PLAY▷▶1話

生まれて17年間、恋はそれなりにしてきたけれど、恋人ができたのは初めてだった。



春崎奏はるさきそう。屋上の片隅で君は私に太陽の様な笑顔を魅せて、


結城和音ゆうきかなでさん、俺と…付き合って下さい!」


なんて告白をしてきたのだ。心臓が止まるかと思った。っていうか3秒位は止まってたんじゃないかな。

だっていつも少し目で追っていた君が、目の前で笑いかけて告白なんてしてくるもんだからさ。


「は、はい!私…でよければ。よろしくおねがいします!」


声、変だったかな。


「よかったぁ。」


大袈裟にほっとする君はどこか暖かい匂いがした。



それから私達は、校内でもちょっと有名な仲良しカップルになっていた。

喧嘩する事も無くはないけど、毎日が幸せだった。

そんな幸せの色を頬に乗せたまま、いくつかの朝と沢山の夜が過ぎて、気付けば一年が経とうとしていた。

名前を呼ぶ声にも慣れた頃─8月14日。

それは唐突に告げられた。

誰も予測出来ないほど、唐突に──。



「あ、あのさ、和音。」


「んー?なぁに?」


飲みかけのオレンジジュースを置いて、奏の顔をみる。


「いきなりで悪いんだけどさ、俺と別れてくれない?」


は?今奏、別れるって言った?


「え、別れるってそんな、どうして?明日は─」


「悪い。和音。」


──明日は買い物に行く約束だよ?

それすらも遮った奏の声は、震えていた。

あぁ、これは現実なんだ。私はどこかで間違えたんだ。初めてみた奏の表情が、全てをわからせた。私はフラれたんだ。


「そっか。…しょうがないな。」


「悪い。」


そう言って奏は、背を向けた。

私、いつもみたいに言えてたかな。

これ以上抗うことは出来なかった。なぜだかそんな気がした。

でも、押し寄せてくる現実からどうやっても逃れたくて、屋上へ続く階段を、必死で登った。



走ってきたので息が辛い。飲みかけのオレンジジュースをあおる。さっきよりもぬるくなったオレンジジュースが喉を潤した。


「どこで間違えちゃったんだろう。」


もしこの恋をやり直せたら─


『この青春をリセットできたら─。』


一粒の涙が頬を翔ける。それを拭おうとして、手を止めた。手になにか描いてある…?


「え、なにこれ。…リ…セッ…ト?」


こんな文字さっきまで無かった。


『この青春をリセットできたら─』


強く願った。その拍子、一粒の涙が青い花に落ちた。瞬間───

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