この本すごいぞ!
宮里智
夜と霧
夜と霧
十五期四組二十七番 中込 友里
この本を薦めてくれた英会話の先生は、この本を英訳で読んだかも知れない。
舞台は第二次世界大戦頃のドイツ。ユダヤ人に関する悲惨な出来事は、多くの本によっても、知ることが出来る。夜と霧という本も、そのうちの一冊だ。
主人公、つまり筆者は収容所に収容される前、精神医をしていた。彼は精神学の立場から、収容所での体験を分析し、あるいは自分を、あるいは仲間を励ました。
今回は、印象に残った考え方と、この本の優れていると思う点について紹介したい。
まずは、印象に残った考え方だ。いくつかの場面から筆者の考え方を見ることが出来る。
一つ目に、真っ先に生を終える人々は、屈強そうな、最も長命と思えるような人々だった。逆に、短命そうな、ひ弱な人々が生き残ることがあった。これと同じような理由で、年末に大量死したという出来事すらあったのだから、彼の分析に狂いはないのだろう。その理由の内容については触れないが、私はそこに毎日を生きるためのヒントが隠されていると思った。
二つ目に、人間が窮地に立たされたとき、どのような振る舞いをするのか、ということについての場面だ。窮地に立たされた人間は、筆者曰く「収容所囚人」になるか「人間」になるという。今までの精神学的考えでは、「収容所囚人」になる、つまりは生きるために悪事を働くことが、窮地に陥った人間の反応であるとされてきた。しかし実際には、そうなってもなお、いや、そうなったからこそ人間らしさを示した人々がいた。
筆者は、「人間とは、ガス室を発明した存在だ、しかし同時に、ガス室に入っても毅然として祈りの言葉を口にする存在でもあるのだ」と書いている。これは、遠い外国の問題で、私たちに適用されない、というわけではない。日本の戦時下でも、似たようなことを私は聞いたことがあった。
印象に残った考え方は主にこの二つだ。
次に、優れている点だ。精神学についての記述があるものの、平易な言葉で書かれていて、詳しい知識がなくとも読み進めることができる。生々しい表現こそあるが、決して難しい言葉ではなく、読み進めることが容易だと思う。その分内容に目を向けられる。精神学に詳しくなくとも読むことが出来るが、もしも詳しく知りたい場合は、「NHK100分で名著」シリーズに紹介されている。これには当時の背景についてや、この本にはあまり書かれない、筆者の人生についても触れられている。原作を読んでから読むと、さらに理解が深まると思う。
この本すごいぞ! 宮里智 @miyasato
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