた異世界から来た奴らってこと? 馬鹿っぽいわね」

 

 ショートカットで栗色の髪の毛。

 つり目で強気な表情。

 美少女と言って問題ない容貌。

 それに相まって似合っている声。

 だが、彼女は第一声でアリーが言っていたことを優斗達に納得させた。

 

「か、彼女がリステル王国第4王女リル=アイル=リステル様ですわ」

 

 アリーが冷や汗を浮かべながら紹介をするが、リルは無視して優斗達を吟味するように見回した。

 最初に目をつけたのは修。

 

「勇者はあんただっけ。顔は良いけどお兄様ほどじゃないわね。同じ勇者なのに気品からして違うわ。まあ、実力でもお兄様のほうが圧倒的でしょうけど」

 

 続いて優斗と卓也。

 

「他は所詮、異世界人だとしても庶民でしょう? 仲良しこよしで一緒にいるなんて吐き気がするわね」

 

 最初っから強烈なあいさつだった。

 修が頭を掻きながらアリーに尋ねる。

 

「こいつケンカ売ってんのか?」

 

「強気な性格なのです」

 

 諦めてるのか、何も言い返さないアリー。

 

「俺、面倒なんて見ねえぞ」

 

 修が興ざめしたように場を後にした。

 あまりにもあっさりとした退出にリルが、

 

「何よ、あれ。あんなのが勇者なんて信じられないわね」

 

 変なものでも見るような目つきで彼の後ろ姿を見る。

 いきなりの展開にアリーは慌ててこの場を終わらせる。

 

「と、とりあえずリル様が何かお困りになりましたら、わたくし達がフォローいたしますので。それでは、今日のところはこの辺で失礼いたしますわ」

 

 頭を下げてぞろぞろと部屋を出て行く。

 誰が何と言うまでもなく、大変なことになりそうなのは間違いなかった。

 

 

 

 

 先に出て行った修に皆が追いついて、先ほどのリルについて話をする。

 

「さっき彼女のお兄さんが勇者って言ってたけれど、修みたいに召喚されてるわけじゃないんだよね?」

 

「国によりけりなのですがリステル王国は代々、王の親族の中から一番優秀な者が勇者として選ばれるのですわ」

 

「一応訊いておくけど、俺よりも強いのか?」

 

「いえ、勇者といえどシュウ様たちみたいに異世界から来た利点、というものはございません。せいぜいわたくしよりは実力がある、といったところではないでしょうか」

 

「なんだよ。じゃあ、強いってわけじゃねーのな」

 

 あれだけ自信満々に言っていることだから、さぞ強いのだろうと思っていたのだけれども拍子抜けだ。

 

「……シュウ様。シュウ様とユウトさんが例外的なだけで、わたくしとて国の中では強いほうなのですよ」

 

 基本属性の上級魔法を全て使える人間などそうそういない。

 呆れたアリーに修がごめん、と謝る。

 

「王女様についてはどうするの?」

 

 優斗の問い掛けに修は手を横にふり、無理無理と示す。

 

「あいつの面倒見るなんて俺は却下……っていうか、面倒を見切れるのはアリー、クリス、優斗、卓也ぐらいだろ。他の奴らだったら何かしらでキレるぞ」

 

「かもしれませんわね」

 

 表面上で取り繕うのが上手いのが、この四人だ。

 

「じゃあ、オレ達で何かあったら対応するしかないか」

 

 卓也としても問題ごとは起こしたくない。

 すると優斗が残念そうに卓也の肩を叩き、

 

「けど基本は卓也が担当だからね」

 

「はっ? 何で?」

 

「だって一番暇なのが卓也だよ」

 

 名前を挙げた面子を考える。

 アリー、王族。

 優斗、育児。

 クリス、結婚云々。

 卓也……特になし。

 

「あ~、確かにオレしかないか」

 

「なるべくフォローはするけど、基本は頼んだよ」

 

「はいよ」

 

 とはいえ、あの高飛車なお姫様のお守りをしなければならない。

 吐く息が重くなってしまうのは仕方がないことだろう。

 

 

     ◇    ◇

 

 

