第17話 返信を書く、契約者。
とっさに僕は鉛筆をつなぎ直そうとした。
何が起こったのかわかっているのに、わかりたくなかった。
折れた鉛筆が元通りにくっつくわけもなく、十数秒で諦めゴミ箱に投げ捨てた。
自分で力を入れたつもりはない。軽く握っただけだ。「破壊の精霊」という言葉が頭をよぎる。
「龍太・・・・・・?」
女性の声がした。聞き覚えのある声、ジノリアの声だ。振り向くことなく僕は答える。
「なに」
「その・・・・・・ごめんなさい、契約のせいで」
今まで契約について触れてこなかった彼女の口から、まさか謝罪の言葉が飛び出すなんて思いもよらなかった。
「僕は手紙の返信を書こうと思うんだ。部屋を出て行ってくれないかな」
意図せず強い口調になってしまった。
「龍太、ごめんね・・・・・・。あのね、契約を解除する方法があるの」
彼女に、一つ問いかけてみたくなった。
今改めて聞いたら、彼女はどう答えるのだろう。
「なんでジノリアさんは、僕にそんなことを教えてくれるの?」
彼女は息が詰まったようだった。
「それは・・・・・・龍太が大切な人だからだよ」
「それは陽太からそう言えって言われたのかな」
それきり彼女はしゅんとなって、口を開かなくなってしまった。
「まあいいよ。とりあえず、部屋を出て行ってくれるかな。僕は手紙を書きたいんだ。古い友人にね」
ドアがぎいと閉まる音がして、それきり彼女の気配は僕の部屋からなくなった。
陽太へ
サンタクロース、懐かしいね。
たくさん聞きたいことはあるけれど、一つだけきいてくれないかな。
なんでこんなことを考えたの
龍太
我ながら短い文章だった。ここに至るまで何本も鉛筆を折ったし、何枚もの紙を破っては捨てた。長文のものも短文のものもあった。
僕に時間がないことはわかっている。この手紙の返信が来る前に、事切れてしまうかもしれない。しかしどうしても、聞きたかった。
僕の人生を壊すことによって何の得が得られるのか。
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