第13話 弱者の意地(未完)
僕は自分の胸を精一杯張って、廊下をぐんぐん歩いた。
構うものか、人の噂ほど信憑性の低いものはない。
Going my way!
事実、僕の羞恥の噂は、大多数の生徒の耳に入っていた。
僕の顔を認めると、教室の窓ごしにひそひそと話したり、なかには身を乗り出して
野次を飛ばす輩もいた。
「構うものか。他にもっと有意義な話の種があるだろうに、僕なんかの噂をして
愉しんでいやがる。全く、平和ぼけした輩ばかりで厭になる。」
僕は、屋上で清家さんに強がりを言った。
本当は、胃腸がきりきり痛むくらい、周りの批評を気に病んでいたのだが、
彼女の前では至って平然を装っていたのである。
そんな僕の心中を察したのか、清家さんは首を少し傾げてから、
「なら、どうしてそんなに振り絞るようにお話しなさるのです。まるで心が涙を堪えているようですわ。第一、そんな方達は、貴方と住む世界が違うのです。話題に出すことさえ、卑しく思われてなりません。」
と、毒舌のなかに一抹の愛を包めて囁いた。
僕はこの時、彼女を心の底から愛おしく思った。
彼女はまた、天才的とも言える程、文章を推敲する能力に長けていた。
一つの事実を何重構造にも再構築し、遠回しに迂回して旋回して、コアな部分に
触れる頃にはこちらがすっかり酔わされている。
彼女の文章は、まるで向精神薬のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます