第11話 訣別

 翌朝にはスペイギールの熱も下がり、寝台から起きあがって雑穀の粥を食べられるまでに回復した。足どりは覚束ないものの、顔には血の気が戻りつつあった。

 朝食を摂り、薬湯を飲んで一休みしたスペイギールから招集がかかったのは、秋の太陽が真南を指す時刻だった。正門前の広場で野営をする兵士たちの炊き出しの煙が、菩提樹の古木を越えて空へと登っていく。

 村人の手を借りることで多事多難の危機は解消されたものの、必然、和平が失敗に終わり、国王軍が侯爵領内へ侵攻していることが村中に知れ渡った。村と修道院を忙しなく行き来する村人の顔にも、不安の色がこびりついている。

 部屋へ入ると、スペイギールは椅子に腰かけ、背もたれに身体を預けていた。

 エオルゼに気づくと、目が大きく見開かれる。

 エオルゼ、と言いかけたくちびるは、すぐに堅く閉じられた。碧い瞳が肩の上で切りそろえたばかりの髪に注がれるのを感じた。


「そろいました」


 室内には四晶家の長とセインが集まっていた。

 ヘリオス家と四晶家は一心同体で、有事の際には必ずこの五人がそろうのが慣例だが、ガレン城砦へ出かける前とは顔ぶれが変わった。幾度か経験していることとはいえ、慣れるどころか痛みばかりが積もる。

 スペイギールはうなずくと、エオルゼからセインへ視線を滑らせた。ダシュナ、ヴェルナー、ラズウェーンを順に見上げ、そして自分の膝に目を落とす。

 碧眼が青白いまぶたに覆われる。

 苦い沈黙だった。

 しばらく瞑目したあと、スペイギールの手がおのれの首をなぞった。節が目立つようになってきた指で喉の隆起を探り、ゆっくりとあごの下を滑ると、みずから首を掴むように手のひらを広げる。


「ラズウェーン」

「何でしょう」

「……おれの首ひとつで、この戦いは終わるだろうか」


 悪寒がエオルゼのつま先から脳天までを一気に貫いた。床が崩れ落ちて地面に呑みこまれていくような錯覚に陥る。


「っ、ギー……」

「いいえ、アルトゥール様がいらっしゃいます」


 ラズウェーンの強い言葉に、エオルゼはこぼしかけた悲鳴を押し戻した。


「スペイギール様の次は、アルトゥール様です。ジャン=ジャックも、ダライアスも、ヘリオスを根絶やしにするまで決して諦めません」


 エオルゼは両手を組み、震えを抑えようと力をこめた。

 ラズウェーンの言うとおりだった。

 スペイギールが彼らに命を差し出しても、ヘリオスにはまだアルトゥールがいる。四晶家はアルトゥールを主君として擁立するし、国王もエウル=ヘリオスも幼子を次の標的とする。スペイギールが当主になったときと同じだ。

 エオルゼに懐いてくれた小さなアルトゥール。幼い頃のスペイギールにそっくりで、少し泣き虫で、甘い匂いのする愛らしい子ども。

 彼が頼れるのは、この世にはヘスティアとスペイギールしか残されていない。

 スペイギールがいなくなったら、三歳の子どもにいったい何ができるだろう。

 スペイギールはラズウェーンを見上げたまま、苦しげに顔を歪めた。

 アルトゥールの顔を知らなければ、ラズウェーンの説得は響かなかったかもしれない。しかし、スペイギールは兄の唯一の忘れ形見を知ってしまった。


「みずから首を差し出すことだけはしてはなりません。戦うか――逃げるかです」


 スペイギールはおのれの首を掴んでいた手を下ろした。背もたれに体を預けて天井を仰ぎ、苦悩に染まる顔を腕で覆い隠す。言葉にならない呻きが噛みしめたくちびるの隙間からもれた。

