第4話 そんな母

 母は見えない存在を感じ取るタイプらしく、心霊体験がいくつもあるのだが、大抵はそんなに怖いものではない。ただ、一つだけゾッとする話がある。

 まだ、母の母、つまり私の母方の祖母が亡くなって一年経っていない位の時の事である。ある日、母の夢に祖母が現れた。そして、こういったのだという。

 「〇〇の××が死ぬから、教えてやれ」…それは、ちょっと遠い親戚の名前だったそうだ。しかし、そう親しい間柄でもなく、ましてや、生死に関わる話をするのもどうかと躊躇した母は、その話を誰にも言わず黙っていたのだった。

 それから間もなくして。その親戚の人が、掘りごたつで一酸化炭素中毒で亡くなってしまった。掘りごたつは七輪に熱した練炭を入れて暖めていた。その頃、電気式のこたつがもう一般的だったが、母の実家のある辺りでは、古い家の掘りごたつならまだまだそんな風だった、そんな時代の話である。

 なお、それからしばらくして、また母の夢に現れた祖母は「これでもう行くから」と言ったという。その後、母の夢に祖母は現れていない。



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る