 そして予想通り、毎日が本当に大変だった。

 リルが同じクラスというのはこちら側の配慮なのだが、やっぱりというかなんというか、かなりの問題児だ。

 隣国のリステルでは侍従も校舎の中に入れるらしいが、リライトでは認められていない。

 何をするにも一人でするしかないのだが、生粋のリステル育ちであり王女のリルはあれだこれだと文句を言う。

 少なくとも卓也は従者のごとく、本当にこき使われていた。

 他国の王族だからこそ許される振る舞いでもあるが、他国に来ているのにこの振る舞いをしているというのはいささか空気が読めないとも思える。

 

 

「飲み物がないわ!」

 

「すぐに用意します」

 

 

 

「もっと美味しい食べ物はないの!?」

 

「すみませんが他にないので、これで我慢してください」

 

 

 

「服が汚れたわ」

 

「すぐに用意するのは難しいので、申し訳ないけどアリーなどに言ってもらってもよろしいでしょうか」

 

 

 

 

 などなど、一週間。

 優斗もアリーもクリスも疲れているが、卓也がその中でも一番に疲れていた。

 週の後半からは基本的に卓也が呼ばれるようになった、というのも原因だ。

 

「お疲れ。ほんとに大変そうだわな」

 

「俺達が言っていいかどうかは分からないが、災難だな」

 

「お疲れさまです」

 

 修と和泉とココが卓也達に飲み物を持ってきてくれた。

 

「基本的には卓也任せになったとはいえ、不意打ちがあるから気は抜けないんだよね」

 

 優斗が苦笑し、それぞれが疲れた様子を見せながら飲み物に手を伸ばす。

 

「何でもやってもらう、というのは貴族や王族の基本ですからね。自分もここに入ったときは苦労しました」

 

 クリスも今では料理でも何でもできるようになったが、やはり大変ではあった。

 

「私やココさんは親が貴族としては変なほうに入るので色々とやらされていましたが、普通はクリスさんのような方々ばかりですから。リル様もそうなんだと思います」

 

 フィオナのリルに対するフォローが入る。

 

「郷に入っては郷に従え、みたいなことわざがあることを知らねぇんだろうな、あいつ」

 

 修の言葉に全員でため息をつくが、張本人は窓際の席でぼんやりと外を見ている。

 そして胸元でペンダントのようなものを握っていた。

 が、ふと周囲を見回し、

 

「タクヤ!!」

 

 名前を呼ばれて卓也がげんなりする。

 

「頑張って行ってこい」

 

 修に背中を叩かれ、しぶしぶながらリルの席へと向かった。

 

「何か用でしょうか?」

 

「あんた達、明日は暇なのよね?」

 

 リルの視線の先には優斗達がいる。

 

「全員暇かと言われたら分からないです」

 

「じゃあ、生徒会長は暇なの?」

 

「それも聞いてみないと分からないですね」

 

「まったく、使えないわね」

 

 あまりにも理不尽な物言いだが、卓也は心の中で忍耐の二文字を浮かべる。

 

「時間がある人は明日、あたしの家まで来なさい。馬車を出して特別にお兄様と会わせてあげるわ」

 

「なんで俺達まで一緒に?」

 

「護衛は必要でしょう? 少なくとも王族であるあたしが出かけるんだから」

 

 



 卓也は席に戻り、仲間達に今言われたことを伝える。

 

「なんてことを言ってたんだけど……」

 

「うわっ、行きたくねぇ。つーか、何であれだけ傍若無人に出来るんだ? アリーとか三大国の王女だろ?」

 

「シュウ様。気持ちは分かりますが口に出さないでください。それに三大国と言っても圧迫的なことは何一つしてないので、変にへりくだることもないのですわ」

 

 とはいっても、リルは結構酷い部類だ。

 

「申し訳ありませんが、自分は婚約者と会う予定があるので……」

 

「わたしも予定があります」

 

 クリスとココが頭を下げる。

 けれど優斗は逆に、

 

「なんか嫌な予感がするし、僕は行こうと思う。フィオナは悪いけどマリカのことお願い」

 

「まーちゃんについては分かりましたが、嫌な予感……というのは?」

 

 フィオナはもちろんのこと、周りも疑問に思った。

 

「なんでこっちに来て1週間しか経ってないのに王子と会おうとするのか、ということ。アリーが言ってた『しでかした』っていうのが事実だとするなら、問題がこっちの国にまで来たら厄介だし」

