第3話 飛んで火に炒るナッツの蒸し

遠い目をした野鳥の会。

愛護団体にして愛護以外での露出を余儀なくされる日本有数の財団法人。

そう、ポールは野鳥の会には興味がなかった。


ただシマフクロウイラスト入りウィスキーボトルは愛用していた。

今朝も洗い忘れてくるくらい愛用していた。


もう季節は秋だというのにサマーキャンペーンの投函チラシを捨てられない。

それには訳があった。


「父さん、漫画家として第6の人生を歩むことにしたよ」


「そうか。じゃあデビュー作は父さんに送っておくれ」


1週間後にポストに投函されたこのチラシがどうやらデビュー作のようだ。

3コマ漫画が描かれたこのチラシに、あるはずのキャンペーンポイント部分は既に切り取られていた。


「くそう・・・ジョンめ・・・」


腹筋にパーム椰子のオイルを塗るのを今も欠かさない。

これはいつジョンのボディブローがきても、ぬめりでダメージを最小限にするためだ。

いや、本当は天然ジャスミンの香り成分をたっぷり配合したマッサージオイル、「メタボオイル」にこっそり変えていた。

より効果的なボディシェイプを目指すオリジナルのマッサージをお風呂上がりの習慣にして、エステ感覚で楽しくデイリーケアしていたのだ。


その甲斐あってかポールは戌年生まれとは思えないほどの柔軟な筋肉をしていた。これはどう上に見ても巳年生まれにしか見ないほどだった。


ポールも密かにデビューを考えていた。

とにかくデビューしたかった。


「この際、贅沢は言わない。デビューを人生の目標にしよう」


デビューに向けて何でもする姿勢を学ぶために、出家した。

山へ籠り、籠り、子守、籠り・・・。


そしてある日、悟った。

ポールはそのとき既にデビューしていた。

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