第6話 サンタクロース、復活す。
女性だった。
僕よりは明らかに年上で、成人していそうな、まさしく「お姉さん」を体現していそうな容姿の彼女は、その見た目に反して、おもちゃを与えて貰った子供のようにはしゃいでいた。
「え、サンタのドラゴンだよね!」
確かに僕は、ネット上で「サンタクロース」というグループに所属し「ドラゴン」という名前を使った時期もあった。しかし最近よく見るネット上の「人気者」とは違い、個人情報を明かすことは一切なかったし、ましてや顔を見て判断されるだけの写真を投稿したことは一度もない。従って彼女が嘘をついているか、「サンタクロース」の誰かが情報を流したか、ということになる。
とにかく僕は、知らないふりをすることにした。
「よし決まった、ちょっとやってもらいたいゲームがあるんだよ。え? ブランク? そんなのないでしょうあれだけの技術を持ってるなら」
知らないふりをする前に勢いに押されてしまった。たじろいでいる間に手を引かれ、靴のまま廊下まで引きずられてしまったのだ。
「ちょっと待って下さい、何のことですか」
今更のようにすっとぽけるが、彼女はすっと真顔になって呟いた。
「・・・・・・ドラゴンだってこと、ネットに晒してもいいのかな・・・・・・?」
そうまで言われると僕は、どうしようもなかった。今時のネットの広がりは、本来のネットワークという言葉にぴったりな位、人間生活に張り巡らされている。それが例え「数年前」のゲームの覇者だったとしても、その情報の価値がなくなることはない。
手を引かれるままに、部屋に入った。
そこは全くもって簡素な部屋だった。
壁一面に並んだデスクトップパソコン、中央にはまだ段ボールが積んであり、奥には椅子が三つ、並べてあった。
数年前、つまり僕が小学生の時に経験したのと同じ空間。三人で共に過ごしたあの空間。いくつものゲームをクリアし、いくつもの強者を倒し頂に立ち、悪者を懲らしめたあの空間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます