第12話 契約を切る、方法は。

 すぐに校門についてしまうその数百メートルで、彼女は言葉を濁し続けながら説明しようとしていた。

「ただし危険というか、法に触れるというか、精霊に法律はないのかもしれないけど」

 そんな調子で前置きに前置きを重ね、当然の結果そのまま校門までたどり着いてしまった。その道中でも知り合いかどうかわからないくらいの生徒から、河野さんは声を掛けられそれに応じていた。だからこそ余計に話が進まなかった。

「ごめんなさい、放課後、私の家に来てもらえるかな」

 校門を通過してから彼女は苦笑して言った。

「別にいいよ、今ここに遊べる友達なんていないからね」

 僕は、中学に入ってから、つまり小学生でサンタクロースが解散されてから友人というものを作らなかった。陽太や優太以外と親しくなることがなんとなく罪悪感を覚えたのと、サンタクロースであることをばれてはならないと陽太に口止めされたからだ。


 放課後、河野さんより先に家に着かないようにまた、あの日のようにスーパーに寄った。あの日――僕の余命が発表された日、僕は信じられないと頭では思った。しかしなぜか心は、その真実を認め譲らなかった。複雑な感情で夜を明かしていたことを思い出し、少し気分が陰った。

 僕はスーパーに行っても、主婦でもないし、食欲の旺盛な運動部員でもないから、食品コーナーにはいかない。サンタクロース時代の余韻に浸るため、ゲーム販売コーナーを見て回るのだ。

 僕の命はあと僅かなのか。

 でも、まあ、いいか。サンタクロースになれたのだから。

 諦めとも似た感情が僕を支配していることに気づいたのは、僕がかつてやりこんでいたゲームの、紹介動画が放映されているのを傍観している時だった。


 少し時間を空けてから河野さんの家を訪ねたつもりだったがインターホンを鳴らした時彼女は慌ただしそうに僕を家に招いた。

「色んな部活から勧誘されてて、帰るのが遅れたの。ごめんなさい、八代さん多分私が帰ってくるの待ってたよね」

 まんまと僕の考えを射貫き、八代さんは前行った時と変わらない、自室へと僕を案内した。

 彼女はすぐに、お盆にのせて麦茶とうさぎリンゴを持って床に置き、自身も座った。

「こんなものしかなくて・・・・・・、お菓子とかのほうが好き・・・・・・かな・・・・・・?」

 遠慮がちに言う意味がわからなかった。

「いや、何か出してくれるってだけで気持ちは伝わるし、構わないよ」

「そ、そう・・・・・・」

 彼女はうつむき、しばらく彼女の膝の辺りを見つめてから、はっと我に返って話を切り出した。

「家の文献を漁ってみたら、一回だけ契約を解除した人がいるらしいの。その方法がね、ちょっと危ない方法で・・・・・・」

 僕の反応を待っているようだったが、僕は努めて冷静を保った。

「法に触れるかもとか言ってたね」

「うん・・・・・・。契約を解除する方法は」

 僕は彼女の、その後の言葉に驚くことはなかった。

「どちらかの命が終わること」

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