第13話 弱者の意地(未完)

僕は自分の胸を精一杯張って、廊下をぐんぐん歩いた。

構うものか、人の噂ほど信憑性の低いものはない。

Going my way!

事実、僕の羞恥の噂は、大多数の生徒の耳に入っていた。

僕の顔を認めると、教室の窓ごしにひそひそと話したり、なかには身を乗り出して

野次を飛ばす輩もいた。

「構うものか。他にもっと有意義な話の種があるだろうに、僕なんかの噂をして

愉しんでいやがる。全く、平和ぼけした輩ばかりで厭になる。」

僕は、屋上で清家さんに強がりを言った。

本当は、胃腸がきりきり痛むくらい、周りの批評を気に病んでいたのだが、

彼女の前では至って平然を装っていたのである。

そんな僕の心中を察したのか、清家さんは首を少し傾げてから、

「なら、どうしてそんなに振り絞るようにお話しなさるのです。まるで心が涙を堪えているようですわ。第一、そんな方達は、貴方と住む世界が違うのです。話題に出すことさえ、卑しく思われてなりません。」

と、毒舌のなかに一抹の愛を包めて囁いた。

僕はこの時、彼女を心の底から愛おしく思った。


彼女はまた、天才的とも言える程、文章を推敲する能力に長けていた。

一つの事実を何重構造にも再構築し、遠回しに迂回して旋回して、コアな部分に

触れる頃にはこちらがすっかり酔わされている。

彼女の文章は、まるで向精神薬のようだ。

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