第8話 僕の寿命は、一ヶ月。

 一人古い記憶にふけっている間に、彼女はパソコン一台を立ち上げ、ゲームクライアントを起動していた。

「さあドラゴン、腕前を見せて貰うよ」

 彼女は意気揚々と僕をその前に座らせた。

「・・・・・・なんで知ってるんですか、僕のこと」

「操作方法はまあいじればわかる。で、今開催されているクエストが難しいからやって欲しいんだ」

 僕の言葉を無視して、ゲーム画面を開いた。

「これ、クリア出来たら教えてあげてもいいよ」

 彼女の笑みは、明るく心底楽しんでいる、そんな笑顔だった。


 十分ほどだったか。小学生の時以来だったとはいえ、アクションものは僕が得意とするゲームだ。難なくクリアすることが出来た。

「クリアしましたよ。教えて下さい、どこで僕の情報を手に入れたのか」

 彼女はうん、と頷いた後口を開く。

「君の寿命はね、あと一ヶ月だよ」

 思考が止まった。会話が成り立っていないし、第一僕は大きな病を抱えているわけでもない。

「そのリストバンド、精霊との契約の証を隠すためにつけているね」

 僕を無視して彼女は続ける。

「契約を解く方法は、人間となった彼女を殺して、力の帰る場所を無くすことだよ。まぁ、現実的に言えば、殺人になってしまうかな?」

「どういうことですか」

 思わず声が震えた。

「どういうもそういうもない。契約してしまったものは仕方ないんだから。あとは、高いお金を払って精霊の使いに方法を探して貰う、かな? お金がない? 私はいつでも依頼は受け付けてるよ。ドラゴンとしてゲームをやってくれる、それが対価でいい」

「ちょっとお姉ちゃん、何やってるの!」

 いつの間にか空いていたドアから、僕と同じくらいの女性が仁王立ちしていた。

「また知らない人連れ込んで! 何回言ったらわかるの!」

 ずんずんと僕のほうに歩いてきて、綺麗なお辞儀をした。

「すいません、私の姉がご迷惑をおかけしました。私河野摩耶と言います。同じクラスの方ですよね、配布物受け取りますね」

 河野さんはなめらかに言うと、僕の隣に立つ河野さんの姉をきっと睨んだ。

「はいはーい、以後気をつけまーす」

 河野さんの姉は棒読みで言うと、スキップしそうな勢いで部屋を出て行った。

「本当にすいません・・・・・・」

 河野さんは改めて頭を下げた。

「い、いえいえ、いいんですよ。暴行受けたとか、そういうことではありませんし」

「暴行も同然ですよ・・・・・・知らない人を家に上げて無理矢理この部屋に連れ込むだなんて」

 ふう、と彼女はため息をついた。疲れたというより、話題を変えるためのようだった。

「で、契約されたんですか・・・・・・?」

 彼女にも、聞こえていたようだった。

「なんの話だか僕全くわからないんですが・・・・・・」

「私が説明します。この部屋は・・・・・・一応姉の部屋なので、私の部屋に案内しますね」

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