第5話 京都 大阪 雨が降る

 婚家の墓所は京都にほど近い大阪府某市にあるのだが、夫の家は特に大阪出身と言う訳ではなく、そのルーツは熊本である。ただ、夫の父方祖父が赴任した先がその場所であり、そこを気に入った祖母がお墓まで建ててしまったのである。

 最初に書いておくが、私は別に関西方面に恨みがある訳でもなんでもない。551の豚まんは美味いし、若い頃は桂枝雀が結構好きだった。「怪奇大作戦」の名作「京都買います」は何度もVHSを再生してセリフをすっかり覚えてしまったし、憂歌団の「大阪ビッグリバーブルース」は日本を代表する名曲だと思う。

 なのに、である。私がお墓詣りに行くと、必ずと言っていいほど大雨が降るのである。夫が一緒の時は好天に恵まれるのだが、私一人とか、私と息子の組み合わせの時には、必ずと言っていいほど大雨が降るのだ。それは、前日までの天気予報が晴天を予測していても、である。墓所の通路は小さな川のようになり、靴は使い物にならなくなり、お線香に火をつけても、すぐに下の方にあるお線香入れの空間にセットしないと消えてしまう。一体、私が何をしたというのだろう。

 それでも、今のところは夫が一緒なら何とかなっているが、数年前には、とうとう、夫が一緒に行く予定でも、前日になって突然、近海に台風が発生する事態になった。幸い、台風は直撃することもなく、お墓参りは無事、曇り空の下、執り行う事ができたのだが、今後は夫が一緒の時でも油断できなくなるかもしれない。

 一説によると、参拝などをするときに雨が降るのはケモノがらみの事態が成功したしるしらしい。もしくは、神様だったらば、歓迎されている徴だそうなのだが、どう考えても歓迎されているレベルの降り方ではない。憑いてきた物を、流してしまおうという勢いである。

 もしそうだとしたら、私にはどれだけ沢山のケモノが憑いているのだろう?昔、夢でもらった管狐以外、心当たりがないのだが。それとも、ツアーコンダクターよろしく、ケモノを集めて連れて行ってしまっているのだろうか。そして、大阪に行く度に、ケモノが大量に浄化されているんだろうか。私はハーメルンの笛吹きじゃないっての。


 次に行くときは、晴れますように。




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