私の作品を書き直してみませんか(2):僕たちの恋物語

ゆきんこさんの自主企画:私の作品を書き直してみませんか の参加作品です。


お題

「僕たちの恋物語:https://kakuyomu.jp/works/1177354054885460276



皆も頑張ってるから続き書きました!

その3まで書けるかな…

*******************

二日目:六年前の出合い



目を覚まし時計を見ると七時だった。僕がいつも起きる時間だ。

いつも通り爽やかな朝だ。だけど右肩のあたりがなんだか重い。

僕は自分の右側に目を向けた。そこには小学四年生ぐらいの幼女が寝ていた。


そう、これは紛うことなき僕の妹だ。


「なんで、お前がそこに居るんだよ!!」

僕は気持ちよさそうに寝息を立てている妹をタオルケットごとごろりと壁側に転がした。眠い目を擦りながら、おはようと言う妹。

「この間も自分の部屋で寝ろって言っただろ!」

「えーだってもう付き合ってから十年も経つんだし…ね?」


十年ということは生まれてから付き合っているのか…というか、その設定まだ生きていたのか。

この間忙しすぎて設定に乗らないでひたすらガン無視してたら泣かれたからなぁ。

今日は真美もいることだし、ここは面倒臭くならないように会話に乗っておこう。


「ていうか義妹ならまだしも、実の妹に恋愛感情を抱くことはほとんどないって遺伝子レベルで証明されているんだよ!!」

「私たちの関係ってそんな障壁すらも越えられないものだったなんて……ぐすん。」


「そうだよ!」

そこだけは流石に突っ込んだ。


僕的にはどっと疲れた朝になったが、妹にとっては他愛もない会話だったようだ。

真美の作った朝食を食べてさっさと学校に向かうことにした。

出掛けに彼女に「おいしい?」と感想を聞かれたけれど、疲れたままのリアクションで答えた「おいしい」は、彼女を若干ムッとさせただけで終わった。




学校の校門を通り靴箱の前まで来た。昨日と同じく、まだ一人も学校に来ていない様子だった。

「今日も早過ぎたか……」

そんな独り言を呟きながら、昨日と同じように教室に入った。


そして昨日と同じように席に座り、昨日と同じ足音が聞こえてきた。


ここからもどうせ同じ…と思うだろうけれど、昨日と違うことが起こった。

扉を開けた音が昨日のように弱々しくはなく、決意を固めたような音だったんだ。


昨日の女の子、「ハナイカリ」の彼女が迷わずにこちらに向かってきた。

昨日よりも真剣な目をした彼女は口をゆっくりと開け、話し出した。


「実は私、小浮気君のことが好きなんです。付き合ってください。」

「ええっ…!?」


僕はその言葉に驚いてしばらくの間、開いた口が塞がらなかった。

唐突過ぎる彼女の告白に頭の中が真っ白になる。

そして僕は咄嗟に、こう口にしていた。


「ごっ、ごめんなさい…!」

「そう…。」


自分でも何を言ったのか一瞬分からなかった。

目の前の少女は落ち込んだ様子ではなく、意外にも冷静そうに見えた。


「そっか…分かった。残念、だな。ねぇ、小浮気くん。昔、橘さんのこと好きだって聞いたけれど、やっぱり今も好きなの?」

「えっと、まあうん。橘のことは嫌いじゃないよ。」


僕は女の子の目を見ながらそう言った。

本当は顔から火が出るほど恥ずかしくて目なんてとても見れなかったし、振った女の子にどんな顔をしていいかわからなかった。けれどここで僕が目を逸らして話したら彼女の告白に対して失礼になる気がした。だから穴が開くほど見つめてた…と思う。


「そうなんだ…。橘さんが羨ましいな。でも、小浮気くんには私より橘さんのほうが合ってるから…それでよし!」


彼女は教室に響くように「それでよし!」ともう一回言った。

きっと彼女の中で踏ん切りをつけたのだろう。その声はどこか切ない色だった。

俯きながら自分の席に戻ろうとする彼女の横顔は、花が散り枯れきっていたように見えた。反面、彼女から出るどこか清々しく凛とした空気も感じた。



「ハナイカリ」の彼女の中には、花言葉のように「希望」があったのだ。


  




 ー回想ー


昔、僕は崖から飛び降りようとしていた女の子を助けたことがある。


「なんで崖から飛び降りようとしたの?それはしちゃいけないんだよ」

「ママとパパが交通事故で死んじゃって、おばさんに引き取られたけどおばさんが

いじわるしてきて…だから、ママとパパに会いに行こうとしたの。」

その女の子は泣きながらそう言う。


「でもそんなことしてもママとパパには会えないよ?」

「どうして?」

その女の子は涙を手で拭ったあと、僕の目を不思議そうに見てきた。


「だってママとパパは君に試練を与えてるから、それを乗り越えないとママとパパには会えないんだよ。」

僕は家でいつも見ている大好きなテレビ番組の「試練を与えている」というセリフをそっくり真似して彼女に伝える。

彼女はしばらく口を開けたままになっていたが、少し時間が経つと何かを理解したのか口を閉じて純真無垢な瞳で、溢れんばかりの笑顔を見せた。


「うん! そうだね! 分かった。私、がんばる!」

その笑顔がとても可愛くて、なんだか熱に浮かされたようなふわふわした気持ちになったのを覚えている。


「僕の名前は『小浮気隆司(こぶき たかし)』。君の名前は?」

「私の名前『橘真美(たちばな まみ)』っていうの。」



今まですっかり忘れていたけれど、僕は六年前に一度、真美に出会っていたのだ。

そしてそのとき僕は初めての恋をした。いわゆる「初恋」ってやつだ。


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