 窓の外でシジュウカラが鳴いていた。

 厨房では昼食の支度をしているのだろう、扉の隙間から煮炊きの匂いが忍びこんでくる。鳥が飛び立つとともに枝が揺れ、黄葉した葉がはらはらと落ちていく。

 誰も口を開かなかった。急かすことも、迫ることもしなかった。

 それは四晶家の役目ではない。すべての決定権は、六人の中でもっとも若いスペイギールが持っている。

 やがて、おもむろにスペイギールの腕が下りた。

 天井をじっと見上げたあと、頭を起こす。


「……大司教とトビアス殿を呼んでくれ」


 セインが呼びに向かうと、彼らはすぐにやってきた。

 二人の顔を認めると同時に、スペイギールの眉間に刻まれたしわがいっそう深くなる。


「スペイギール様、ご体調はいかがですか」

「ありがとうございます。熱は引きました」


 空々しげなやりとりのあと、すぐに沈黙が落ちる。

 彼らが何を期待しているのか、何のために駆けつけたのかは、スペイギールも承知しているはずだ。二人は無言で少年の答えを促す。

 二つの視線を一身に受けとめながら、喉の奥を絞るようにスペイギールは言葉を紡いだ。


「――おれは、このまま山を越えて国を出ます」


 彼らがどう捉えたのか、エオルゼにはわからなかった。感情の揺らぎは二人の表情にもわずかな動作にも表れなかった。


「カールステット侯爵家にも、エングラー大司教にも、このゲルツハルトにも長く世話になってきたのに、こんな結果を招いてしまって本当に申し訳ありません。おれはヘリオス家当主として、陣頭に立って国王軍に立ち向かうべきなのかもしれません。けれど――これ以上抵抗して、何の意味があるだろう」


 ぐしゃり、とスペイギールの表情が崩れる。


「こんな事態に陥ったのはおれの責任です。おれがすべて悪いのはわかっています。この首を差し出して敵の気が済むならそれでいいとも思いました。けれど、それでは何の解決にもならない。このまま戦ってもヘリオスは負けます。おれは……、おれは、負けるとわかっているのに戦えと命じる勇気を、持っていません。あそこで煮炊きしている兵におれのために死ねとはとても言えない」


 スペイギールの膝の上で組まれた手に、爪が食いこむ。

 それでも、正対する二人から目を反らすことはしなかった。


「トビアス殿も、大司教も、投降してください。敵の目的はおれの首だから、情報を売れば交渉の余地はあるかもしれません。……こんなことでしか恩を返せなくて……」

「戯れも大概になさい!!」


 怒声が鞭のように少年を打ちすえた。

 エングラー大司教だった。彼は髪の毛を逆立てながらスペイギールに詰め寄った。


「我らを侮るとは、いくらスペイギール様でも許しがたい。私が命惜しさにラスミアの敵に膝を折るとお思いか。私はダライアスになど屈しない。ここで主の尊厳のために最後まで戦う!」

「そんな、死ぬ必要はありません。女神もそんなことは望んでいないはずだ」

「あなたに主について語る資格はない!!」


 雷撃のようにその声は室内に轟いた。

 全身をぶるぶると震わせ、顔を怒りで真っ赤に染めながら、エングラー大司教はスペイギールを睨めおろす。


「私がお支えしてきたヘリオス家の方々は皆、主の末裔として誇り高き人だった。彼らは主から綿々と繋がれてきた血統を保つため、父祖の名誉を守るために、おのれの命を顧みずにヘリオスに尽くした高潔な方々だった。だというのに、残ったあなたはおのれの家族が眠るこの地さえ捨てて、自分だけ安全な場所に逃げると言う。私は――イグナーツは主のために命を捧げたというのに、こんな臆病者が生き残ってしまった……!」


