現代版モモ太郎
大垣伸悟
第1話 モモから生まれたモモ太郎
昔むかし、ドリアンイエーツが初のMr.オリンピア出場で2位を獲得するずっと以前のこと。ジム経営を引退したおじいさんと、女子ビルダーを引退したおばあさんがいました。
おじいさんは新たなトレーニング法を編み出すために山へ特設ジム設営に、おばあさんはオイルで汚れた床をぬぐった雑巾を洗うため川へ洗濯に行きました。
おばあさんがTIDEで雑巾を洗濯していると、川上から大きなダチョウのモモ肉が
どんぶらこっこ~どんぶらこっこ
と流れてきました。
「あれはゆうに50kgはあるモモ肉!鶏肉換算で100gあたり20gのタンパク質含有量と計算しても、成人男性アスリートの一日に必要なたんぱく質量が140gとして70日程度はもつじゃないのさ!」
と、おばあさんは現役時代にトレーニングに取り入れていたバタフライを駆使して、川からモモ肉を担ぎ出し、おじいさんとジムのビルダー達に振舞おうと家まで持って帰りました。
そしてあまりに大きいので包丁では切れないと考え、ノコギリで切ることを思いつき、庭にあった糸ノコで切ろうと思いましたが、力仕事は基本的にワークアウトの日以外ではしたくないので、おじいさんが帰ってくるのを待つことにしました。
そしておじいさんがジムのトレーニーと談笑しながら帰ってくると、一部始終を話し、おじいさんとトレーニーが交代で糸ノコで切っていきました。
しかし、モモの一番太い部分で糸ノコが突如切れてしまいました。
「はて?ここに何か入っておるみたいじゃのう・・・」
おじいさんはダンベルローイングの如くその部分を力をこめて両手で左右に裂きました。
するとどうでしょう!そこからコンテスト直後の舞台裏のビルダーのような表情をした赤ん坊がいたではありませんか!
「なんと・・・モモ肉から赤ん坊が・・・この子の名前は腿(モモ)太郎じゃ!」
これにはおばあさんが現役を引退するきっかけとなった大腿二頭筋断裂の忌まわしき過去からこの子は強靭な大腿を持ってほしいとの願いも同時に込められていました。
「この子の骨格筋はいいバランスをしている。将来いいビルダーになるよ。じいさん。」
と、トレーニーも絶賛です。
その後、モモ太郎はすくすくと成長し、おじいさんの付きっきりのワークアウトと、1日6食のおばあさんの高タンパク食の管理によって16歳で日本チャンピオンという史上最年少記録を樹立しました。
「こいつはすごい・・・コンテスト前の調整期間でもないのに、常時体脂肪率を4.7%に保っている・・・!こいつの素質はワールドクラスだ・・・!」
この時、おじいさんは後に世に広く知られるようになったトレーニング理論であるヘビー・デューティー法を考案し、モモ太郎に実践させていたことで自身のトレーニング理論の正当性を世界に知らしめたいと考えていたのです。
そして18歳になったある晩、モモ太郎に言いました。
「世界にはドーピング規定のないコンテストで、筋肉増強目的で使われるステロイドを過剰に使用して、モンスターのような肉体でコンテストを荒らしまくっている連中がおる。奴らのせいで賞金金額は跳ね上がり、そしてステロイドを使用していないビルダーはその賞金を総取りされ、生活もままならない。プロのビルダーにとってこれは死活問題だ。モモ太郎よ。奴らに完全ナチュラルなビルダーとして闘いを挑むのだ!」
この時既にモモ太郎は188cm118kgという世界でもトップテン入りしてもおかしくない肉体に成長していた。
まずモモ太郎は西海岸・LAに渡った。LAのGOLD’S GYMで移動中に出来なかったトレーニングを再開した。
そのときジムの前で大きな闘犬が横たわっていた。
「モモタロサン、モモタロサン。その長腰筋付近につけたクレアチン*5)配合のキビダンゴ、一つ私にくださいな」
「あげましょう、あげましょう。しかしこれはクレアチンが配合されているので、1回20gずつ3時間おきに1日4回摂取しなさい。同時に大量の水も忘れないようにしなきゃだぞ。」
こうして闘犬が仲間に加わったことで、怪しまれずにビーチをジョギングしながら犬の散歩を装えるようになった。
そしてサンタモニカビーチからメルローズに向かって散歩していたところ、マウンテンゴリラがうずくまっていた。
「どうしたんだい?」
「トレーニング中に古傷の膝をまた痛めちまって・・・モモタロサン、モモタロサン。その大腿骨付近につけたコンドロイチン含有グルコサミン配合のキビダンゴ、一つ私にくださいな。」
「あげましょう、あげましょう。サメの軟骨由来のもので関節痛に効果を発揮するので、200gの水で摂取しなさい。」
こうしてマウンテンゴリラ似のセルジオ・オリバが仲間に加わったことで、全米開催のコンテストに参加できるようになった。
現代版モモ太郎 大垣伸悟 @shingoogaki
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