第3話 2人の人狼
ここはとある森の奥、あらゆる生き物が集まるところ。
おや?何やら言い争っているようですね…
黒「さぁて、今日は誰を襲おうか」
碧空「誰も襲わなくていいだろ」
黒「いやいや、腹が減っちまうだろ?」
碧空「ならネズミで充分だろう?なぜわざわざ人を襲う」
黒「そんなの決まってるだろ?あの悲鳴を聞くのがいいんだよ」
碧空「全く…理解できないね」
黒「お前こそ人狼の癖してなんで人を襲う事を嫌うんだ?」
碧空「誰かが悲しむのを見たくない」
黒「へっ、まぁいいさ、いつまでもそんなことは言ってられねぇ、あとで後悔すっからな、それ」
碧空「覚悟の上だ」
黒「どちらにせよついてきてもらうからな」
碧空「分かっている」
そう言うと2人の人狼は少し山を降りたところにある小さな家に向かいました。
そこにはおばあさんが1人住んでいて、1週間に1回ほど誰かが様子を見に来ます。
ですがそれ以外に人が来ることはほぼ無いのでその家のおばあさんを狙おうという算段です。
黒「さぁて、じゃあ行くか」
碧空「……」
2人の人狼のうち1人が家の中に音もなく忍び込んで行きます。
しばらくすると一つ、悲鳴が聞こえて来ます、恐らくおばあさんが殺されたのでしょう。もう1人の人狼はあとから家に入っていきました。ですが仲間とともに死体を捕食するためではありません、再生能力を持った人狼の血液で生き返るかもしれない、そう思ったからです。
先に入った人狼は既におばあさんを食べていて、後から来た人狼に気付きません。
あとから来た人狼はゆっくりともう1人の人狼に近づき、そして大きく顎を開いて肩を食い千切りました。
黒「いってぇな…何すんだよ…」
怒った口調でそう言いました
碧空「死にたくなきゃ、失せろ」
黒「あ?てめぇ何言って…」
言葉を遮るように、今度は腕を食い千切ります。
碧空「もう一度だけ言う、死にたくなきゃ失せろ」
黒「……くっそ…しゃーねぇ、覚えとけよ、この借りはいつかぜってぇ返すからな」
そう言うと人狼は山を降りて行きました。
その途中、幼い子供とすれ違った事に気付くことはありませんでした。
碧空「一か八かだ…」
残った人狼は自分の腕を噛み千切って血をおばあさんに流し込みました。ですが当然生き返るはずはありません。
不意に、声が聞こえました。
紗楽「おばあちゃーん!来たよー!」
人狼は驚きました。なにせ、来るはずのない人が来たのですから。
紗楽「おばあちゃん?入るよ?」
碧空「(どうしようか…隠す?いや、時間が無い、ならばいっそ…)」
紗楽「おばあ…ちゃん…?」
紗楽「あなたは…誰?名前は…?」
名を聞かれて焦った人狼は幼い子供を抱えると一目散に森の奥へと向かいました…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます