四季檻々
じゃあ、またね
ピースをして写真を撮って、それでおしまい。
お互いの行く先を願ってシャッターを切った。
1年後見返した時、どれほどの懐かしさと残像が残っているのか、今の私にはまだ理解できない。
この桜の色を、匂いを、君の理想を、どれほど覚えているのか今の私には想像がつかない。
それでも写真に映りこんだ桜は確かに生きていて、これでもかと生きていて、それでいて散って逝くのが未来の私には理解できるのだろう。
出会いの春、別れの春。
淡いピンク色がその涙に乱反射した時、君も私も別れの意味を理解した。
確かに新しい出会いは楽しみだ。
でも君と会った春は楽しくて、君と遊んだ夏は楽妙にワクワクして、君と涼んだ秋は微かに愛を感じていて、冬は、冬は。
ただの高校生が季節を語るなんて本来烏滸がましいのだけれど、君と過ごした春だけが3回だけあって、次の季節を君と迎えられないことに夏を嫉妬した。
元気でね
君は笑いながらそう言った。行った。
人生の6分の1を君と過ごしたのに、別れるのは一日の6分の1も要らなくて、卒業式が短すぎることを呪った。
未練がましい私は君の背中に呟いた。
君が好きだったんだよ
春風に吹かれたその言葉は君に届いたのか、君が振り返った気がした。
君の顔が桜のせいで見えなかった。
ありがとう。桜を感謝した。
今君の顔を見られたら桜色のチークも崩れてたはずだから。
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