 大司教はわななきながら、逆巻く激情に耐えかねて両手で顔を覆った。

 エングラー大司教のそうした姿を見るのは、エオルゼでさえ初めてだった。

 イグナーツをスペイギールの従者に推薦してきたことから、よほどの自慢の息子なのか、それともスペイギールと親密な関係を築くための策かと考えたが、普段彼がイグナーツを甘やかすところは目撃したことがなかった。父子というより、師弟の方が受ける印象は近い。

 イグナーツは父親の言いつけを守り、よくスペイギールを支え、あるいは手本となった。

 スペイギールも同年代の彼を好ましく思っていた。最後までイグナーツを引き止めたのはスペイギールだけだった。

 胸を抉るような涕泣は、わずかのあいだだった。

 エングラー大司教はすぐに手を下ろして、スペイギールをひたと見据えた。そこにはもはや、ヘリオス当主への敬愛の念や忠誠はひとすくいも残っていなかった。


「あなたはおのれのことしか頭に無い、心の貧しい人間だ。ヘリオスに仕えた者、命を賭した者すべてが、あなたに失望し、おのれの選択に後悔するだろう」

「……口が過ぎるのではないですか、エングラー殿」


 ラズウェーンの低い声がした。大司教の視線がスペイギールからラズウェーンへと移される。


「私は事実を言っているまで。スペイギール様はヘリオス当主の器ではなかったのですよ。もはやアダール様で主の血筋は断絶してしまったのです」

「口を慎めと言っているのだ、エングラー殿」


 ラズウェーンが距離を詰め、目を鋭く細めた。鋭利な視線は獣の牙のように大司教を向く。


「ヘリオス当主として、スペイギール様のご決断は正しい。我らは貴殿らのように、たやすく命を投げ出してよい身ではないのだ。名誉よりも血の存続を――それが我らの使命である。一聖職者である貴殿に侮辱される謂われはない」 


 しかしエングラー大司教は怯まなかった。ラズウェーンの牙におのれの矜持の獣で対峙する。

 彼にはもはや憎悪さえ生まれていて、今にもラズウェーンの喉笛に噛みつかんばかりだった。

 息をすることさえ憚られるような緊張が部屋に張りつめる。

 エオルゼは気配を殺してなりゆきを見守った。もし事態が動いたときにはすぐに対処できるよう、神経を尖らせながら。

 やがて、ふ、と大司教が剥いていた牙を収めたのがわかった。

 争っても無駄だと断じたのか、不利だと思い出したのか。どちらかは判然としなかった。


「私は私のやり方で戦う。王やエウルに媚びるつもりはないし、あなた方がどこへ行こうと私の知ったことではない。勝手になさるといい」


 それが訣別だった。彼は法衣の裾を翻すと、二度とスペイギールの顔を見ることなくその場を立ち去った。

 気配が遠ざかっていくのを確認してから、エオルゼは研ぎすませていた感覚をほどいた。

 見ると、スペイギールの顔色は蒼かった。まるで意志を奪われたかのように一点を見つめて動かない。

 まばたきさえ忘れてしまったのではと思わせる彼の前に、なりゆきを静観していたトビアスが進み出た。凍りついていた双眸がぎこちなく男を見上げた。


「……私もここで国王軍に抗戦します」


 トビアスの横顔は穏やかだった。

 たとえその表情の下では義憤や瞋恚が火を噴いていようと、それを今スペイギールへぶつけようとする意志は見られなかった。


「この地を治める侯爵家の者として、あるいはヘリオスを支え続けた父の子として、我が身惜しさに国王に膝を折るつもりはありません。心優しいスペイギール様には愚かに映るでしょうが……、これが我々の生き方なのです」


 トビアスは、言葉を失うスペイギールへ微笑みかけた。


「ヘリオスの家臣団のみでは心許ないでしょう。わずかですが、兵をお貸しします。必要な物資もどうぞお持ちください。もちろん、国王側に情報を流すこともいたしませんのでどうぞご安心を」