 

「ただのブラコンじゃねーの?」

 

「修のがベストの回答。あくまで最悪のことを考えたのがさっきのやつ。というわけで修も嫌だろうけど来てね」

 

「……しゃーねーな」

 

 修が頭を掻きながら、しぶしぶ了承する。

 

「わたくしも念のため、一緒に行こうと思っていますわ」

 

「俺も行こう」

 

 アリーも優斗と同じ考えなのか同行の意思を示し、和泉も暇だからという理由で付いて行く。

 

「でしたらクリスさんもいませんし、是が非でもレイナさんには来てもらわないといけませんわね」

 

 アリーがからかうと和泉を除く全員が笑った。

 

 

       ◇      ◇



 放課後になり、レイナの了承も取れて一安心した卓也……ではあったのだが、まさかそのあとにイベントがもう一つ起こるとは予想だにしていなかった。

 

 ――どうしてオレがお姫様と馬車に乗って、買い物へ行かないといけないんだよ。


 正直、意味が分からないし理解ができない。

 リルの言い分としては、兄と明日会うための服を買いたいらしい。

 卓也としては勝手に買えばいいと思っているのだが、彼女は平然と宣ってきた。

 

『女性視点での衣服と男性視点での衣服は違いがあるわ。王女であるあたしの服を選ぶ栄誉をあげるのだから感謝しなさい』


 卓也としては別に感謝したくもないし、そもそも服を選ぶことはココだのアリーだのと一緒に選んだことだってある。

 つまり王女の服を選ぶことはやったことがあるわけで、今更すぎて栄誉でも何でもない。


 ――しかも趣味趣向が分からない相手の服を選ぶとか、無理難題すぎるだろ。


 彼女の兄の好みなど知らないし、彼女が気に入る配色なども分からない。

 かといって、どうせ外せば罵倒し怒ってくるはずだ。

 

