第19話 最後の戦い、動き出す。

 ジノリアは自室に案内した。河野さんと正反対の、散らかった部屋だった。

「私が陽太様から聞かされた契約、ある方法で、龍太が、死ななくなる」

 彼女は言葉を選んでいた。

「でも、それは、龍太が、望まない限り、やってはならないことだと言われた。私は、龍太に望んで欲しい」

 次の言葉に、僕はさらに大きなため息をつくこととなった。

「河野さんに契約の一部を負担して貰うの」

 陽太のやりそうなことだと思った。僕を選ばれし主人公として活躍されるために、そしてその葛藤を楽しむために、彼は僕に選択を迫った。

「一部を負担して貰えば、単純に契約の期間は倍になる。一人にたまる精霊の力は一ヶ月かも知れないけど、二人で負担すれば一定期間にたまる精霊の力は半分になる。ちょうど、クッキーを半分に割って食べるみたいに」

 ジノリアは僕を刺したあのナイフをそっと懐から取り出した。

「これで河野さん自身を刺せば、契約は分割されることになる。そうすれば優太を探す時間も倍になる。・・・・・・私にもわかる、龍太の命が少なくなっていること」

「なんで今その契約の話を持ち出したの」

 僕は彼女の救いの言葉を断ち切るように言う。

「・・・・・・私、龍太のこと好きだよ」

 あっけに取られる僕に、ジノリアは言葉をつなぐ。

「私、てっきりもっと私のこと責めるのかと思ったの。でも、あなたは触れないでいてくれた。それが龍太にとって優しさからの行為ではないとしても、私には優しさだったの」

 沈黙が二人を笑った。

「なんで河野さんを巻き込む必要がある?」

 僕は恐れなかった。

「精霊の存在を知っていて、龍太の理解者だから」

「それも陽太に言われた?」

「・・・・・・うん」

 彼女は僕の目を潤んだ瞳で見つめる。

「でも、決めるのは龍太自身だよ。河野さんを巻き込む必要はないんだよ」

 僕は決心した。

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