 スペイギールは言葉を探して何度かくちびるを開きかけたが、見つからないままきつく結び、深く頭を下げた。


「……本当に、申し訳ありません……」

「どうか謝らないでください。スペイギール様のご決断もまたひとつの道なのだと、承知しております」


 振り向いたトビアスに、ラズウェーンが頭を垂れた。エオルゼたちもそれに倣う。


「心より感謝申しあげる、トビアス殿」

「いいえ、あなた方に頭を下げていただくほどのことはしておりません。数十の兵など気休めにしかならないでしょう。それで、いつ出立なさいますか?」


 ラズウェーンが顔を上げて応じる。


「スペイギール様にお休みいただきたいので、明日の夜。ちょうど月の無い夜です。満ちる前に森へ入れば、敵の追跡も難儀するでしょう」

「承知しました。ではこちらも用意いたします」

「よろしくお願いいたします」


 トビアスが辞去すると、ラズウェーンは目だけで四晶家を集めた。何が行われるのかはエオルゼも充分理解していたので、セインにもそばに寄るよう促す。


「では、今後についてだが」


 はい、とそれぞれがあごを引く。ラズウェーンはすみやかに指示を始めた。


「まずはヴェルナー、おまえは今夜発ち、アルトゥール様とヘスティア様を保護しなさい。同じ村にバルクの妻子も住んでいる。彼女らを連れてそのまま山を越え、北方のキヌリ国へ入れ。ラトという町で落ちあおう」

「わかりました」

「ほかの者には鳩を飛ばす。我々がキヌリへ向かうことを知らせ、機を見て山を越えさせる。今は何よりもスペイギール様の御身が最優先だ」


 ラズウェーンの言葉にエオルゼは首肯する。

 母が住む村のありかを知る者は少なく、均された道さえ通らない森の奥に位置するので、よほどのことがなければ敵に見つかる可能性は低い。そして彼女を保護するために割ける人員は余っていない。

 気がかりではないと言えば嘘だった。けれども、今できることは自分たちを育んでくれた森や村人を信じることだけだ。

 ラズウェーンも息子の忘れ形見を置いていくのだから、蓋をした感情はエオルゼだけのものではない。


「ダシュナとエオルゼは、私とともにスペイギール様の護衛をする。セインもだ。国境越えは厳しい道程になるだろう。充分に備えをしなさい」

「はい」


 スペイギールはひとことも発さず、顔を俯けたまま彫像のようにじっとしていた。

 近づいて様子をうかがうと、額は水を被ったかのように汗で濡れていた。顔は蝋を塗りたくったようで、固く握りしめられた手はひどく冷たい。爪の先は血で赤く染まっていた。

 スペイギールを寝台へ横たわらせて、ひとまず散会となった。

 エオルゼは部屋へは戻らずに、階下へ薬を取りに降りた。傷口に塗る軟膏は厨房の棚に常備されているので、わざわざ施療院まで足を運ぶ必要はなかった。

 軟膏を確保すると、井戸へ向かう。

 手桶を水でいっぱいに満たしたとき、回廊に明るい色がひらめいて顔を上げた。

 水色のガウンと、既婚女性の証しである揃いの頭布。胸には金の星護符が慎ましやかに輝き、長い裾が回廊の床の上を淑やかに滑る。厳かな修道院に不釣り合いな色彩は、まるで荒野に咲いた一輪の花のようだ。