 ――気が滅入ってくるな。


 卓也もワガママと呼ばれるものには一応、慣れている。

 修や和泉、ココなどは甘えてくるワガママを言うことが結構あるからだ。

 もちろんこれは自分達の特殊な関係性によるものだから、卓也は時に呆れながらも喜んで彼らを甘やかしてしまう。

 しかしリルは違う。

 完全に他人であるというのに、こちら側を考えることなく堂々とワガママを言ってくる。

 できるなら誰かに代わりたいものだが、この一週間でリルのお気に入りになったのは卓也だ。

 けれど、そのことに対して一種の責任感を持ってしまうのも卓也たる所以なので、余計に雁字搦めになっていた。


「タクヤ、着いたわよ」


 リルが声を掛けてきたので、卓也は彼女と彼女の従者と一緒に馬車から降りて店へと入る。

 途中、従者の一人が可哀想な視線を送ってきたので、さすがに無茶ぶりだと同情してくれているのだろう。


「好きにコーディネートしなさい。もしサイズが無かったら、別に似合う組み合わせを選びなさい」


 好き放題に言うリルは、さらにトドメとばかりに、


「本気で選ばなかったら怒るわよ」


「分かりました」


 卓也は面倒臭そうな表情を一切出さず、素直に頷いた。


 ――しょうがないから、やるとするか。


 もう選ぶことについては諦めた卓也。

 なので意識を切り替えて考えを纏め始めた。

 卓也も一応、こっちのファッションについても少しずつ分かってきている。

 基本的に王族や貴族は落ち着いた服装を好み、過剰に素肌を出す服装を着ない。


 ――かといって、ごってごての古くさい貴族ファッションも好きそうじゃないんだよな。


 スカートの中に人が入れそうなほど膨らんだドレスを、普段から着るイメージもしない。

 かといってフィオナやアリーが好む服装を選べばつまらないと怒られそうだ。


 ――怒られる可能性のほうが圧倒的に高いんだから、最初の一発目は少し冒険してみるか。


 店内にある数ある服を確認し、組み合わせを考える。

 そして頭の中である程度まとまると、リルにサイズを確認して淀みなく衣服を手に取っていった。

 と、卓也が手に取った中でリルの目に留まったものがある。


「……ネクタイ?」


「こっちではまだ見たことがないですけど、オレ達がいた世界には制服やファッションの一つとして女性がネクタイをすることもあります」


 卓也は手に取った白のブラウスと瑠璃色のフレアスカート、ネクタイをリルに渡す。


「襟付きの服を着るのも初めてだわ」


「うちの制服も女性は襟があるわけじゃないですからね。だから申し訳ないですけど、高貴さとか気高さを醸し出すような服装じゃないです」


 とても一国の王女が着るような服装ではないと卓也は思う。


「じゃあ、どうしてこれにしたのかしら?」


「似合うと思ったから選んだだけです」


「……ふぅん。なるほどね」


 別に奇を衒ったわけでもなく、虚を突こうとしたわけでもない。

 挑戦はしているが、似合うと思ったからこそのチョイス。

 卓也としてはあれこれと文句を言われる覚悟は持っていたが、驚くことにリルは渡された服装を持って素直に試着室へ入っていった。

 そして数分後、カーテンが開くと卓也と従者が感嘆の声をあげる。

 決して王族が普段着るような服装ではないが、それが似合わないかと問われれば違うと即答できるほどだった。

 卓也も似合うと思っていたが、これほど問題ないとは思っていなかった。


 ――まあ、顔は美人だからっていうのもありそうだけどな。


 さぞ美姫と呼ばれているのだろうと実感できた。


「あんた達の反応を見る限り、似合ってるのは分かったわ」


 リル本人も鏡を見て、自分の姿を確認する。

 確かに普段は絶対に着ない服装ではあったが、それでも自分自身で似合わないとは思わなかった。

 服の色合いは大人しく、どちらかと言えば清楚な令嬢が好みそうだがネクタイが良いアクセントになっている。

 

「悪くないわ。このまま買ってあげる」





 リルの買い物が済むと、卓也は店の前で別れて一人歩いて寮へと帰る。

 そして考えるのは明日のこと。


 ――優斗があんな風に言ったってことは、何かしら問題があるって気構えを持っておいたほうがいいか。


 なぜリルがリライト魔法学院へ留学をしてきたのかは分からない。

 正直なところを言えば興味がないし、藪を突くつもりもない。

 それに他国を巻き込むつもりであるなら、すでにアリーが聞いているはずだ。

 つまりリステル国内での問題か、リライトが関係ない他国との問題ということになる。


 ――なんていうかホント、面倒なお姫様が来たもんだよな。


 特に自分は一番関わっているだけに、余計にそう思ってしまう。

 ワガママで横暴、加えて自己中心的な性格。

 しかし咎めるつもりはないし、怒るつもりもない。

 元よりリライトにいるだけの間は問題が起こらないように配慮するのは当然のことだし、性格など生まれ育ちによって定まっていくものなのだから、彼女がワガママであることも彼女自身が全て悪いわけではない。

 だからといって相手をするに情状酌量の余地があるとは思わないが。





 一方、リルも馬車の中で明日のことを考える。

 

 ──明日、お兄様から朗報が聞ければいいのだけれど。

 

 一週間でどこまで事情が変わるのかは分からないが、それでも朗報があるかもしれない。

 そうすれば自分がリライトにいる理由の一つが無くなるのだから。


 ――お兄様はあたしが安全のために留学したと思ってるみたいだけど、お父様は絶対に他の理由をあるわよね。


 おそらくは見識を広げるためにも、今回の事件は丁度いいと思ったはずだ。

 でなければわざわざ学院に通わせる必要がない。


 ――今回の件以外にも、問題はあるわけだし。


 だからリルの凝り固まった考えを少しでも柔らかくできるよう、リステル王が配慮した面もある……のかもしれない。


 ――だけど、まあ……リライトでの日々も最悪だとは言えないわね。


 他国での生活は最初に考えていたよりも良い面があった。 

 そしてふと、リルは卓也のことを思い浮かべる。

 

 ──タクヤぐらいは一度、リステルに来させてやってもいいわね。

 

 丁寧に話したりはできないが、この一週間は従者のように働いてくれている。

 当然だとは思うが、他国で受けた恩だ。

 返してやるのが礼儀であり、王族の義務というものだろう。

 

 ──どうしようかしら。

 

 胸元のペンダントを握り締めながら、リルは思いにふける。

 そして不思議と小さく笑みが零れた。

 

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