第20話 アリアVSフルプレートの男
奴隷やキメラを倒していた私たちの前に一人の男が現れた。
その男は黒いフルプレートメイルを着込んでいて、大きな長剣を担いでいる。
顔まで鎧に包まれているためその表情は伺えなかった。
「ガハハハ!やはりこの程度の奴隷やキメラ程度では足止めにすらならんか」
「貴様、何者だ!」
「それは儂と戦って生きていたら教えてやろう」
この男からは今までのキメラなんかとは比べものにならない程のオーラを感じていた。
憮然とした態度で長剣を構える姿は様になっていて、歴戦の戦士を思わせる姿であった。
「私はこの男を引き受ける。カナンとジャスティンは残りのキメラ達の相手を頼む!」
「「はい」っす!」
「どうやら話し合いは終わったようだな、どいつが相手だ?儂はいつでもいいぞかかってこいガキ共」
「私がお相手しよう」
「ほう…お主が相手か、少しは楽しめるといいんだがな」
まずは相手の出方を見るために弓を構え、4本ほど打つ箇所を変えて乱れ打つ。
黒いフルプレートの男は鎧の重さを感じさせないような軽い足取りで難なく
打ち終わったアリアは距離を詰めるべく地面を蹴り、
「フレア!!」
男の左の
それを思い切り手前の地面に男は叩きつけると大きな爆炎が吹き荒れアリアの元に襲ってくる。
「!?」
アリアはとっさの判断で次元収納から大楯を取り出し、地面に突き刺し固定して構えた。
直後爆炎が大楯を構えたアリアのもとに押し寄せた。
ゴォオオオオオオ!!という凄まじい熱気と爆風で身体が流されそうになるのをこらえると大楯に凄まじい衝撃が襲った。
「ただ守っているだけではこれは防げんぞ!」
「ぐぅうううう!」
爆炎を凌いだ大楯であったが、その直後に繰り出された長剣の斬撃はそれを完全に防ぐことはできず盾を上に弾かれてしまう。
「砕けろ!!」
「くっ!!!」
弾かれた大楯をすぐに次元収納にしまい、横に前転する形で回避行動をとった。
フルプレートの男は長剣を振りかざし叩きつける。
ゴガァアアアアアン!!という凄まじい音で地面が粉砕される。
間一髪避けきったアリアは鎖鎌を叩きつけていた長剣に絡ませ引っ張り上げるが途中でグンとチェーンがピンと張り動かなくなった。
「力比べか?」
ギシィというチェーンが軋む音が響く。
「ハイオーバーパワー!」
「ぐっあぁあ!!」
「強化次第でこんなものなんとでもなるわ!」
更に攻撃力を上げたフルプレートの男は長剣を振り上げると鎖鎌のチェーンを引きちぎっていった。
バチン!!!というチェーンが切れる大きな音がその衝撃を物語っていた。
「この至近距離では避けれまい!フレ…!」
「させるか!!」
左手を掲げた男に急接近したアリアは次元収納からシルバーのナックルを取り出しすかさず装着し近接戦闘に入った。
「ぐっ!?貴様、いったいどれだけ武器を使いこなすというのか!!」
「答える義理はない!」
魔法を唱える暇を与えないために絶えず殴打を繰り出す。
「チィイイイイイイ!!」
ガン!ゴガン!!と長剣で守っているフルプレートの男にフェイントを織り交ぜ、多角度から次々打ち込んでいく。
「ヌェエエエエエイ!!!」
横薙ぎに振るった長剣は空を切り、アリアはバク転で
距離を取りすぐさま次元収納にナックルをしまい、剣と盾を取り出し構える。
「ガハハハ!なかなかやりおるな小僧、こちらも遊びは終わりだ」
男は肩に長剣を乗せ大きな声で笑っていた。
「フレアエレメント!ハイスピーダー!!」
あたりの温度が上昇しているのが目に見えてわかった。どうやらあの大きな長剣に上級魔法並みの爆炎を付加する魔法と自身の素早さの上昇だろう。
「くっ!まだ早くなるというのか!」
「楽しみはこれからだぞ小僧!簡単に死んでくれるなよ」
ズンと地面を
剣と盾を使い攻撃をかろうじて受け流すアリアであったが、爆炎を付加した長剣は直撃していないのにもかかわらずダメージを負っていった。
HP 2745/3500
MP 0/0
アルタナ測定器に映し出される自分の体力は徐々に確実に減っているのが分かった。
防戦一方になりつつも、反撃の隙を見逃さないように耐えその機会を
くっ!!肺が焼けるように熱い、この辺り一帯が火の海になっているからか!
長剣の斬撃は爆炎を帯びていて、辺りを炎に包みこんでいた。
お互いの
「ガハハハ…さすがよのう…儂の攻撃を耐え凌ぐとは…」
「ハァ…ハァ…ハァ…くっ」
「だが、もう息が上がっておるではないか…そろそろ終いにするか」
フルプレートの男が一歩踏み出した瞬間。
「フリーズ!!!」
「チィ!邪魔しおって!!」
巨大な氷柱の槍が目前に降り注ぐ。
ズガガガガガガガ!!!と大きな音を立てて盾になるような形で私の前に突き刺さった。
「兄様!!お待たせしましたわ!援軍を連れてまいりました!」
「なにやら派手にやってるじゃねぇかアリア!俺にもその鎧の男と殺し合わせろよ!!」
カナンとジャスティンはキメラ達を倒している最中にシーレスを使ってセレスに救援の連絡をしてくれていたみたいだ。
援軍としてこの場に第3部隊の隊員達とカルマンさんが駆けつけてくれたみたいだ。
「助かる!セレス!カルマンさん!」
「チッ!これはちとこちらの分が悪いのう、今日はここで引かせてもらうぞ」
「逃がすかよ!!」
大きく跳躍したカルマンさんは弾丸のごとく氷柱に突っ込んでいった。
ガシャァアアアアアン!という氷柱が崩れる音が辺りに響く。
「貴様とはまたいずれ会うことになろう…」
その言葉を残して黒いフルプレートの男は闇の中に沈んでいった。
「チッ!逃がしちまったか。何もんだ奴は」
「詳しくはわからないが、この件に深く関わっているのは間違いない。とりあえず助かりました。ありがとうございますカルマンさん」
「俺はなにもしてねぇから気にすんな!それよりもお前と殺り合ってお前が負けそうになるなんてあの黒のフルプレートの男はよっぽどの強者だな」
「ええ、かなりの強さで爆炎魔法の使い手でした」
「そうか…それとなここの奴隷収監所はまだ他にもあるらしくてよ、トロン達が行方を追っていてその集団らしき人物たちが都市の近くにあるダンジョンに逃げてったらしいとの情報だ」
「!?
「なんでもそのダンジョンの警備もグルだったらしくてな」
「なるほど…」
「そのダンジョンに向けて討伐隊が組まれるらしいから一旦戻れとの騎士団長様の話だ!」
「わかった」
今回はかなりの深手を負ってしまったようだ特に火傷が結構きている。
「兄様!お怪我を!ハイヒール!!」
瞬く間に火傷や切り傷が治っていく、やはり魔法とは便利なものであるな…
「ありがとうセレス、心配をかけた」
「気にしないでください兄様」
ふいっとそっぽを向いたセレスはカナンとジャスティンの怪我も治しに向かっていった。
立ち上がれるほど回復した私は落ちていた槍と投げナイフを回収しちぎれた鎖鎌も次元収納に入れた。
全員の回復が一通り終わり私たちは騎士団本部へと戻るのであった。
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