愚鈍

学校生活の慣れた2年の、年始に慣れた6月の梅雨。

決して強いとも言えない、決して寒いとも言えないなんとも寝ぼけた天候は風に流されてきた。


ぱらぱら、と窓越しから聞こえる音を目をつぶって在りかを探る。

傘の反射する音?

アスファルトに打ち付けられる音?

それとも美しく咲いた紫陽花の抵抗か。

心なしか普段より大きく聞こえる教室の曇り声は正しく梅雨を表していた。


深く、より一層して目をつぶり自分の殻に籠る。

自然とは相容れない人の人という声は僕にとっては雑音も同じだった。

黙ってほしい。

風が唸り雨が音を上げ梅雨という季節を創造していくように、僕もまたそんな愚鈍な季節にのっとって愚鈍な考え方をしてしまうのだ。

しかし、だがしかしこれは。

故に人の声もまた梅雨、延いては自然の一部であり、それを拒絶することで愚鈍な梅雨を受け入れていた。


これもまた梅雨である。

なるほど、うん、これは悪くない。

どこか安心して眠気に誘われようとすると、また教室の隅から今度は澄み声で聞こえた。


見て、虹だよ


やっぱり喧しい。

僕は目を開け窓のほうを見た。

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