 それはトビアスの妻だった。

 エオルゼが桶に手を添えたまま動けないでいると、彼女も自分を射貫く視線に気づいて足を止めた。そして井戸端に佇むエオルゼを見つける。

 美しい人だ、と思った。歳はエオルゼと同じくらいか、少し上だろうか。

 北の生まれなのだろう、肌は大理石のように白くなめらかで、目が覚めるようなくちびるの赤さが目立つ。双眸は湖の青、頭を覆う布からのぞく髪は白金。

 昔、母から聞かされたおとぎ話に出てくる冬の国の王女を思い出す。

 どちらからも声をかけることはなかった。

 どれほど相手を見つめていたか――やがてトビアスの妻が軽く会釈をしたので、エオルゼも会釈を返した。

 彼女は、貴賓室のある修道院長の館から聖堂の方へ、ひとりで歩いていった。付き人もいない。

 カールステット侯爵邸から連れてこられたのは侍女が一人で、おそらく夫を失って動転している夫人につきっきりなのだろう。

 追いかけるべきか迷ったが、院内ならば危険はないと判断した。エオルゼもやらなければならないことが山積している。


 水を湛えた桶を持って厨房へ戻りながら、エオルゼはぼんやりと彼女のことを想った。

 洗面器や水差しを満たし、残りは水甕へ移す。棚に何か作り置きのものはなかったか確認し、残っていたビスケットやスペイギールの好きなくるみを手巾に包んだ。

 エオルゼは部屋へ戻ると、スペイギールに付き添っていたラズウェーンと交代した。水差しや洗面器を机に置き、寝台のそばに椅子を寄せる。


「手を見せてください」


 つ、とスペイギールの双眸がエオルゼを向けられた。

 が、なかなか要求に応えようとしてくれない。頑なに両手を布団の中に隠したまま、瞬きを忘れた目だけがエオルゼを映す。


「……ギール様のせいじゃありません」


 エオルゼは微笑んだ。

 ゆらりと一度視線を彷徨わせて、エオルゼを視界から追い出す。


「手を見せてください。ただの軟膏ですから、痛くないですよ」


 子どものようにあやされていると感じたのか、スペイギールは渋々と手を差し出した。手のひらや爪はすでに洗われていて、体液に潤んだ傷が生々しく皮ふを裂いていた。

 スペイギールの手は、いつのまにかエオルゼよりずっと大きく成長していた。

 指も太く、節が目立ち、手の甲もごつごつとしている。爪が欠けているのは自分で自分の皮ふを抉ったせいか、それともずっと前からなのか。

 そして添えたエオルゼの手も同じだった。

 指の皮ふは逆剥けているし、すり傷も多く爪も欠けている。秋になってから乾燥してきて、手の甲は魚のうろこのようにざらざらとしていた。


(……ひどい手)


 たとえば――たとえば彼女の手は、聖堂に飾られる女神の像のようにたおやかで美しいのだろう。触れることさえためらわれるような儚げなそれで、夫を慰め、寄り添うのだろう。


 腰袋に入れた軟膏を取り出し、人差し指で掬う。

 改めて見れば、スペイギールの指の腹も手のひらも、特定の場所が固くなっていた。

 エオルゼにも同じ場所に肉刺がある。剣を握り、弓弦を引き、槍を振るってきた跡が。


「――あなたの判断が間違っているとは思いません」


 そっとささやき、傷口に薬を塗りこむ。


「わたしはギール様に従います」


 スペイギールの反応はなく、黙りとしていた。

 エオルゼは軟膏を塗り終えると、清潔な布で傷口を保護した。


「出立までゆっくり休んでください。キヌリまでは遠いですし、山を越えないといけませんからね。お腹は空いていませんか? ビスケットやくるみを持ってきましたけれどどうですか? それとも、なにか温かいものを作ってきましょうか」


 スペイギールは顔を背け、ふるりと横に振った。


「何か食べたくなったらいつでも言ってください。しばらくここにいますから」

「……うん」

「水もありますからね」


 かすかにうなずくと、スペイギールは力尽きたようにまぶたを下ろした。エオルゼに背を向けると、手足を折って胎児のように丸くなる。

 エオルゼは静かに寝台を離れ、椅子を窓辺へと移した。

 鼻先をくすぐっていた昼食の匂いはどこかへ消え失せ、窓からは煮炊きの煙も望めない。修道院と村を隔てる木立の向こうには、落葉を始めた菩提樹の頂きが寂しくのぞいていた。

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