第12話 自堕落兄様(未完)

「私は世の中を憂いていますが、決して恨んでは居りません。

お兄様とは、違うのです。」

こう、憎まれ口を叩くのは、私の妹のサエコである。

頭脳明晰、容姿端麗、非の打ち所がない彼女は、誰からも

絶大な信頼を置かれる存在であった。

それに反して、私の落ちぶれようといったら、慰めようがないほどである。

文学中毒、薬、酒、無職、引きこもり。

私はそれを、高等遊民と称しているが、世間一般的に見て

私の存在は異端であり、受け入れがたいものらしい。

事実、両親がご近所から、あの家はタダ飯食いの大きな子供がいる、と

噂されているのを私は知っている。

それは紛れも無い私であり、多少なりとも私はそれに関して胸を痛めている。

ただ、私にはどうしても諦めきれない夢がある。

物書きになることだ。

高等学校時代に、上級生の数人の有志が集い、創刊した

「インセィント」という同人誌を読んで、私は飛び上がるほど興奮した。

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