第16話 サンタクロースの、手紙とは。
しかし小学生だった僕たちは、そういった連絡ツールを持っていなかった。何かある場合は家に電話したし、毎日学校で会うのだから直接話すことが出来た。
陽太がメールやそのほかのSNSを使用しているかどうかはわからない。
そんな僕を知ってか知らずか、いやおそらく知っていて、陽太は既に行動を起こしていた。
夕飯の席についた時、母が陽気に話しかけてきた。
「そういえばねえ、陽太クンからお手紙来てたわよ~! 久しぶりねえ、よく小学生の時遊んでたものねえ」
言いながら僕に白い封筒を渡してきた。英語で宛名が書かれていた。
ジノリアは相変わらず片言の日本語で、母の手料理を褒めちぎっていただけだった。
夕飯を食べ終わり、僕は自室に駆け戻った。僕には余裕がなかった。机を漁り適当なはさみを手に取った。緊張のためかぎこちない手で、しかし丁寧に封を切る。
龍太へ
おそらく僕が何か関わっているということに、
気づいた頃だろうと思って手紙を書いているよ。
確かに僕が、いわば黒幕。
優太に契約させたのも、僕、といえば僕だ。
最も彼は君とは違い、進んで契約を受け入れたけどね。
龍太、君にクエストを与えよう。
自らの命が尽きる前に、優太を探し出せ。
いいね? そうすれば大団円だ。
命が尽きる前に。
陽太
手紙を読み終わったとき、恐怖でおののく心を止めておくことは出来なかった。幼い頃の僕がこんなに「危ない」人と仲良くしていたなんて考えもしなかった。
返信を書こう。
とっさに僕は思った。クエストにしては単純すぎる。だから陽太はもっと何かを望んでいる。
机の上を再び漁り、鉛筆を探し当てたその時だった。
軽く握っただけだった。
ポキリと音を立てて、鉛筆という、鉛を包んだ木の棒は事切れた。
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