第7話 伝説の先輩のkntm


きんたまの話をするとしよう。

久々である。


番外編のようなものなのだけれど、この間久々に馬界隈の連中で集まったときの話。

そういう集団にありがちな、顔は知らないけれど脈々と受け継がれる先輩たちの伝説を、思い出話として(または新たなる伝統の引き継ぎとして)話していた。

ちなみに私も伝説持ちである。きんたまではなくスイカを素手で割った女として。



そんなことはまあよい。

通称キンちゃんと呼ばれる馬がいた。きんたまのキンではない。念のため。

昔厩舎から焼け出されたか何かの理由で、目の前でたばこを吸われるとパニックを起こすような、トラウマ持ちで、怖がりで、繊細故の危険な馬だった。

素人は馬房の前に近寄るのも禁止(目の前に立っていた人に噛み付き引きずり込んだことがある)。で、ある程度慣れた者が緊張感を持って世話をするのが常だったらしい。


しかし手のかかる子ほどかわいいというのはありがちな話で、

顔も可愛かったので一部の人から猛烈に愛されていた。


愛ゆえに。

愛ゆえにな。


馬に後ろから近付いてはいけないのは鉄則中の鉄則である。

ましてや正面から近付いても危ないキンちゃん。

愛しいきんちゃんに背後から近寄った担当者が、自身のきんちゃんを蹴られ、昏倒したという事件が起き、付き添いで病院に行った女の先輩(「なんで私が行かなきゃだったのか……」とは彼女の弁である)が語り部として伝説を伝えた。


彼のきんたまは二つとも無事だったらしいので、あながちキンちゃんも恩を感じて手加減したのかもしれない。


無事でよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る