Limonium.2



変わらずにいるように見えて


変わっていくものを


何というか



──────────





目が覚める。


ここは何処だろう。








しばらくぼうっとしていると、知らない白い服の女の人が部屋に入ってくる。


それから慣れたように早口で長い説明をして、さっさと部屋を出ていく。


私は薄い味の病院食をつつきながら、




「……」




今、初めて聞いた私のことを思う。



私は記憶を1日しか保持しておけないらしい。寝ると全部を忘れてしまう。


自分の名前とか、最低限の日本語は覚えているから、きっと突発的なものなのだろうけれど。


でも、それがいつなのか分からない。



昨日の私は一体何をしたのだろう。


何を思い、何を考えて眠ったのだろう。


寂しかったのかな。悲しかったのかな。


それですら、覚えていない。



日記は無い。部屋を見渡しても記録媒体は見当たらない。


ただ棚の上に、綺麗な花と黄色い表紙の本だけが置いてある。

それから、棚の横に丸椅子と車椅子。


ただなんとなく、やることもないのでその本を手に取り読み始めた。


半分くらい読んだところで、ふと部屋の扉が開いた。



姿を見るや否や、慣れたように自分の口が一つの言葉を紡ぎだした。



「一樹くん」

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